GWにチェック! 2022年の「ベスト洋画」を評論家が選出

映画評論家の春岡勇二氏、ミルクマン斉藤氏、華崎陽子氏(左より)
Lmaga.jpの恒例企画となった、評論家3人による映画鼎談。数々のメディアで活躍し、本サイトの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、華崎陽子の3人が、「ホントに面白かった映画はどれ?」をテーマに好き勝手に放言。2022年公開の洋画ベスト3を厳選、GWの映画鑑賞に向けてチェックして!
「『ベルファスト』は獲って欲しかった」(華崎)
春岡:そういえば、華崎さんが言ってたクリストス・ニク監督の『林檎とポラロイド』。
斉藤:あれは面白かったねぇ。ギリシャの監督だったよね。
華崎:そうなんです! 私、メッチャ好きで。記憶喪失を引き起こす奇病が蔓延する世界で、記憶を失った主人公が治療のための回復プログラムに参加するんですけど、実は徐々に・・・という。
春岡:あれだけ面白かったのに、どのメディアもたいして取り上げてないよな。
華崎:全然話題になってないですよぉ。クリストス・ニク監督の才能爆発、って感じだったのに。
春岡:ケイト・ブランシェットがエグゼクティブ・プロデューサーだったっけ?
華崎:そうです。ケイトが惚れ込んで、監督を激推しして。長編2作目となる次作で、ハリウッドデビューだそうです(キャリー・マリガン主演)。
春岡:すごいな。俺が気になったのは、ケネス・ブラナー監督が自らの幼少期の体験を投影した自伝的作品『ベルファスト』かな。
華崎:ですよね。私、『ベルファスト』はアカデミー賞獲って欲しかったんですけど(7部門ノミネートも、受賞は脚本賞のみ)。
斉藤:つうか、獲るべきだよねぇ。プロテスタントの暴徒がカトリックを攻撃し、故郷ベルファスト(北アイルランド)が突然分断されていく。
華崎:ロシアのウクライナ侵攻に対しても非常にタイムリーな作品だったんですけど。
斉藤:それが、『コーダ あいのうた』(シアン・ヘダー監督)が作品賞なんて許されへんよなぁ。
春岡:悪い映画じゃないけど、あれで良いのかぁ?
斉藤:いや、悪い映画じゃ全然ないけどさ。でも、リメイク(エリック・ラルティゴ監督が2014年に撮ったフランス語映画『エール!』の英語リメイク作品)だしさ。それ知らんと観て、あれ、なんか見覚えあるなぁって(笑)。
春岡:ほとんど設定は同じだし。
華崎:やっぱり『ベルファスト』ですよ。
斉藤:各ショットも素晴らしいしね。幾何学的な構図のモンタージュで作られてて。で、長回しもあれば、短いショットの畳みかけもあってリズム感も抜群。あんなこと、今までケネス・ブラナーは監督作でやってこなかったのに。

春岡:ともかく監督の半自伝を開き直って撮ってるからね。それがまた上手いんだよ。
斉藤:映像のリズムと画面の厳格さ、それと反対に演技自体はすごくナチュラルで。ケネス・ブラナー監督にしては、初めて映画らしい映画を撮ったかなって感じがするね。
春岡:今回は役者たちがみんな当たり前に上手い。懐かしさだけで終わるギリギリのところで回避して、俺たちが生きてきた時代はこんなことがあったってことを上手く表現してる。
斉藤:映画にリズム感がある、あんな話なのに。やっぱり、60年代のスゥインギング・ロンドンが背景にあるから。僕は同じ自伝的作品だった、スピルバーグ監督の『フェイルズマンズ』にも感激したけどね。それはまた次回で。
華崎:『ベルファスト』とよく似てますね。自分の原体験と家族の話。
斉藤:そうなのよ。巨匠になると、映画監督って自分の半生撮りたがるのよね。フェデリコ・フェリーニ監督もそうやんか、『フェリーニのアマルコルド』(1974年)とか。
春岡:コロナ禍に見舞われたこの2、3年、気持ちが内向きになったから、自分はなんで映画監督になったのかみたいなことを描くのが多いんだよね。
華崎:サム・メンデス監督の『エンパイア・オブ・ライト』もそうですよね。
斉藤:そうそう。
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