不祥事は作るもの、花魁・誰袖の落籍計画始動【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第22回より。田沼意知(宮沢氷魚)の手を自身の頬に添える花魁・誰袖(福原遥)(C)NHK
江戸時代のポップカルチャーを牽引した天才プロデューサー・蔦屋重三郎の劇的な人生を、横浜流星主演で描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。6月8日の第22回「小生、酒上不埒(さけのうえのふらち)にて」では、蝦夷地上知のために暗躍する田沼意知に、花魁・誰袖が思いがけない提案を。実は誰袖の方が、武士よりもよほど猛者であることをうかがわせる回となった。
■ 一目惚れした誰袖、大胆な交換条件を…第22回あらすじ
蝦夷の上知を実現するため、蝦夷地を治める松前藩の領地召し上げを狙って動きはじめた田沼意知(宮沢氷魚)。「花雲助」と名乗る彼に一目惚れをした大文字屋の花魁・誰袖(福原遥)は、意知の目的が松前藩の抜荷の証を立てることだと盗み聞きし、自分の身請けを条件に協力を持ちかける。意知はそれを断るが、誰袖は客として店を訪れた松前藩藩主の弟で、江戸家老を務める松前廣年(ひょうろく)に近付くことに成功した。

誰袖は、廣年が吉原で遊べるような自由なお金を持っていないということと、ロシア産の琥珀の腕輪を付けていたという情報を、意知に流す。それが抜荷を行っている証拠にはならないことを意知が告げると、誰袖は廣年が抜荷をするような状況を作ることを提案。誰袖の望みが、自分の顔を日がな一日眺めることだけだと聞いた意知は、自分の身分をはじめて明かし、目的を果たすことができたら身請けをすると約束した。
■ 政治パートの隠れたジョーカー・田沼意知
その最後があまりにも異様だったためか、田沼意知の功績や人となりというのは、あまり伝わっていない。たいていは「父親の権力を利用して異例の出世を遂げた、鼻持ちならない人物」として扱われているが、数少ない証言では「優秀な人」という声もある。いわば幕府の中枢にいながら、性格も行動も比較的自由に動かしやすい、『べらぼう』政治パートの隠れたジョーカーと言える人物だった・・・ということに、この第22回で気付かされた。

『べらぼう』の意知は、天才的な政治家だけど、他人への気配り・・・特に能力の劣る人に対するぞんざいさが目立つ父・意次(渡辺謙)と違い、非常に細やかな配慮ができる人物に設定された。特に第1話の初登場では、陰で女中にセクハラしているのかと思いきや、実はこっそりと残り物を持ち帰らせていたという形で、好青年ぶりをアピール。ただ、蝦夷地の上知を自分が取り仕切ることを申し出たのは、やはり父の後継者として、己の力を誇示したいという野心があったように見える。
とはいえ、やはり優等生ゆえか、松前藩の弱みを握るのに「抜荷の証拠の絵図を手に入れる」ことだけに、気持ちが持っていかれている様子。ここで思い出したのが、ライバルのミスを思わぬ方向から誘導することで、細見の市場を耕書堂の独占状態にした、第20回の重三郎のやり口だ。相手のミスを探し出してその足を引っ張るのではなく、ミスを作る罠を仕掛けて、ハマったら即座に叩きのめす。もしかして意知に必要だったのは、自分の利のためなら卑怯な手段も厭わないという、重三郎並みのズルさとガッツなのかもしれない。
■ 修羅場慣れした誰袖「卑怯な手段」を提案
そんなわけで、真面目一辺倒の意知に「卑怯な手段」を提案してきたのが、重三郎と同じ吉原育ちの花魁・誰袖というのは、なんとなく納得が行くような気がする。惚れた男に協力するという一念から、どうすれば「花雲助」が望む、松前藩の不正の証拠を握ることができるのか?・・・を考えた末に「不正が見つからないなら、作ればいいじゃない」という悪だくみに至るとは、重三郎並みのナチュラルボーン策士である。

しかしドラマのなかで誰袖が話したように、彼女はずっと吉原という、きな臭い「女の戦場」で育ってきた。美貌も知性も一流でないと、ボロキレのように捨てられる。客を上手くあしらえなければ、暴力的な相手になにをされるかわからない。女郎同士の妬みやそねみ、足の引っ張り合いもあったに違いない。多少のやっかみは受けても、基本的には老中の跡継ぎとして善意だけで生きてこられた意知より、よほど修羅場慣れしていたのだ。
そして悪だくみには慣れてない意知くん、上手くいったら落籍させるというのを条件に、どうやらこの作戦を誰袖に丸投げしてしまう模様。とはいえ、重三郎への身請けを約束させるという緊急性の低い証文を、危篤の人間に無理から書かせるような・・・大奥にいたら毒を盛るに違いないと重三郎に言わせしめた、実行力の塊のような誰袖様。あの鼻の下伸ばしっぱなしな廣年だけが相手なら、案外コロッとやってしまうかもしれない。
■ 松前藩の背後に、えなりかずき&生田斗真が…
ただ誰袖は、自分以上に戦い慣れていて、欲が強く、そのためには他人を貶めることも厭わない人間などほかにいない、と考えているフシがある。吉原の外に目を向けたら、彼女以上に欲も策略も化け物級の人間が、松前藩のバックにいることを誰袖は知らなかった。そう、前回視聴者を騒然とさせた、松前藩主・松前道廣(えなりかずき)の悪趣味な宴会にも参加していた、一橋治済(生田斗真)だ。

彼が意次たちの蝦夷地ゲット作戦に横槍を入れてくるのは、前回の意次たちの会話からしても明らかだけど、政治的な圧力だけで済ませてくるのか、それとも次期将軍候補たちを次々と毒殺(推察)したのと同じように、殺人上等の精神で介入してくるのだろうか? もしかしたらこの蝦夷地をめぐる冒険、なにげに誰袖VS治済の間接的な戦と言えるのかもしれない・・・と考えたら、なんだか誰袖の応援をしたくなってきた。
それにしても、朝ドラ『舞いあがれ!』(2022年)の元気で素直な主人公・舞を演じた俳優と同一人物とは思えないぐらい、誰袖役の福原遥の妖艶な演技は予想以上だ。あの「んふ♪」という、笑いと吐息の中間とでも言えるような絶妙に色っぽい声は、今後も『べらぼう』の名物となりそうな気がする。
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。6月15日の第23回「我こそは江戸一利者なり」では、重三郎が本屋として飛躍するために、日本橋への移転を考える姿と、花魁・誰袖が意知のために、松前廣年に接近するところが描かれる。
文/吉永美和子
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