『Meets』編集部の余談。

今週末、飲みたいワイン。第6回

2020.6.5 17:00

カテゴリ:お酒

家飲みの日々が続くなか、偶然立ち寄った天満橋のワインショップ[salvis wine & records]で、お薦めのヴァンナチュール(自然派ワイン)の複雑な味わいに開眼。カタカナや専門用語が苦手な人でも楽しめる! 週末に飲みたい、小さな作り手による物語のあるワインを紹介します。


第6回

大きな方向転換で、土地の個性が出るワインに。

『CANCELLINO』

今回は、イタリアの首都ローマを東へ、アドリア海に面したアブルッツォ州の白ワインをご紹介します。

アブルッツォ州中部の海辺の町ペスカーラ。その内陸20km程のあたりにある小さな村、ピアネッラでそのワインは造られています。ワイナリー「ラバスコ」のオーナー、イオーナ・ラバスコさんは、醸造を始めた当初は機械や最新技術に頼ったワイン造りをしていましたが、「これで本当に土地の個性が出るのか」と自問自答していました。

ある日、隣のウンブリア州にある、有機農家が営むワイナリー「コッレカプレッタ」のワインを飲んで、土地を表現した素朴な味わいに衝撃を受けます。そこで、大胆に方向転換! 機械や装置をすべて手放し、45ℓの斗瓶「ダミジャーナ」を使った古典的で小規模なワイン造りに切り替えました。

明るい笑顔のイオーナさん。手を置いている瓶が「ダミジャーナ」です。
イタリア半島を縦貫するアペニン山脈の中で最も高い山塊、グラン・サッソを見渡せる地に、『カンチェッリーノ』のブドウ畑があります。

畑は村内に点在し、各地の気候や土壌に合わせたブドウを栽培しています。『カンチェッリーノ』には早積みのブドウを使うため、アルコール度数はやや低めの仕上がり。すべての畑が有機栽培(ビオディナミ)で、化学肥料の代わりに自家製の調剤をつくり、溜めた雨水を使うなど、土地のもつ力を積極的に取り入れています。

酸化防止剤(SO2)を使わない理由は、「健全な果実には必要ないから」。収穫時に畑で腐った果実を取り除き、さらに醸造所でも選別。最後に自分たちの手でひと房ずつ潰しながら発酵槽に入れるという3段階のチェックをすることで、腐敗果が入る可能性はなし。酸化防止剤を使わずに醸造に失敗したことは、これまで一度もないそうです。

瓶口のキャップシールは、止めただけのシンプルなタイプ。

信念に従うイオーナさんの前向きなパワーと、自然や土地のエネルギーが詰まった力強いワイン、ぜひお試しください。

どんな味ですか?

開けたては、自然派ワインならではの還元臭(硫黄のような匂い)が少ししますが、次第に消えて干し草のような香りに。ドライでさっぱり、柑橘の爽やかさもあって飲み口がいいワインです。完熟前の果実ならではの心地いい“青さ”が、ハーブやバジルなどの入った料理によく合いますよ。前菜、魚料理…何にでも合わせやすい一本です。

飲んでみました。

抜栓後の独特の香りに、これが“還元臭”…と納得。少し置くと気にならなくなるのでご安心を。甘さはなく、やや軽めのアルコール度数で味わいもスッキリしているので、ずっと飲めそうなタイプです。生産地のピアネッラがどこにあるのか調べるときに、Googleマップで実際に歩いてみて、ストリートビューののどかな風景に心躍りました!

思わず一杯の量を多めに注ぎたくなる、飲みやすいワインです。
ワインのもつナチュラル感は、ラベルの雰囲気にも現れています。

今週のワイン

カンチェッリーノ

産地:イタリア・アブルッツォ

2,300円(税抜)


salvis wine & records
[天満橋]
大阪市北区天満3-3-18 順源ビル1F
TEL 06-6356-7072
12:00〜20:00 水曜休
Instagram(@salvis_wine

店主・野口一知さんがセレクトする小さな作り手のワインと、好きな音楽のレコードを扱う専門店。ワインはヨーロッパを中心に約200種を扱い、その約8割がナチュールワイン。知識ゼロでも、味の好みや飲む相手などを伝えれば、ぴったりのワインを教えてくれる。奥には隠し部屋的なバー空間があるのでぜひお尋ねを。全国発送可。

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MeetsRegional編集室 1989年創刊以来(今年で31年目突入!)、関西の街をフォーカスし続けるリージョナル・マガジン。編集部員をはじめ、誌面に携わるさまざまなスタッフが自分の足で探してきた店や人、モノやコトを、私感たっぷりにご紹介。街や酒場の“ゴキゲン”を言い訳に、どうにも飲める(飲み過ぎる)スタッフ多め。現在、「WE♥酒場」をキャッチフレーズに、酒場にまつわるエトセトラを12カ月連続で特集中。毎月1日発売。

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