『ブラッサム』渡部篤郎演じる清治死す…「恐ろしい。でも理解したい」──石橋静河が語る珠と父の関係性

3時間前

 『ブラッサム』で葉野珠を演じる石橋静河(Lmaga.jp撮影)

(写真6枚)

連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)の第2週が放送され、珠(石橋静河)の父・清治(渡部篤郎)が壮絶な死を遂げた。

持病が悪化した清治を診た医師は、リョウ(国仲涼子)に「はあ厳しいかもしれん」と告げる。もうひとりの自分の幻覚を見た清治は半狂乱になって包丁を振り回し、通りに出て暴れ回った挙句、珠を抱きしめ「死にとうない」と5回発し、絶命した。

『ブラッサム』第10回より。(C)NHK
『ブラッサム』第10回のシーン(C)NHK

葬儀を終え、縁側でリョウと語らう珠は「なんでじゃろ、お父(とと)様が死んだいうのに心が清々しよる。ひどい娘じゃ」と、ぽつりこぼし、そんな娘にリョウは「それでええんよ」と言う。

これからは、外で幼なじみの梅(松本穂香)と羽つきをしても、女学校の友だちと好きな格好をして記念写真を撮っても、誰からも咎められない。週タイトルでもある「父からの、解放」を経て、珠は書きたい気持ちが内側からとめどなくあふれてくるのを感じるのだった。

『ブラッサム』第10回より。(C)NHK
『ブラッサム』第10回のシーン (C)NHK

■ 2つの相反する大きな感情が、珠の人生に深く刻まれた

石橋静河が取材に応じ、この複雑な父と娘の関係について語ってくれた。石橋は「父・清治という存在が、これからもずっと珠の作家人生に影響し続けます」と語り、こう続ける。

「モデルである宇野千代さんのお父様は、千代さんが著書のなかで『バルザックかドストエフスキーの小説の中にしか出て来ないような、一種の奇人、乃至(ないし)は狂人だった』と表現されるほどにエキセントリックな方で、初めはどういう人物像なのか解読するのに苦労しました。

でも、千代さんにとってお父様と過ごした日々は単なる“トラウマ体験”ということではなくて、作品を通じてその関係性を昇華させていった。千代さんの作品中に、この父娘を理解するためのヒントがたくさん詰まっていたので、本から得た情報も多かったです」

『ブラッサム』で葉野珠を演じる石橋静河(Lmaga.jp撮影)
『ブラッサム』で葉野珠を演じる石橋静河(Lmaga.jp撮影)

そして石橋は、珠が清治に対して抱き続けた感情をこのように分析する。

「清治は鬼のように怖くて、心が凍りつくほど怖い瞬間もあれば、ふとした瞬間に苦しみや葛藤を見せたり、珠への愛情を垣間見せたりと、すごく複雑な内面が描かれています。

子どものころの珠の感情としては『恐ろしい』がいちばん大きかったのだと思います。でも、それと同じくらい『理解したい』という気持ちもあった。2つの相反する大きな感情が、珠の人生にものすごく深く刻まれたのだと思います」

■ 清治の肉体はなくなれど、珠のなかに深い根を張っている

第10回、縁側のシーンでリョウは清治について「結局、わからんかった」と言い、珠も同じ気持ちであるという表情を浮かべていた。石橋は珠の心情を、

「最後まで清治のことがわからなかったけれど、もう会えない。わからないことを受け入れなければいけない。この大きな体験をきっかけに、珠のなかに『知りたい』という探究心が芽生えていったのではないかと思います。

清治は亡くなりましたが、その存在が消えてしまうのではなく、珠のなかに深い根を張っている。でもそれが、珠の意識に上がってきてアウトプットされるまでには多分すごく時間がかかるのではないかと。珠にとって清治が大きな存在だったからこそなんだと思います。

珠の中の水面下でふつふつとしたものがあって、彼女が作家になるタイミングで、清治への思いが表面化してくる。とても長いスパンの出来事だと思っています」と話す。

『ブラッサム』第7回より。(C)NHK
『ブラッサム』第7回より。珠(石橋静河)と話す清治(渡部篤郎)(C)NHK

■ 清治の「助けてくれ」「わかってくれ」という叫び

雪が舞うなか、清治が往来で包丁を振り回し、「死にとうない」とくりかえした後、珠に抱きつくシーンについても振りかえり、迫真の演技で清治の最期を演じた渡部篤郎について語った。

「あの場に立ち会った皆が『清治が本当に狂った』と感じているなか、もしかしたら珠だけが『父には何かが見えている』とわかったのかもしれません。渡部さんが演じられる清治のなかに『助けてくれ』『わかってくれ』という、ものすごく大きな叫びがあることが伝わってきたので。

『ブラッサム』第10回より。(C)NHK
『ブラッサム』第10回のシーン(C)NHK

それをうまく表現できないから『ただ暴れて、周囲に迷惑をかける人』になってしまう。清治を理解してあげたいという珠の思いが1秒1秒募っていく感じがして、すごく切なかったです。

珠の少女時代からずっと、清治を演じる渡部さんは怖いけれど目の奥が優しいんです。その眼差しの優しさから珠は、ただの荒くれ者というだけじゃない何かを汲み取りたい、父を知りたいという気持ちがあったのだと思います」。

次週、第3週「化粧と、初恋」では、父から解放されて小学校の代用教員となった珠が初めて恋に落ちる姿が描かれる。

取材・文/佐野華英 写真/Lmaga.jp編集部

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