成島出監督&役所広司「日本映画の王道で家族を描いた作品」

2023.5.8 19:00

映画『銀河鉄道の父』の成島出監督(右)と主演の役所広司

(写真6枚)

大阪在住の作家・門井慶喜の直木賞受賞作を映画化した映画『銀河鉄道の父』(5月5日公開)。詩人・宮沢賢治の生涯を父親の視点を通し、賢治の文学はどんな家族のもとで生まれたのかを描いていく。父・政次郎を演じるのは役所広司、息子・賢治を菅田将暉、妹・トシを森七菜、祖父・喜助を田中泯という魅力的なキャストが顔を揃えた。メガホンをとったのは、2022年の『ファミリア』に続いて、父親の役所広司を撮る成島出監督。来阪したおふたりに話を訊いた。

取材・文/春岡勇二

「そんな役所さんを僕はずっと観たかった」(成島監督)

──監督は、原作を読まれてすぐに映画化を決意されたとのことですが、原作のどこに惹かれたのですか?

成島:まず、びっくりしたんです。宮沢賢治と、その父親の政次郎が登場する映画はこれまでに2本あるんですが、そのどちらでも政次郎さんは厳しい父親なんです。映画でも1回笑うか笑わないかぐらい。それで最後に1度だけ賢治を褒めるんですね。これはいろいろな文献にもそう書かれている、いわば定説なんです。というのも、賢治の弟・清六さんがそう書き残されているので。

──弟・清六さんがそう言うなら、それが定説になりますよね。

成島:ところが、門井慶喜さんの『銀河鉄道の父』の政次郎はまったく違うんです。ここに書かれた政次郎は明治時代のイクメンで、もうイクメンの走りと言ってもいい人で、親バカだったんです。しかも、門井さんは大阪の人だけに、その姿がくすくす笑える感じで書かれていて、読んですぐにこれは役所(広司)さんで映画化したいと思いました。

──役所さんで、と思われたのはどうしてですか?

成島:役所さんとは僕が監督になる以前、脚本を書いているときからお付き合いがあって。監督デビュー作の『油断大敵』(2003年)でも主演で出てもらったんですが、そのころからずっと役所さんが持ってるユーモアセンスがいいなあと思っていて。それも身近な感じで、くすくすと笑える人を演じられたら最高なんです。そんな役所さんを僕はずっと観たかったし、僕もそういうユーモアの感じられる仕事に戻りたい気持ちもあったんです。

「原作を読んで、役所さんで映画化したいと思いました」と成島出監督

──成島監督と役所さんの共働作品は、『油断大敵』のあと、2011年の『聯合艦隊司令長官 山本五十六-太平洋戦争70年目の真実』と、2022年の『ファミリア』があります。

成島:山本五十六は戦争映画で厳しい話でしたし、それでも役所さんが演じてくださったことで、ちょっとしたおかしみのある人物にはなっていたと思います。『ファミリア』は現在の国際情勢や日本在住の外国人の方たちを取り巻く問題などを描いた作品でしたから、ユーモアは挿し嵌めなかった。だからというわけではないですが、この政次郎さんはぜひ役所さんに演じてもらいたかったんです。

──役所さんは、今の監督のお話をどう受け止めていらっしゃいますか? 今回のオファーはご自身のユーモアのセンスが買われたんだと・・・。

役所:いやいや、そんなことは思わないですけど(笑)。ただ、監督が今おっしゃってたユーモアの感じられる仕事っていうのは、監督が脚本家時代の仕事、『大阪極道戦争 しのいだれ』(1994年)や『シャブ極道』(1996年)の頃のことだと思うのですが、僕もあの現場が楽しかった思い出があるので、ああいう仕事をまた2人でしたかったと言われるのはわかります。

映画『銀河鉄道の父』

2023年5月5日(祝・金)公開
監督:成島出
出演:役所広司、菅田将暉、森七菜、豊田裕大、坂井真紀、田中泯
配給:キノフィルムズ

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