昨年は大ヒットに湧いた邦画、今年は?

2017.8.23 12:00

© 2017「映画 山田孝之」製作委員会

(写真4枚)

「これ、日本映画じゃないやん!って・・・」

斉藤「だから同じ配給でさ、『夜明け告げるルーのうた』もあったやん。あれをちゃんと宣伝しなかったのは怠慢であり罪でしょう。天才・湯浅政明監督の映画をちゃんとやらないとは何事や」

春岡「そうそう。アヌシー(国際アニメーション映画祭)でグランプリを獲ったんだよな。ただ観れてないんだよ、そもそも公開したのも知らなかったから」

斉藤「4月にはやはり傑作の『夜は短し歩けよ乙女』もあったし、今年は湯浅イヤーなのにね。ただ、『夜明け告げるルーのうた』はあからさまに宮崎駿リスペクトなのよ。湯浅監督を知る人からすれば、結構な驚きで」

田辺「へえ、どんな感じだったんですか?」

斉藤「もう、『パンダコパンダ』(1972年)とか『崖の上のポニョ』(2008年)とか。誰が観てもはっきり判るほど。ただ、絵の動きとダイナミズムでは、圧倒的にモノが違うねん。良い悪いとか、格の上下じゃなくてモノが違うねん。もちろん、アヌシーがポニョとかパンダコパンダを知らないわけがないんで。それ分かった上でのグランプリなわけだから、そういう意味でも面白い受賞なのよ」

田辺「あと、『愚行録』はちょっと驚きましたね。これ、日本映画じゃないやん!って最初思ってたら・・・」

斉藤「ホントに日本映画じゃなかった。ポーランドの撮影監督やったという」

田辺「最初のカメラのアングルとか角度とか、撮り方全部が全然違うんですよ。あと絵の質感なんかも」

斉藤「あの映画の独自性は圧倒的にキャメラマンの力よね。空気感が特異すぎて」

田辺「満島ひかりへのカメラの寄り方なんかも、分かんないようにスーッと寄っていくという。あのスピード感はちょっとスゴかったですね。あと、画面の余白の使い方とか」

春岡「取調室みたいなところに入ってからの、あの満島ひかりの後ろの空間、上の空間の使い方がスゴかった」

斉藤「出身学校云々で左右出来ないけどさ、でもやっぱり教えてることが違うんだろうねポーランドの映画学校は。日本だと、あの撮り方は個々人の感覚、というか才能からしか出ないと思う。でもたぶん、向こうは技術として教えてる」

田辺「あれが石川慶監督の、長編メジャーデビュー作という」

斉藤「最高のデビュー作やんね!」

田辺「あとですね、僕が自分の甘さを認識したのは、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でして。映画的な技術なんかあまり無いのに、ストーリーの勢いでちょっと持っていかれた自分が恥ずかしかった(苦笑) 」

斉藤「俺は大嫌い。今年ワーストやと思う。『最果タヒ』って名前だけで恥ずかしくってダメ。『ミルクマン斉藤』が言うのもナンやけど(笑)」

田辺「ミルクマンさんは絶対そう思う。僕はちょっと持ってかれたんですよね。他人(登場人物)の未熟なところを観ていいなと思ってしまう、自分の未熟さを知るっていう。反省しましたもん」

春岡「蒼いよな、蒼いよ(笑)。でも、俺も分かるんだよ。なに言ってんだって思いながら、ちょっといいかもしれないって思ったもん」

斉藤「石井裕也監督はさ、今までとはちょっと違う撮り方でやっててさ。クレジットを見なかったら石井裕也だと分からないくらいで。ま、それはええねん。でも、やっぱりあのポエムがいかん。ポエムが!」

田辺「まあ、最果さんの同名現代詩集を映画化したわけですから。春岡さんがインタビューしたと聞いて、春岡さんもちょっと好きなんじゃないかとは思ってたんですが」

※石井裕也監督インタビュー「到達点ではなく出発点」

春岡「俺は石井がカワイイんだよ(笑)。斉藤くんがあの映画を評価してたら、それはそれで大丈夫か?となるわけでさ。実際に会えば、合うかもしれんよ?」

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