希代の日本語ロッカー、吉井和哉の10年

2013.2.12 12:00
(写真2枚)

「何をココで休もうとしてるんだ、みたいな(笑)」(吉井和哉)

 

──曲単位では、震災の直前となる11年2月にシングルとして発表された『LOVE&PEACE』も、改めて聴くと予見的なところもあって印象深いですが。

「ソロのスタートいうのは手探りな自分との葛藤でもあったんですけど、それと同時に世の中に対する『なんかが変だぞ』という想いというか。僕の楽曲って、かつての『JAM』という曲もそうですけど『なんかおかしくない?』という問いが常にあって。音楽で世界とか時代は変わらないのかもしれないけど、メロディにはそういう力があるんじゃないかなと思っていて。人を穏やかにさせたり、人を勇気づけたり…。ここ2~3年はそういった音楽の可能性に目を向けたところがありました」

──時代と対峙しながら、そういった大きなスケールで日本語ロックを歌える音楽家は少なくなったというか。吉井さんは、そういった「音楽の可能性」を諦めずに活動されている、数少ないおひとりだと思います。

「もちろん海外とかだと、いろんな運動をしながら音楽をしている人も結構いますけど。僕はそんなことはやっていないし、いろんなスタイルがあると思うんですね。やっぱり『LOVE&PEACE』もそうだったんですけど、大々的に平和のことを歌うよりも、何が平和なことなのかとか、もっとカジュアルで等身大のこととして人のなかに入っていけるものにしたいと思っていて。例えば、お茶の間のシチュエーションだったり、コタツのなかのシチュエーションだったり(笑)、歯磨きだったり、洗面所だったりと。そこがやはり僕は好きですね」

「わりと昔から、シニカルな視点のものが多い」とは吉井和哉
「わりと昔から、シニカルな視点のものが多い」とは吉井和哉

──確かに、吉井さんの歌詞というのはたまにとんでもないところから攻めてくるというか。結構シリアスなことがテーマに歌われていても、ポンとごく日常的な言葉がユーモラスに差し込まれてきたりして。

「うん。わりと昔から『金曜日の夜だから遊びに行こうぜ!』みたいな歌詞はあまりなくて、シニカルな視点のものが多いですね。やっぱり僕が影響を受けたアーティストも、そういう人が多かったから。でも、『血潮』とか『HEARTS』といった最近の新しい曲は、言葉も誰が聞いても理解できるものでありながら、ちゃんとみんなから吉井和哉節と言ってもらえる楽曲だと思うので。またちゃんと両方できるようになったというか、わかりやすい言葉だからイコール売れ線みたいなものではなくて、ちゃんとリアルさがあって。『母いすゞ『(2011年11月発表)はそんなキッカケにもなった曲ですね。何のことを歌っているのかわからないようでわかると思うし、それこそいろんな批判も入っているし」

──お話を聞いていると、次のアルバムはこれまでと違った開け方をした作品になりそうで楽しみですね。

「そうですよねぇ・・・。何をココで休もうとしてるんだ、みたいな(笑)。今までも休む休むと言って休まなかったからもちろんやりますけど、ただ『血潮』や『HEARTS』のような、ちょっと前の自分が得意だったことの延長線上の曲がいっぱい入ったアルバムを出すのが僕は正解だとも思っていなくて。だから、吉井和哉ってめんどくさいんですけどね(笑)。でも、次に自分が納得できる作品を出した時には、今の新曲も過去のものでホントに『グッドバイ吉井和哉』だったんだね、と言えるものができると信じて待っていて欲しいですね」

──そして、今回のベスト盤に伴うツアー・タイトルも『GOOD BY YOSHII KAZUYA』ということで。会場も大阪は3月13日に高槻現代劇場・大ホールで、3月7日には姫路、5月11日には和歌山、5月12日には奈良など。これまでのツアーとは異なる会場や地域ばかりを回るスケジュールとなっています。

「第一期の吉井和哉の最後のツアーなので。みなさんもこの10年にいろいろあったと思うので、みんなで一緒に10年を卒業できればなと思います。普段なら関西は大阪城ホールで近県の方が集まってくださるので、今回は細かくお礼参りのような感じで考えております」

吉井和哉

2013年1月23日発売
初回限定盤(3CD+DVD)
TOCT-29112/5,800円
通常盤(2CD)
TOCT-29115/3,500円
EMIミュージック

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