河瀬直美「挑戦しないと作る意味ない」

2017.5.26 18:00
(写真4枚)

「映画人生の集大成であらねばならぬ」(河瀬直美監督)

──監督が東京での舞台挨拶のとき、「難産だった」とおっしゃられていたのも印象的でしたが、その真意はどこにあるんでしょうか。

そうですね。永瀬くんの役に対する取り組みや、視覚障がい者としての有り様というのは、私にとって本当に力強いものだったんですけど、この美佐子が本当に分かってない。視覚障がい者のこともそうだし、私のような撮り方も初めてだったから、すごく反発するんですよね。そこで、雅哉とリアルな結びつきを作るのが、すごい難しかったですね。同じ俳優でも、まったく畑の違うところにいる人たちなので。美佐子をある種、無垢なモノに成長させていく作業が、私のなかですごい難産でしたね。

──なるほど。たしかに今作は、美佐子のなかでなにかが変わったというのがテーマでもあるわけで。

でも、(終盤の)森に入ったあたりから、すごい変わったと思います。なんていうか、自然のなかに存在させられている感じ。街で音声ガイドやっているときの気の強さから、大きなモノに抱かれる感覚のなかにいる彼女は、明らかに違ったと思いますね。

──あのシーンは、表情を出させるために監督が走らせてる、と思いました。

うん、そうですね。森のなかを丸1日歩いたりしたからこそ、あの表情が出てるんじゃないかな。

「奈良という私の武器を使うのは、自然なこと」と語った河瀬直美監督
「奈良という私の武器を使うのは、自然なこと」と語った河瀬直美監督

──それと今回、2011年の『朱花(はねづ)の月』以来、6年ぶりとなる奈良ロケがおこなわれています。旧市街を舞台にしたのは、『沙羅双樹』(2003年)以来です。監督がエグゼクティブ・ディレクターをつとめる「なら国際映画祭」も含めて、普段の生活も奈良じゃないですか。あえてもう一度奈良に立ち返ったのはどういった理由があるんですか。

ある意味、ここまでの映画人生の集大成であらねばならぬというときに、奈良という私の武器を使うというのは、至極自然なことなんです。街に生きながら、リアルな表現について葛藤している人々を描くというのは、私自身にも突きつけられていることですし。それに、「なら国際映画祭」をやってきたことで、映画を支えてくれる土壌が奈良にできてきたんです。だから、エキストラ集めやロケハンに時間を割かなくてよくて、ちゃんと演出だけに向き合えるんです。

──今回、永瀬さんは視力を徐々に失っていく障がい者のカメラマン役ですが、身体の不自由な方に対する奈良の街の在り方など、改めて気づかされたことってありますか?

あぁ、なるほど。そうですね、旧市街地なので、点字ブロックなんかは「なんでここで途切れてるの?」ってことが結構ありました。行政に問い合わせても、障がい者の方から言われれば直すんだけど・・・みたいな。古い街なので、バリアフリーがまだまだ確立されていないと思うんですね。外国人観光客に対しても、実はあんまり親切じゃなかったりとか(笑)、映画祭も含めて、いい意味で新しい感覚をうまく取り入れていく時期ですね。

──本作は、そういう部分にもちゃんとスポットを当てていますよね。

そうですね。すごく困ってらっしゃる人がたくさんいるってことは、見ていれば分かることなのに、それを知らなかった自分は本当に勉強不足だったというか。今回、映画を作るにあたって永瀬くんも言ってましたけど、自分たちになかった感覚が芽生えましたね。

映画『光』

2017年5月27日(土)公開
監督:河瀬直美
出演:永瀬正敏、水崎綾女、白川和子、藤竜也
配給:キノフィルムズ、木下グループ

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