大正文学界の“アウトローさ”をエッセンスに…『ブラッサム』が描く「書くということ」

6時間前

『ブラッサム』第27回より。珠(石橋静河)は保(金子大地)とともに札幌に行くことを決意する(C)NHK

(写真4枚)

連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第6週は「ふたり、北へ」と題し、お腹に子を授かった珠(石橋静河)と保(金子大地)の札幌行きの話が進んでいる。

木村家の親戚・正吾(三宅弘城)の後押しにより、保は札幌拓殖銀行への就職が内定。夫婦となった保と珠はやがて生まれてくる子とともに、遠い北の地で新たな家庭を築く覚悟を決めた。

■ 黒崎、左、秋山…それぞれの文学への思い

11月3日に放送された第27回で、東京を後にする珠に贈ったそれぞれの人物の言葉が印象的だった。

かつて珠が書いた小説を「稚拙」「テーマに対する立ち位置が不明瞭」「もっと腹ん中見せなさい」と酷評しながらも、実は密かに珠の才能を買っていた『首都公論』編集長の黒崎(遠藤憲一)。

『ブラッサム』第27回より。珠の才能を認めていた黒崎(遠藤憲一)の本心をつつく山中(井浦新)(C)NHK
『ブラッサム』第27回より。珠の才能を認めていた黒崎(遠藤憲一)の本心をつつく山中(井浦新)(C)NHK

彼は珠の札幌行きを知り、「もう書かんのか。そうか。達者でな」「書かない作家につき合ってる暇はない」と素っ気ない。しかし、黒崎が人知れず湛える表情の中に、ひとりの有望な新人が花開かず終わることへの無念さがうかがえた。

珠と同じく作家志望の左(北野秀気)は、「お互い書き続けてたらまた会えるはず。僕らは同士でライバルやろ。書かなあかんぞ」と言い、「あこがれた世界」の入り口から立ち去らなければならない珠の気持ちを汲んで、エールを贈った。

『ブラッサム』第27回より。同志・左(北野秀気)からエールを贈られる珠(C)NHK
『ブラッサム』第27回より。同志・左(北野秀気)からエールを贈られる珠(C)NHK

悠樂軒の常連客で人気作家の秋山格之介(高良健吾)は、「結婚というのは、不純と矛盾の塊なんだ。ただ、僕はそんな不純と矛盾こそが人間らしいと思ってる」と、珠へ餞の言葉を贈った。

■ 秋山の一言一言に滲み出る「ものを書くとはどういうことなのか」

これまで時折、秋山のふとした言葉から滲み出る書き手としての哲学が、胸に響いた。

「文学は呼吸。吸うように読んで、吐くように書く。どちらかでは生きていけません」(第21回)

(黒崎に小説を酷評された珠に向けて)「それはよかった。こき下ろされて傷つくのは、自分を信じた証拠だろう。自分を信じられない人間に、いい小説は書けない。だからね、何があっても自分を手放しちゃいけないよ。いつか君の力になる」(第24回)

『ブラッサム』第27回より。(C)NHK
『ブラッサム』第27回より。珠に餞の言葉を贈る秋山格之介(高良健吾)(C)NHK

■ 自身も「書く人」である脚本家・櫻井剛ならではの言葉選び

『ブラッサム』は作家になる主人公の物語なので、珠をはじめ、彼女を取り囲むそれぞれの人物の「書く」ことへの信念と矜持が、物語の随所に刻まれている。こうした描写の数々に、脚本家・櫻井剛さん自身の「書く」ことへの姿勢が表れている気がしてならない。このことについて、制作統括の村山峻平さんに聞くと、

「登場人物の『書く』ことへの思いの描写について、櫻井剛さんも大変に悩まれたのではないかと思います。当時の文学に携わる人たちや文士たちって、不良といったら言い過ぎかもしれませんが、先進的すぎて世の中からは『外れている』感じもあったのではないかと思うんです」と話す。続けて、

「言葉を駆使して時代の『瞬間』を切り取って作品に残してきた人たちは、現代の視点から見ると、ある意味アウトローともいえます。闘いながら、とても重要なことを残してくれた書き手の先達たちに対するリスペクトと、ご自身も脚本家である櫻井さんの思いも全部足して、朝ドラという枠のなかでできる範囲で、絶妙な言葉選びをしてくださっていると感じます」とコメントした。

開拓の地・北海道への移住を決意した矢先、早産で子を喪ってしまった珠。彼女はこの悲しみをどう乗り越えて、ふたたび書くことに向き合っていくのだろうか──。

取材・文/佐野華英

  • LINE

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

人気記事ランキング人気記事ランキング

写真ランキング

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本