4400円で泊まれる名建築…1979年大阪生まれ世界最古の「カプセルホテル」日本最大級の建築イベントの人気企画密着

7時間前

「カプセルホテル」は実は大阪が発祥。世界初の「カプセルホテル」創業の地で、今も現役で宿泊者を迎える最古の「スリープカプセル」。レトロさがウケて、サラリーマン層はもちろん、若者や海外からの旅行客にも人気に。特別公開に、女性も興味深々(カプセルイン大阪)

(写真22枚)

大阪で今も使われている「生きた建築」を無料で公開する日本最大級の建築イベント『生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(以下イケフェス大阪)2026』が、今年も10月24日と25日を中心に各地で開催される。2014年に始まった『イケフェス大阪』の開催は、今年で13回目。

当日自由に見学できる建物も多数あるが、事前申し込み制の特別プログラムもあり、昨年の応募倍率は2025年実績で平均6.25倍。中にはなんと76.8倍のプログラム(「鯛よし百番」建築・歴史ガイドツアー)もあり、高い人気を誇る。

そんな人気プログラムのひとつが、世界初の「カプセルホテル」として「大阪セレクション」に選定されている「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」。同イベント開催初期から、毎年参加する施設のひとつで、応募倍率は10倍を超える。今回は、10月17日に開催された特別公開プログラムに密着した。

(カプセルイン大阪)
「梅田ニュージャパン」といえば、「館内温水プールの生中継」という印象があったがそれも昔…2025年5月7日にリニューアルし、おしゃれな外観に。「以前と印象が変わりすぎて、通り過ぎていくお客さんも結構いるんです」とチーフマネージャー・竹内隆治さん(カプセルイン大阪)

◆この日は女性も見学OK!黒川紀章氏設計の「スリープカプセル」、実は『大阪万博』レガシー

(カプセルイン大阪)
この日の特別公開プログラムでは、20名の参加者に対し、「梅田ニュージャパン」のスタッフ4名による案内が。見学しながら、普段の利用者の様子や、現場でのカプセル維持管理について参加者たちが熱心に質問をしていた(カプセルイン大阪)

今回訪れた「スリープカプセル」は、「阪急東通り商店街」の男性専用のサウナ・スパ「梅田ニュージャパン」(大阪市北区)に併設のカプセルホテル「カプセルイン大阪」にある。宿泊者のチェックアウト時間を調整し、誰もいない館内の「第1号カプセルホテル」のあるフロアなどを、通常時は入館できない女性も見学できる。そんな貴重な機会ということもあり、定員20名のツアー参加者の多くが女性だった。

同施設5階で今も現役で使用されているのが、1979年に完成した、ひとり1カプセルの宿泊用のFRP(繊維強化プラスチック)製カプセルユニット。その数は195室。

(カプセルイン大阪)
「カプセル・イン大阪」を紹介する冊子や書籍など用意され、参加者たちは興味深々で手にとっていた(カプセルイン大阪)

設計は「豊田スタジアム」「福井県立恐竜博物館」「クアラルンプール国際空港」など国内外のランドマークを多数手がけた建築家・黒川紀章氏(1934~2007)。1970年の『大阪万博』では、東芝IHI館、タカラ館、空中テーマ館を手掛けた。

その『大阪万博』に展示された黒川氏の「カプセル住宅」を見て、新しいもの好きの当時の「ニュージャパン観光」社長・中野幸雄氏が、「サウナに入ったあとに、廊下で所せましと寝ている人たちをなんとかしたい」と黒川氏に設計を依頼したのが、世界初の「カプセルホテル」の誕生のきっかけである。

(カプセルイン大阪)
館内の壁には、「中銀カプセルタワー」など斬新な建築を多数残した黒川紀章氏が登場する宇宙を思わせるような広告ビジュアル、「キャバレー・ニュージャパン」で開催された横山やすしきよし、尾崎紀世彦さん、藤圭子さんら出演のクリスマスショー、ラビット関根を起用した広告ポスターなども飾られ、かなり興味深い(カプセルイン大阪)

◆ 貴重な「世界最古のカプセル」から最新型まで…もはや“泊まれるカプセルミュージアム”

(カプセルイン大阪)
黒川紀章氏設計貴重な「世界最古のカプセル」に寝転んでみる。「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」

丸みを帯びた穴蔵のようなカプセル内には、テレビ、時計、ラジオ、パーソナルライト、スプリンクラー、寝具などを備える。ストライプのざっくりした織りのブラインドを下ろせば、プライベート空間も確保できる。

(カプセルイン大阪)
このブラインドもレトロな雰囲気満点。補修を重ねて、大切に使われてきたものだと言う「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」

2025年のリニューアルでは、カプセルはクリーニングのみを施してそのままに、通路天井にミラーが貼られる工事が行われ、2段に並ぶカプセルが、まるで4段あるように見える効果が加わった。いくつものカプセルが連なる迫力ある空間に、フロアに足を踏み入れた参加者からは、思わず感嘆の声が漏れていた。

(カプセルイン大阪)
フロアに入った瞬間重なる4段のカプセルが見え、「これ上の段だと大変すぎない?」という声もあがったが、実際には2段のみ設置。参加者たちもすっかりミラーの効果に騙された「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」

プログラムでは、実際にカプセルに入ってみる「カプセルイン」もOK。参加者は、奥行き190センチ、幅90センチ、高さ90センチというコンパクトな空間を思い思いに体感。

(カプセルイン大阪)
カプセル番号や室内スイッチの表示も愛らしい「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」
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各部屋には、テレビを完備。当時はブラウン管のモニターだったが、現在は液晶に交換されている。また開業時には、テレビを見る、見ないで宿泊料金が違ったそう「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」
(カプセルイン大阪)
コンセントも完備。アラームはじめ、いろいろな機能がついている「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」
(カプセルイン大阪)
丸い形状のミラーもレトロでキュート「スリープカプセル(カプセルイン大阪)」

さらにおもしろいのは、この1979年生まれの世界初のカプセルだけでなく、1990年代の進化したカプセル、さらに2025年にリニューアルの際に導入された最新デラックスカプセルまで、時代とともに少しずつ広く、現代的になっていくカプセル空間3つを順番に見学できる。

(カプセルイン大阪)
1990年代に生まれたタイプは、「スーペリアカプセル」と呼ばれている。最初の「スリープカプセル」とは、形状が変わり、奥行は200cm。室内空間も広くなった(カプセルイン大阪)
(カプセルイン大阪)
かわいいブラインドは「スーペリアカプセル」でも健在。しかし、バージョンアップしていて快適性が向上(カプセルイン大阪)

案内してくれたスタッフは「予算や好みもあるので、どのタイプが人気とは言い切れないのですが、最初の『スリープカプセル』にぜひ泊まりたいと希望される方も結構いらっしゃいます。ただ奥行が190cmなので、海外からの方など、足が出てしまうこともあるんです」と話す。

「デラックスカプセル」のフロアはは全く異なる雰囲気(カプセルイン大阪)
(カプセルイン大阪)
ずらりと並ぶ「デラックスカプセル」も見学(カプセルイン大阪)
(カプセルイン大阪)
「デラックスカプセル」はさすが最新式。奥行207.5cmで快適に過ごせそう(カプセルイン大阪)
(カプセルイン大阪)
仕事もはかどりそうなデスクとチェアがセットになった「半個室カプセル」も存在する(カプセルイン大阪)

特別公開の最後に、「梅田ニュージャパン」のスタッフから、参加した20名には世界初のカプセルホテルとしてオープンした当時の黒川氏が写る広告ポスターなどをあしらったポストカードがプレゼントされ、イベントは和やかな雰囲気のうちに終了した。

(カプセルイン大阪)
このポストカードは、「梅田ニュージャパン」フロントで購可能(カプセルイン大阪)

「梅田ニュージャパン」で約30年カプセルホテル事業に携わってきたスタッフは、「これからもこの最初のカプセルを保存していきたいと思っていますが、なくなってしまった部品もあるので、電気系統が作動しなくなってくると、いつか将来的には変更が必要になるとは思います。その場合はどこかに展示するようなことを検討するかもしれません。カプセルを作った『コトブキシーティング』(公共施設家具などを製造。日本国内や世界に6万床以上のカプセルベッドを納入)の担当者も、『うちの若い社員は見たことがないので、会社に保存しておきたい』とも話していました」と語る。

大切に修理しながら使用を続ける方針だが、いつまでも現役で使えるとは限らないということで、現役で活躍する「スリープカプセル」の姿が見学できたことのありがたみが増す。

2025年の大規模リニューアルは、世界的な建築賞を受賞する注目プロジェクトとなった(カプセルイン大阪)

そんな貴重な黒川氏設計の「世界最古のカプセル」を見たい人は、男性なら実際に宿泊が可能。館内では「スタンダードカプセル」と呼ばれ、なんと一泊4400円から(宿泊日、プランによって異なる)。開業当時の宿泊金額は2100円だったというので、現在は約2倍の価格になってはいるが、名建築をひとりじめして満喫できると思うと、かなりお値打ちな印象。

男性参加者のひとりは「スタンダード、スーペリア、スタンダード、それぞれに1泊ずつして、すべてのタイプのカプセルを比べてみたい」と話していた。さらに女性参加者たちからも「『イケフェス大阪』参加の前後に泊まることができら最高なのに!女性も泊まれる特別企画をいつか実施してほしい」という声もあがっていた。

館内にはくつろぎの共有スペースも(カプセルイン大阪)

◆『イケフェス大阪』のメイン日程は10月24日25日…黒川紀章氏設計の建築も参加

『生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪(イケフェス大阪)2026』のメインの開催日は、10月24日と25日。公式サイトには、事前申込不要で見学できる建物を、エリアごとにまとめた便利なタイムテーブルが掲載されており、ダウンロードも可能だ。

(カプセルイン大阪)
この緑のバナーを目印に!(カプセルイン大阪)

なお、黒川紀章氏設計のプログラム参加建物はほかに、「大阪府立国際会議場」と「ミキハウス本社ビル」がある。このうち「ミキハウス本社ビル」は、25日の8時半〜13時に、開放的な1階アトリウムと細部までこだわりが詰まった地階ショールーム「ミキハウスLABO」を特別に予約不要で公開する。詳細は公式サイトで確認を。

取材・文・写真/太田浩子

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