小吹隆文撰・週末アート、11/16〜

2016.11.16 21:00
(写真3枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、旅にまつわる展覧会などを紹介。独自の視点による刺激がもらえます。

鉄道をテーマにしたレアな企画展
『鉄道芸術祭vol.6 ストラクチャーの冒険』
@アートエリアB1(大阪市北区)

大阪・中之島の京阪なにわ橋駅の地下1階コンコースに位置する「アートエリアB1」。このスペースでは美術展、上映会、講座など多彩な催しが行われています。そして鉄道駅という立地を活かして毎年行われているのが『鉄道芸術祭』です。

榎忠《スペースロブスター P-81》 撮影:米田定蔵/©Chu Enoki
榎忠《スペースロブスター P-81》 撮影:米田定蔵/©Chu Enoki

6回目となる今回のテーマは「ストラクチャーの冒険」。鉄道がもたらした社会システムの様々なストラクチャー(構造、機構、制度など)に着目して、美術家の榎忠、音楽クリエイティブチームのインビジブル・デザインズ・ラボ、漫画家の五十嵐大介が、趣向を凝らした展示を行っています。また、会期中にはトークや貸切電車を舞台にした電車公演など、多彩なイベントが行われるのもこのイベントならではの魅力です。

2016年11月12日(土)〜2017年1月22日(日)
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土俗と洗練、強烈な色彩感覚の版画世界
『わだばゴッホになる 世界の棟方志功』
@あべのハルカス美術館(大阪市阿倍野区)

20世紀日本を代表する版画家の一人、棟方志功(1903〜1975)。彼は幼少期から目が弱かったものの、絵が大好きで油絵を独学。雑誌『白樺』で見たゴッホの「ひまわり」に衝撃を受け、画家を目指して上京しました。その後版画に転向し、民藝運動との交流や仏教をテーマにした作品で評価を高めます。

《飛神の柵(御志羅の柵)》 昭和43(1968)年 棟方志功記念館蔵
《飛神の柵(御志羅の柵)》 昭和43(1968)年 棟方志功記念館蔵

戦後は『ヴェネツィア・ビエンナーレ』や『サンパウロ・ビエンナーレ』など海外で受賞を重ねて地位を確立。晩年は左目がほぼ失明状態になりながらも制作を続け、郷土の東北を題材にした作品を手掛けました。彼の生涯をたどる本展では、初期から晩年の代表作を網羅するほか、書籍の挿画や美人画なども展示し、彼の多彩な芸術世界に迫ります。

2016年11月19日(土)〜2017年1月15日(日)
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ポスターを見て、バーチャル旅行体験
『なにで行く どこへ行く 旅っていいね』
@京都dddギャラリー

「旅」と「ポスター」の関係をたどる興味深い展覧会が、「京都dddギャラリー」で行われています。

「そうだ京都、行こう。南禅寺」(JR東海) 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館所蔵
「そうだ京都、行こう。南禅寺」(JR東海) 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館所蔵

鉄道、船、飛行機など移動手段の発達により、旅は多くの人にとって身近なものになりました。同時に旅行産業も発達し、街なかや電車、バスに貼られたポスターが、我々を遥かな旅路へと誘います。見知らぬ土地の名所や名物がデザインされたポスター。それらを見ただけでワクワクした記憶を持つ人も多いでしょう。本展では、カッサンドルや亀倉雄策などの巨匠がデザインした作品はもちろん、JR東海の「そうだ京都、行こう。」など、近年の代表的な旅行ポスターも紹介。グラフィック・デザインが人々の旅行意識にどのような影響を与えたのかを考察します。

2016年11月11日(金)〜12月3日(土)
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