『光る君へ』で注目! 京都・宇治の「源氏物語ミュージアム」でさらにどっぷり[PR]
吉高由里子主演で『源氏物語』の作者・紫式部の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』。12月15日に最終回を迎えることになり、今から「ひかきみロス」を危ぶむ人も多いのではないだろうか。
そこでオススメしたいのが、『源氏物語』の最後の十帖の主な舞台となった京都・宇治の聖地巡礼。柄本佑が演じるまひろのソウルメイト・藤原道長とも縁の深い土地だ。今回は、『源氏物語』の世界を知るだけでなく、体験もできる「宇治市源氏物語ミュージアム」(京都府宇治市)を隅から隅まで紹介する。
目次
- 道長の邸宅でもおなじみ、寝殿造を模した「外観」
- 実物大の牛車や垣間見体験が楽しい「平安の間」
- ドラマを見てると愛おしく感じる…「六条院」模型
- 技ありの展示が満載の「宇治の間」「物語の間」
- 庭園パフェや雅なお茶クッキーが人気、館内のカフェ
- 『光る君へ』の反響大、家塚館長に聞いた「宇治」の魅力
- 宇治市源氏物語ミュージアムの営業時間やアクセス方法
■ 道長の邸宅でもおなじみ、寝殿造を模した外観
宇治橋たもとにある紫式部像から、宇治川を超えて歩くこと約10分。閑静な住宅街に突如コンクリートの屋根&ガラス張りのモダンなミュージアムが現れる。材質こそ現代風だが、平安時代の建築様式で、『光る君へ』の道長の邸宅などでもおなじみの「寝殿造」を模した造りとなっている。
ミュージアムは1998年に開館、10年ごとにリニューアルをおこない、現在の展示になったのは2018年。『源氏物語』のストーリーや資料を展示するだけではなく、光る君や彼を取り巻く女性たち、あるいは「宇治十帖」に登場する公達と宇治の姫君たちの世界に没入できる仕掛けがほどこされた施設に。まずは入口で、チケット兼フロアガイドを手にして展示室に向かうが、実はこのフロアガイドが後のお楽しみになるとは、このときは想像もしていなかった・・・。
■ こんなにでかいのか! 実物大サイズの牛車に驚き
最初の展示室は、光る君と当時の貴族の暮らしがテーマの「平安の間」。まず目に飛び込んでくるのが、実物大の牛車だ。全長5.5メートルと圧倒されるサイズだが、家塚智子館長いわく、これでも「普通乗用車ぐらいのレベル」のもの。さらに裕福な貴族・・・それこそ道長レベルになると、装飾も大きさもさらにすごいことになっていたそうだ。
牛車の中にいる姫君は、御簾で顔は見えないが、十二単衣の華やかな袖口や裾が少しはみ出ているのがわかる。これは「出衣(いだしぎぬ)」と言って、自分のファッションセンスの良さをアピールするための行為だったそう。さりげない部分まで再現しているとは、実に細かい。
■ ドラマを見てると愛おしく感じる…六条院の模型
牛車の向かいには、寝殿造の御殿での暮らしを再現したコーナー。囲碁を打っている女性たちの姿を直衣姿の男性が垣間見ているという、まさに『源氏物語』の1シーンのような風景が。
『源氏物語』のストーリーが流れるスクリーンの前にある大きな邸宅の模型は、光る君がゆかりのある女性たちと暮らす豪邸「六条院」。四町、つまり約250メートル四方というから、東京ドーム4つ分・・・関西の人がもっとよくイメージできるのは「大丸京都店の1階フロア4つ分+α」(家塚館長談)だそう。
邸宅は大きく4つに分かれ、それぞれ春夏秋冬がテーマになっている。春の邸は桜やツツジ、秋の邸には紅葉が植えられるなど、物語で描写された風景が実際にビジュアル化されると、その豪華さ&こだわりがより理解できる。この邸宅は光る君の美意識の結晶ではあるけれど、紫式部自身の「こんな邸宅があればいいのに」という願望を、これでもかと盛り込んだ空間でもあるのだ。
ところで『光る君へ』視聴者は「六条院」という名に、思い当たることはないだろうか?・・・そう、まひろ(紫式部)と道長が人知れず逢瀬を重ねたのは、六条の廃屋という設定! 2人だけの思い出の場所を、せめて物語のなかだけでも恋人たちの理想郷にしたのかと想像すると、急にこのジオラマまで愛おしくなるような気がした。
■ 当時の恋愛事情がうかがえる、「垣間見」体験も
来館者が夢中になっていた「垣間(かいま)見よう」というコーナー。ボックスに空いた穴を覗くと御簾がかかっていて、「垣間見」が体験できるのだ。御簾の向こう側がこっち側より暗いと、予想以上に向こう側がまったく見えない。しかし少しでも向こうの光が強くなると、驚くほどしっかり顔を確認できる・・・まさに平安時代のマジックミラー。あまりの楽しさに、同行の編集者とあっち行きこっち行きを何回も繰り返したほどだ。
実はこの「垣間見」というのが、宇治市源氏物語ミュージアムの重要な見どころだと、家塚館長は語る。
「『牛車はこんなに大きいんだ』と『垣間見、こんなに見えないんだ』を知っていただくのが、実は当館の醍醐味。普段は御簾の向こう側にいる女性たちを、いろんな手段で垣間見るというのが、源氏物語にはよく出てきますが、現在ではなかなか体験できないですからね。箱の一つは、照明を切り替えることができるので、見る/見られるの立場が瞬時に逆転するのがおもしろいですよ」とのことなので、光る君や登場する女性たちの気持ちを、ここで体感してほしい。
■ パネル解説だけかと思いきや…技ありの展示
「平安の間」から架け橋を通ると、次の展示室「宇治の間」が現れる。ここでは宇治を舞台にした「宇治十帖」について、巻ごとにしっかりとパネル解説が。さすが地元が舞台のシリーズだから・・・と考えていると、展示室の明かりがフッと落とされた。
何事? と思っていると、宇治十帖について解説したナレーションが流れ始める。そして物語の重要なポイントに入ると、展示室の一角に明かりが灯り、紗幕(しゃまく)の向こう側に配置されていた、該当場面の実物大のセットを確認できる・・・という仕掛け。これもまた「垣間見」を利用した、技ありの展示なのだ。
「宇治の間」と隣接しているのが「映像展示室」。ここではオリジナルアニメ『GENJI FANTASY-ネコが光源氏に恋をした』と、宇治十帖をテーマにした人形劇『浮舟』or実写映画『橋姫』(月替わりでいずれかを上映)を、観客入れ替え制で観ることができる。『浮舟』は監督が巨匠・篠田正浩だったり、『橋姫』では白石加代子が橋姫を演じたりと、ミュージアムオリジナル作品としてはなかなかのクオリティなので、鑑賞する時間をできるだけスケジュールに組み込んでおきたい。
その次にある「物語の間」は、実はこのミュージアムの中でも、屈指のエンタメ精神にあふれる展示室だ。たとえば香道でおこなわれる「組香」の一種「源氏香」のコーナーでは、5種類の香りの異同を当てる体験ができる。これがなかなか難しいのでぜひ挑戦してみてほしい(ここで前述のフロアガイドが必要! なくさないで)。
最後の展示室では企画展(12月15日まで「光る君の面影をもとめて」)が開催されており、ここで有料ゾーンの展示は終了だが、ゆっくり見て回っても所要時間は1時間弱。映像もチェックするなら、1時間半は見た方がいいだろう。宇治の観光の合間に少し立ち寄るにはちょうどいい広さだと思う。
● 平安時代をモチーフにしたパフェやお茶クッキー
また館内には、平安時代の庭園をモチーフにしたパフェが名物となっている日本茶カフェ「雲上茶寮(うんじょうさりょう)」も。こちらは入場無料の「情報ゾーン」のなかにあるので、カフェだけを楽しんでいくという使い方もOKだ。
パフェのほかに匂宮、大君、浮舟など宇治十帖の登場人物の名が付いたお茶メニューや、雲をイメージした抹茶チーズケーキも人気だそう。『光る君へ』ファンへのお土産には、平安時代の人間模様を想起した雅なパッケージイラストが印象的な「お茶クッキー 紫/藤」がオススメ。
■ 大河の「渦」!? 反響の大きさに館長も驚き
訪れた日は、平日にも関わらず、展示によってはちょっと待ち時間が発生するほど、結構な数の入場者が。家塚館長いわく、やはり『光る君へ』の影響なのか、例年よりも多くの人が訪れているそうだ。
「大河の波というより、大河の渦という感じです。うれしいことではありますが、冷静に考えると不思議ですよね。だってあのドラマは、光る君ではなくまひろの話だから、正確には『聖地』と呼べる場所ではないはず。だから逆に『なぜみなさん、来られるんですか?』と聞いてみたいです」と笑いながら語りつつ、ドラマ自体については「垣間見を上手く使った演出があったり、いろんな『源氏物語』ネタをお話に織り込んでいて、1話につき1回は必ず『こう来たか!』と思わされます」と、非常に楽しく見ているそうだ。
まひろ(紫式部)の存在とともに『源氏物語』にもスポットが当たり、改めて日本の長編小説の原点がどんな作品なのか? について、関心が高まっているのは間違いない。
家塚館長は、そのムーブメントに乗りつつも、「『話題性に乗るだけではなく、キチッとしたことをしないといけないと思います」と、こういう時だからこそ、より自分たちの役割を自覚するような言葉を。
このミュージアムの一番の目的は「『源氏物語』を読んでほしい」ということ。「『源氏物語』ってこういう話だったのね・・・ということを知ることで、本を読むきっかけになってくれたら。そして『宇治十帖』の舞台になった宇治に来て、物語の重要な場所になった宇治川を見ていただきたいと思います。特に夜の宇治川は、吸い込まれそうです」と、「宇治十帖」を愛する人ならではの観光の勧めもあった。
◇
『源氏物語』は漫画やダイジェスト本などで触れた程度の筆者でも「ああ、あの場所を視覚化するとこんな風になるのか」「そういえば、みんなで香りを競い合うような場面があったな」と、原作を思い出してワクワクすることが少なからずあった。
また『源氏物語』自体の知識はなくても、当時の貴族たちの暮らしの一端を垣間見たり、宇治と『源氏物語』の関係を知ることで、その両方により興味を持つようになるのは間違いないだろう。この機会に華やかな王朝文学の世界&今もなお神秘的な空気感がただよう宇治の地を訪れてほしい。
「宇治市源氏物語ミュージアム」の開館時間は午前9時~午後5時(入館は30分前まで)で、月曜(祝日の場合はその翌日)&年末年始休館。入場料は大人600円、小人300円。
取材・文/吉永美和子
提供/宇治市観光振興課
「宇治市源氏物語ミュージアム」
住所:宇治市宇治東内45-26
時間:9:00~17:00(入館は16:30まで) ※月曜(祝日の場合はその翌日)・年末年始休
料金:大人600円、小人300円
【年末年始のスケジュール】
2024年12月28日(土)~2025年1月1日(祝)休館
※正月臨時開館
1月2日(木)・1月3日(金)・10:00~17:00 開館
1月4日(土)から通常通り
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