国宝級の大発見、奈良「富雄丸山古墳」の一般公開に長蛇の列
「国宝級の大発見」の速報(1月25日)が出たことで、奈良市西部の日本最大の円墳「富雄丸山古墳(とみおまるやまこふん)」(奈良県奈良市)が高い注目を集めている。
その速報直後の1月28・29日には、一般向けの現地公開がおこなわれ、出土現場を見学できる最後の機会とあって、28日には1403人、29日には3100人と、考古学ファンのみならず、多くの地元住民が長蛇の列をなした。
同古墳から出土したのは、類例の無い異形の銅鏡「盾形銅鏡」(全長約64cm、横幅約31cm)と全長2メートルを超える日本最大の剣「蛇行剣(だこうけん)」(全長237cm)で、どちらも国内最大であり、まさしく国宝級だ。
■「富雄丸山古墳」に埋葬された人物とは?
4世紀中頃に築造されたと考えられる「富雄丸山古墳」(直径109m)は、大型円墳としては日本最大にして最古であり、その被葬者は、ヤマト王権を支えた大王に近い豪族と考えられているものの、謎とされてきた。2018年から史跡指定を目的に発掘調査をおこなっている「奈良市埋蔵文化財調査センター」の村瀨陸研究員に話を伺った。
今回の出土品について村瀨さんは、「我々の想像以上に大王に近い人物だと思われます。今後もしも同じような発見があるとすれば、宮内庁が管理している陵墓などであり、それくらいトップ層しか持てないものです」と力を込める。出土した場所は、墳丘の北東方向に方形に突出した「造出し」の粘土槨で、調査によって埋葬施設であることが判明している。
■盾と鏡が融合した特徴を持つ日本で初めての出土例
「(盾形銅鏡は)青銅製で盾の形に鋳造されており、裏面には中国の神獣が描かれた円鏡『鼉龍(だりゅう)鏡』の文様があります。鏡中央には、円形の銅鏡と同じようにひもを通す鈕(ちゅう)がありますので、盾と鏡が融合した特徴を持つ日本で初めての出土例です」と村瀬さん。「古墳時代の人々が作ったものであることは、間違いない」そうだ。
さらに、蛇が蛇行するようにクネクネした形の「蛇行剣」について、「過去最大の剣より倍以上の大きさのある、間違いなく日本最大の剣」と説明し、2つが一緒に埋葬された意味については、今後の調査研究結果が待たれるという。
実は同古墳では、毎年秋冬にかけて、同センターと奈良市観光協会が主体となり、一般参加型の「発掘体験」という先駆的な取り組みを実施している。すぐに予約が埋まってしまうほど人気だが、今回の大発見のような現場に立ち会える可能性もあり、さらに人気が加速しそうだ。盾形銅鏡と蛇行剣は現在保存処理中で、今後一般公開が予定されている。
なお、現地公開で配布された富雄丸山古墳第6次調査の概要をまとめた資料は先着6000名までだったため、同センターでは、PDFデータを全国遺跡報告総覧からの閲覧を案内している。
取材・写真/いずみゆか
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