作家から僧侶に出家し、２０２１年に生涯を閉じるまで波乱の人生を送った瀬戸内寂聴と、彼女と不倫関係にあった同じ作家の井上光晴、そしてその妻の物語を描いた、井上夫妻の長女である作家・井上荒野が綴った小説が映画化。

１１月１１日に公開される映画『あちらにいる鬼』の先行特別上映会が４日に「大阪ステーションシティシネマ」（大阪市北区）でおこなわれ、出演する寺島しのぶ、豊川悦司と、寂聴さんの秘書として知られる瀬尾まなほさんが登壇した。

井上光晴をモデルにした白木篤郎役を演じた大阪の八尾市出身の豊川は、久々に訪れた故郷に「大阪駅の前が変わっていてびっくり。あれ？ こんなんやったかな？ おしゃれで、なんか大阪の街に似合わない気もしますが･･･」と言いかけるも、すぐに「失言でしたか？」と自ら訂正し、会場に集まったファンを笑わせた。

出演のオファーが届いたときのことを、「廣木隆一監督と寺島さんと一緒に仕事ができるということがとてもうれしくて、ぜひやりたいと手を挙げました」と振りかえった豊川。しかし脚本を読んで、「実在する有名な方々がモデルで、ゆかりのある人もたくさんいる。そんななかで、自分がどのように白木という男にアプローチできるのか、難しい仕事になるなと思いました」と率直な思いを告白した。

また、共演する寺島について聞かれた豊川は、「彼女と仕事をするときは、セッションじゃないですが、実際にやっていく中で自分の思いや体がどう変化していくかみたいなことを大切に、肌触りや手触りみたいなものを大切に演じようと思っています」と、ベテランの役者同士の間に流れる独特の空気感を他にはない言葉で表現。

そして、「一番自信がないのが、物語が４０歳から始まること。最初にこの話をいただいたときに、これはちょっとキツいんじゃない？ と思いました。ですが、３０年という長い時間の話でそれぞれのキャラクターや関係性、時代背景が変化していくところも含めて、とても楽しめるものだと思います」とアピールした。

取材・写真／上地智