忘八 VS 地本問屋勃発! 重三郎に吉と出るのか?【べらぼう】

『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第8回より。鶴屋と交渉する蔦重(横浜流星)(C)NHK
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。2月23日放送の第8回「逆襲の『金々先生』」では、鱗形屋が『金々先生栄花夢』を発刊して復活。それによって、鶴屋喜右衛門が重三郎の板元参入を拒否する、本当の理由が明かされるという衝撃の展開となった。
■ 忘八 VS 地本問屋の争い勃発…第8回あらすじ
重三郎の作った吉原細見『籬乃花』は売れ行きも順調で、これまでの細見の倍以上の販売数を叩き出した。その一方、偽本の罪で捕らえられた鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)は、新しい青本『金々先生栄花夢』を発刊して、見事に復活を遂げる。そして重三郎の元に孫兵衛や鶴屋喜右衛門(風間俊介)らが訪ねてきて、地本問屋の仲間たちは改めて鱗形屋を支えるので、重三郎の細見が倍売れたら仲間に入れるという約束は、なかったことにしてほしいと、吉原の主人たちに伝える。

「耕書堂」を名乗る重三郎の元で、自前の板元を持てると期待した吉原の主人たちに、鶴屋は今日同行していない仲間からの意見として「吉原の卑しい人間には市中に関わらないでもらいたいし、同じ座敷にもいたくない」と告げる。それを聞いた重三郎の養父・駿河屋市右衛門(高橋克実)は鶴屋を叩き出し、ほかの主人たちとともに、地本問屋たちの吉原への出入り禁止を宣言するのだった・・・。
■ ただでは起きぬ鱗形屋、青本が大ヒット
前回偽本作りで捕縛され、これで命運が尽きたかと思われた鱗形屋だったけど、やはりお江戸で1・2を誇る老舗の板元の胆力はハンパではなかった。重三郎とアイデアを練った青本を、即座に『金々先生栄花夢』として形にした。絵が多くて娯楽性にあふれているけど、物語自体はインテリ受けする要素を備えている、「黄表紙」と呼ばれるジャンルの先駆けとなった記念碑的作品だ。

『金々先生・・・』の画期的なところは『邯鄲(かんたん)の枕』という中国の故事を元にした謡曲『邯鄲』をベースにした物語に、当時流行していた男性のスタイル「金々」にまつわる諸々のネタを投入したところ。言ってみれば、夏目漱石とか太宰治とかのポピュラーな文芸作品に、令和のあるあるネタをミックスして、非常にリアルで笑えるけれど、人生のはかなさについても考えさせる漫画を発表した・・・とでも言えば、そのインパクトは伝わるだろうか。
それがどれだけ江戸っ子の心をつかんだかは、大人になってから本を読まなくなったという重三郎の義兄・次郎兵衛(中村蒼)や、「青本ってつまんない」と言った花魁・瀬川(小芝風花)も夢中にさせたところからわかるだろう。これはその物語自体がおもしろかったというのに加えて、当時流行の最先端とされていた上方(関西)ではなく、江戸から画期的な作品が生まれたという、その驚きや誇りもプラスされていたのかもしれない。

しかしこの『金々先生・・・』のアイデアや、登場するエピソードは、視聴者は御存知の通り、ほとんど重三郎が鱗形屋に提供したもの。重三郎が「アイデアの盗用」として訴えたって全然おかしくない状況だけど、彼は怒るどころか、鱗形屋が「めっぽう面白え本を作った」ことを評価するのみだった。重三郎の深すぎる博愛精神には感心するけど、この欲のなさがいつか足を引っ張ることになるのでは・・・というのは、心配のしすぎだろうか。
■ 吉原への差別意識を露にする地本問屋たち
『金々先生・・・』で見事に復活を果たした鱗形屋だけど、それは重三郎の地本問屋の仲間入りを妨げる、大きな理由となってしまった。その参入に一番大きな「待った」をかけていたのが鶴屋喜右衛門だったが、その理由として「吉原の卑しい人間が仲間入りするなんて許せない。同じ座敷にもいたくない」と言う人がいるからだ・・・と説明したが、鶴屋こそがそう考える当人であるということは、重三郎を「引き札(チラシ)屋」と憎々しく言い放ったことからも明らかだろう。

自分の差別感情を「私じゃなくて人が言ってることです」という顔をして吐き出してくるのは、レイシストの常套ともいえるやり方だし、その腹の中に隠したドス黒い感情をチラ見せしてくる風間俊介の演技の按配が、さすがの一言だ。そして、そんな人間のドス黒さを嫌と言うほど見てきた駿河屋を始めとする吉原の旦那たちが、その鶴屋の本心に気づかないはずがない。駿河屋が鶴屋を叩き出したのは、息子を傷つけたというのもあるが、自分たちを公然と差別する者への怒りも確実に含まれていたはずだ。
これまでは吉原の女郎たちが、いかに「商品」として非人道的な扱いをされてきたのかにスポットが当たっていた『べらぼう』。しかしここに来て吉原自体が、外の人間から見たら「いやしい場所」という差別の対象であり、蔦重もそこで育ったというだけで、蔑まれる宿命を負っているのだ・・・という現実を突きつける回となった。その象徴とも言える鶴屋を叩き出したことで、吉原は地本問屋に対して、実質的に宣戦布告を突きつけることになる。

忘八たちが鶴屋や鱗形屋などを、得意げに見下すラストは非常に痛快ではあったけど、重三郎だけは「あちゃー・・・」という表情をしていた。みんなで一緒に本の世界を盛り上げたいと願う重三郎にとって、全地本問屋を敵に回すような真似は、絶対に避けたかったはずなので、完全に巻き込まれ事故である。忘八たちも今のところは協力的だが、金が絡んだら途端に手のひらを返すのは間違いないだろうし・・・冷静に考えたら前途多難な状況となった重三郎に明日はあるのか!?
◇
大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。3月2日放送の第9回「玉菊燈籠恋の地獄」では、瀬川に身請け話が持ち上がる一方で、女郎・うつせみ(小野花梨)と恋仲の小田新之助(井之脇海)が、とある計画を実行するところが描かれる。
文/吉永美和子
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