「いつか座長公演を」宝塚から演歌の世界に…力強いコブシで聴かせる有沙瞳の目指す道とは

8時間前

「雨降る日、必ずあなたのことを思い出すよ」宝塚歌劇在団時の出演舞台『龍の宮物語』を彷彿とさせる雨が降り続ける黄昏時、大阪・梅田で有沙瞳さんにお話しを聞きました

(写真8枚)

「宝塚歌劇団」雪組、星組の娘役スターとして活躍し、退団後は舞台を中心に活動を続けてきた有沙瞳が、2026年6月3日に『さよならは黄昏に』で歌手デビュー。レコード会社が演歌・歌謡曲の名門である「日本クラウン」ということもあり、楽曲ではコブシの効いた力強い歌声を聴かせている。俳優・歌手の二刀流で新たなキャリアを歩み始めた有沙に、デビューまでの経緯や今後の目標について話を聞いた。

取材・文/伊東孝晃(赤犬 タカ・タカアキ)撮影/Lmaga.jp編集部

◆ 三重の演歌少女が、宝塚歌劇団・星組の娘役スターに

有沙瞳デビュー曲キャンペーンより

──宝塚歌劇団に在籍されていた有沙さんが演歌・歌謡曲の世界でデビューしたことに驚かれている方も多いと思います。まずは、有沙さんの音楽的なルーツについて教えてください。

有沙 祖母の影響で幼い頃から演歌・歌謡曲を聴いていて、カラオケ喫茶に連れて行ってもらうようになってからは、自分でも歌うようになりました。もともと引っ込み思案な性格だったのですが、歌うことで祖母や周囲の人たちに喜んでもらえるのが嬉しくて。

小学校3年生の頃から専門の先生に歌を習うようになって、「将来は演歌・歌謡曲の世界で歌手デビューしたい!」と思うようになったのですが、10代の娘が出身地の三重県鈴鹿から、ひとりで東京に出る、となると家族も躊躇してしまって。

──そこから宝塚音楽学校に進学されたんですね。

有沙 宝塚歌劇を勧められ観に行ったところ、演歌・歌謡曲とは別のベクトルでものすごく惹かれ、「ここで勝負したい!」と思うようになりました。親も狭き門であることに加え、女性しかいない環境であるということもあり、宝塚ならと安心して、応援してもらえました。

──演歌・歌謡曲と宝塚のような歌劇では、歌い方も大きく違うのでは?

有沙 そうですね。1回目の宝塚受験では、それに加えて自分を出しきれなかったことで、不合格になりました。そこから「宝塚に人生を懸けたい!」という想いがより強くなり、演歌・歌謡曲の歌い方をいったん封印して、2回目の受験でようやく合格できました。

──入団後も、下級生の頃から歌うシーンがたくさんありましたね!

はい。宝塚歌劇団に在籍中は、娘役に合うようにキーも高めの歌い方をしていたのですが、あるショーで(雪組公演『La Esmeralda』)でザ・ピーナッツの『情熱の花』を歌った時に子どもの頃に学んだ歌い方が活かせることに気づいたんです。その後の星組公演『ANOTHER WORLD』の「初音」役や、同新人公演の「阿漕」役で、さらに生かした役作りをするようになりました。

演出の先生にも「いいね!」と面白がっていただいて、韓国のトロット(韓国の演歌・歌謡)の楽曲『愛のバッテリー』(星組公演『キラールージュ(Killer Rouge)』)をソロで歌う場面や、歌謡曲のような楽曲を歌う場面をもらうことも増えました。演歌・歌謡曲の歌い方を封印するのではなく、歌唱法も使い分けて、自分だけの「強み」に変えることができたと思います。

◆ 唯一無二の娘役として活躍、宝塚卒業後は「長良プロダクション」に所属

有沙瞳デビュー曲キャンペーンより

──宝塚歌劇団を退団後は舞台を中心に活動されていましたね。

有沙 宝塚歌劇団で過ごした12年間は、自分にとって本当に勉強になったし、華やかで充実した日々でした。宝塚の公演は、毎公演同じメンバーで手を取り合って、演目の世界観をどんどん煮詰めていくイメージ。さまざまなお役を演じる中で、『龍の宮物語』の「玉姫」役など、「やりきった!」と満足のいくお役にも出会えました。

退団後は東京に出て、舞台のお仕事を頑張っていました。宝塚と違って、外部の舞台はリアルを追求していく世界で、それにもやりがいを感じていました。一方で「演歌歌手になりたい」という思いを封印した自分というのが、心の中にずっと引っかかっていたんですよね。

──そこから改めて、本格的に演歌・歌謡曲の歌手を目指すようになったんですね?

所属事務所である「長良プロダクション」にも退団後からずっと相談はしていて、歌手デビューについての協力をしていただいていたのですが、そんな中、絶妙なタイミングで日本クラウンのオーディションの話が舞い込んできました。正直、演歌・歌謡曲での歌手デビューは諦めかけていたのですが、本当にさまざまなめぐり合わせでチャンスを掴むことができました。

◆ 「他の人がこの曲を歌っているのが想像できない」切なさと力強さが同居したデビュー曲

有沙瞳デビュー曲キャンペーンより

──デビュー曲『さよならは黄昏に』をいただいたときの印象はいかがでしたか?

有沙 宝塚時代の私を知る人にとっては意外かもしれませんが、とても自分に合った曲調だと思いました。いくつか候補曲があった中で最後に聴かせていただいたのですが、もう、他の人がこの曲を歌っているのが想像できないと思いました。

主人公は、恋が終わっていろいろな思いを抱えながらも最後は自分の意志で歩いていく、前向きな女性です。三重を飛び出して宝塚に、さらには東京に出て歌手を目指した自分の姿にも重なる部分があると思って、自分なりのイメージを描いて歌っています。

──切ない歌詞とは裏腹に、ノリの良い曲調と力強い歌声のギャップも印象的です。

有沙 たしかに。このテンポ感と歌い方によって前向きさが強調されていますね。今は、自分の中で歌い方を研究しているところで、繊細な時もあれば強さが多くなる時もあって、これからどう変化していくのか、自分でも楽しみです。 

──カップリング曲の『嫌よ、ダメよ、いいよ』は、先ほどお話の中にも出たトロット風の曲調が軽快で、メイン曲とは違った有沙さんの魅力が感じられます。

有沙 ありがとうございます。トロットは、コロナ禍で自宅で過ごす時間が多かった時にYouTubeで見てハマりました。演歌・歌謡曲の曲調なのにミュージックビデオがアイドルっぽいところがコケティッシュでかわいいんですよね。今回、楽曲の準備をする際、スタッフの方に私の好きなトロットの動画をたくさん送って、「こういうのがいいです」と伝えたら、まさに理想ともいえるトロット風ナンバーができあがりました。

◆ 全国各地のみなさんと掛け合い楽しむキャンペーン。家族からのサプライズも

有沙瞳デビューキャンペーンより

──どちらの楽曲もステージで盛り上がりそうですね。

有沙 歌いながら掛け合いができる曲調なのが、良いなと自分でも思います。今、各地で行っているキャンペーンでは、お客様との距離が本当に近くて、これは新しいな、と。舞台は照明でお客さんの表情までなかなかわからないので、手拍子や拍手でコミュニケーションをとるんですが、キャンペーンはすごく近い距離で、ひとりひとりの表情もしっかりわかりますし、いろいろなお話もさせてもらっています。

宝塚時代からのファンの方は女性が多いんですが、演歌・歌謡曲のファンの方もわたしを見つけて、「遊びに来たよ!」と会いに来てくれます。ステージ上からよく見えるので、宝塚時代から知ってくださっている方、歌手デビューしてから知ってくださった方、みんな一緒になってノッていただけるのが嬉しいですね。

──まさに宝塚と演歌の架け橋ですね!おばあ様も歌手としての活躍を喜んでいらっしゃるのでは?

そうですね。「おばあちゃん孝行」少しはできているんじゃないかなと。祖母がいなかったら、芸事はやっていなかったというくらい、わたしの中で「おばあちゃんは仏様!」って、感謝しています。祖母は、歌手デビューも「がんばってやってみたら!」とすごく応援してくれていますね。

地元三重のキャンペーンの際には、家族で来てくれていたんですが「またね!」と別れた翌日の名古屋にも、なんとサプライズで家族が来ていて。歌っていて気がついたんですが、もう動揺が半端なくて、歌詞飛んじゃいました(笑)家族のやさしさと、愛を感じて、グッときました。こういうのに弱いんです。

◆ 夢は座長公演。演歌・歌謡曲の魅力を伝えられる歌い手に!

有沙瞳デビュー曲キャンペーンより

──所属事務所である「長良プロダクション」の先輩方から、デビューにあたってお言葉はありましたか?

有沙 田川寿美さんからは、「大変だと思うけど、いろいろと背負いすぎず、そのままの瞳ちゃんで育っていってほしい」と言っていただけて。私、もともと心配性で、歌手デビューが決まったときも「これからは自分一人の力で頑張っていかなければ!」と、どこか気負ってしまっていたんですね。そんな時にこのような温かいお言葉をいただき、もう涙腺が崩壊して、ひと目もはばからず泣いてしまいました。

水森かおりさんも、2026年4月の『夜桜演歌まつり』で私のデビュー曲お披露目をずっと見守ってくださって。演歌・歌謡曲の第一線で活躍されている先輩方が、こうしてそばにいてくださることは、本当に心強いです。

──今後の目標は?

有沙 まずは、演歌・歌謡曲の歌手として、みなさまに認めてもらえるよう、積極的に活動して、大きなステージに立てるようになりたいです。舞台のお仕事もあるので、キャンペーンにかけられる時間がどうしても少なくなってしまうのですが、その分、聴いてくださる方の心に届くよう、しっかり歌っていきたいと思います。

あと、やはり私のこれまでのキャリアを活かせるように、ゆくゆくは、お芝居と歌謡ショーで構成された座長公演ができるようになりたいですね!

◆ 沢山のお客様の優しさに感謝。関西キャンペーンのリベンジを誓う

──最後に、Lmaga.jpの読者にメッセージをお願いします。

有沙 幼い頃からの夢だった演歌・歌謡曲の世界で活動できるようになり、日本が誇るこの素晴らしい音楽を少しでも多くの人に聴いていただけるよう、頑張りたいと思います。

歌手としては、まだまだ未熟ですが、お近くでキャンペーンやイベントがある時は、ぜひ一度、歌を聴きにきてください。舞台のイメージをもって来てくださった方は、MCでの素の私を見て驚かれる方も多いようですが(笑)、そんなナチュラルな部分も楽しんでいただけたらと思います。

6月の関西キャンペーンについて、私自身とっても楽しみにしていたのですが、声の不調により歌うことが出来ず、本当に申し訳ありませんでした。その中でも沢山のお客様がいらしてくださり、心を救われました。絶対に歌を聴きたかったはずなのに、「会えるだけで嬉しい」ってお言葉を沢山いただき…皆さまの優しさに感謝でした。本当にありがとうございました。

それと同時に絶対に関西キャンペーンをリベンジして、次こそ歌を聴いていただきたいという思いが溢れました。必ずまた伺いますので、その時はぜひ会いにいらしてください!

歌はもちろん、MCなどでみせるナチュラルで気さくな有沙瞳のトーク力にも注目。関西キャンペーンをリベンジ開催を今から楽しみにしよう!


―有沙瞳プロフィール―

2012年宝塚歌劇団に98期生として入団し宙組公演で初舞台。2013年雪組に配属。『るろうに剣心』で初のエトワールに抜擢される。2016年12月に星組へ組替え。2017年11月~池田泉州銀行のイメージガールに就任。娘役スターとして幅広い役を演じ、23年8月『1789-バスティーユの恋人たち-』のマリー・アントワネット役で宝塚歌劇団を退団。

退団後初舞台となったミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』、『七色いんこ』『ボニー&クライド』、『レイディ・ベス』をはじめ、舞台を中心に活躍。2026年6月『さよならは黄昏に』で歌手デビュー。次回の出演作は、ミュージカル『SPY×FAMILY2 爆弾犬篇&豪華客船篇』。オルカ・グレッチャー役を演じる。

関西ではミュージカル『SPY×FAMILY2 爆弾犬篇&豪華客船篇』(12月1日~6日「兵庫県立芸術文化センター
KOBELCO大ホール」)に出演予定。製作:東宝 ©遠藤達哉/集英社
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