JR鶴橋駅の高架下を照らし続けて40年、名物書店が閉店へ

2023.8.14 07:00

JRと近鉄の西改札からすぐの「高坂書店 鶴橋駅前店」

(写真6枚)

大阪のコリアタウン・鶴橋の駅前で長年親しまれてきた「高坂書店 鶴橋駅前店」(大阪市天王寺区)が8月31日、40年の歴史に幕を閉じる。SNSではその閉店を惜しむ声があがっている名物書店、3代目社長・高坂喜一さんに話を訊いた。

■ 創業90年以上の歴史に幕

1928年ごろに創業し、かつては大阪府内で7店舗を展開していた「高坂書店」。鶴橋駅の近くだけでも本店を含む3店舗があり、鶴橋生まれの高坂さんは「小学生の頃から店番をしていました。お客さんに子どもだから分からないと思われるのが嫌で、姉と店内にある本はすべて覚えていましたよ」と振りかえる。

今年6月には「八尾萱振店」が閉店し、最後の1店となった「鶴橋駅前店」は8月末で約40年の歴史に幕を下ろす。昔は雑誌を立ち読みするお客の壁ができ、苦情がくるほど盛況だったというが、高坂さんは閉店について「今では情報はネットでも見れますし、15年前ぐらいから本が売れなくなった印象がありますね。本もネットで買える時代になり、希望がない事はやめて自由に動ける形にした方がいい」と語る。

店頭や店内には、閉店を知らせる張り紙が貼られている

7月下旬から店に閉店の知らせを貼ったところ、写真撮影や記念に住所印を押してほしいというお客が訪れるようになったという。SNSでも「鶴橋駅前で集合するときは、大体ここで本を物色して待ってたな」「子どもの頃、ここによくお世話になりました」「街から書店が消えていくのは文化が消滅していくよう」など閉店を惜しむ声が寄せられている。

■ 駅前を照らす存在だった、「みんな」の書店

JRと近鉄の鶴橋駅・西改札から約20歩(記者調べ)というまさに「駅前」にある同店は約10坪。JRの高架下に位置し、1日中暗い通路を照らす書店の灯りは、鶴橋ではおなじみの光景だ。

元旦以外の364日、朝7時から夜10時まで(現在は夜9時まで)と長めの営業を続け、特にビジネスマンの利用が多かったという。店頭の木製平台に雑誌がずらりと並ぶ開業時からの店構えを懐かしむお客も多く、中国映画の撮影がおこなわれたことも。

JRの高架下で、書店の灯りが駅前の暗い通路を照らす

高坂さん曰く、「地元密着の『町の本屋さん』というより、『みんなが使える店』だったのかも。携帯電話が普及していない頃は、よく待ち合わせの相手を呼び出す電話がかかってきて『~さん!いますか?』と探しましたね。鶴橋は焼肉店が多いのでおすすめ店を聞かれ、こっちは予算を尋ねてお店を教えたり・・・」と、老若男女のお客と会話を楽しんだ思い出に笑顔を見せる。

「普通に毎日店を開けていただけですが、『閉店は寂しい』という声は、長年続けてきたことへの評価、成績表に思えてうれしい。閉店後は店前の通路が暗くなるのが心配ですが、日々当たり前のものが消えたら、『あの店がないとやけに暗くなった』とその存在を感じてくれる人もいるのかな」。

今後は出版社の営業代行など、本関連の仕事を続ける予定とのこと。同店の営業は8月31日まで(朝7時~夜9時)。

取材・文・写真/塩屋薫

「高坂書店 鶴橋駅前店」

2023年8月31日(木)閉店
住所:大阪市天王寺区下味原町 2-2
営業:7:00~21:00

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