藤竜也とコンビ最終章、三原光尋監督の映画「高野豆腐店の春」

2023.8.13 06:30

1964年京都生まれ、現在は大阪芸術大学映像学科の特任教授も務める三原光尋監督

(写真6枚)

年齢を重ねてますます渋い名優・藤竜也が主演をつとめる映画『高野豆腐店の春』が8月18日から公開される。監督は、これまでも藤を主演に『村の写真集』(2004年)、『しあわせのかおり』(2008年)を撮っている三原光尋。つまり『高野豆腐店の春』は、約20年の歳月をかけた3部作の最終作なのだ。この映画が撮れて本当にうれしいと語る監督に話を訊いた。

取材・文/春岡勇二

◆「コロナ禍でもう誰とも会えないんじゃないか、と」(三原監督)

──藤竜也さんを主演に迎えての映画は、前作から15年ぶりになります。今回の企画が動き出したのはどういった経緯だったのでしょう?

2019年に、藤さん主演の映画『初恋~お父さん、チビがいなくなりました』を撮った小林聖太郎監督、彼は『村の写真集』を撮ったときの助監督。世間がコロナ禍に見舞われる少し前、彼のおうちでの食事会に行ったら、藤さんも来てらして。

その帰り際、藤さんに「もう1本映画やりましょうよ」と声をかけてもらったんです。僕も藤さんとまたやりたいと思っていたので、「ぜひ!」と答えたのが始まりですね。

映画『高野豆腐店の春』のワンシーン (C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会

──それまで、藤さんとまた撮ろうと準備されていたことはあったのですか?

何本かシナリオは書いていました。ただ、そのどれもが、なんだか前の2本・・・『村の写真集』、『しあわせのかおり』の延長線上にある気がして、次に藤さんとやるのならこれまでとは違ったものをやりたいと、藤さんに声をかけてもらってすぐに新たなものを書き始めました。

──以前から用意していたものに手を入れたというのではなくて・・・。

そうです。いちから新たに書きました。ちょうど緊急事態宣言が出されたころで、家に籠もって3週間で書き上げました。

──前の2本の延長線上にないものというのは、監督のなかでどういう位置づけだったのですか?

前の2本は、中国や台湾などの「アジア映画」を強く意識して作っていたんです。スタッフクレジットに、「監督」ではなく、中国語圏で使われる「導演」とクレジットされるような気持ちで。でも今回は、自分が子どものころから慣れ親しんできた、笑って泣ける人情もの、世話ものというのでしょうか、そういった日本の映画が撮りたいと思ったんです。

映画『高野豆腐店の春』のワンシーン (C)2023「高野豆腐店の春」製作委員会

──そこにはコロナ禍の影響もあったのでしょうか?

ありました。家に引き籠もり、もう誰とも会えないんじゃないか、ずっとひとりなんじゃないかっていう不安があったんです。そのとき、誰かと会って話したり、わいわいするのってすごく大切だなと気づいたんです。例えば、笑って悪口を言い合える仲間がいるのってありがたいなって。

──劇中で、藤さん演じる愚直で職人気質の店主・辰雄を囲む幼馴染やご近所さんたち、徳井優さんや菅原大吉さんたちが演じている面々がそうですね。

そうです。演じてくれたのは、僕の大好きな俳優さんたちで、演技も達者な人ばかり。藤さんも掛け合いがすごく楽しそうで、僕も撮っていて楽しかったです。

映画『高野豆腐店の春』

2023年8月18日公開
監督:三原光尋 
出演:藤 竜也、麻生久美子、中村久美、ほか 
配給:東京テアトル

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