あの「四畳半神話大系」が悪魔的融合、夏目真悟監督に訊く

2022.10.5 09:00

©2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

(写真4枚)

天才アニメーター・湯浅政明によってテレビアニメ化もされた、森見登美彦による人気小説『四畳半神話大系』。そして、初演以来4度舞台で公演され、瑛太&上野樹里で実写映画化もされた上田誠による戯曲『サマータイムマシン・ブルース』。この2作が悪魔的融合を果たしたアニメ『四畳半タイムマシンブルース』が3週間限定で上映される。

森見&上田のほか、キャラクター原案の中村祐介、音楽の大島ミチル、主題歌のASIAN KUNG-FU GENERATION、そして、「私」役の浅沼晋太郎が改めて集った本作の指揮を執るのは、テレビアニメ『四畳半神話大系』にも参加していた夏目真悟監督。特別上映会で京都を訪れた夏目監督に話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤

「12年間という熟成期間だった」(夏目監督)

──夏目監督はテレビアニメ『四畳半神話大系』の第6話で、原画と絵コンテをやられてたんですね。

そうです。

──僕は前作を監督された湯浅政明さんの熱狂的ファンなんです。それに加えて僕自身が京都生まれ・京都育ちというのもありまして、「四畳半」の世界はさほど遠い話ではない。

ちょうど昨日、(原案・脚本を担当した「ヨーロッパ企画」の)上田誠さんと話してたんですけど、これは自分のことを描いてるんじゃないかって。『四畳半神話大系』は京都の人にとっては身近な、すごく共感を呼ぶ作品なんだなぁと改めて思いましたね。

──監督は青森県のご出身ですよね。

そうです。それこそ京都は、修学旅行で1回来たくらいです。テレビシリーズをやるとき、ロケハンで1週間くらい来て、鴨川や下鴨神社、京大とかを巡りました。

アニメ『四畳半タイムマシンブルース』の指揮を執った夏目真悟監督

──今回拝見しまして、正直ちょっと驚きました。森見登美彦さんの原作を読む前に本作を拝見したんですが、てっきり『四畳半神話大系』の続編かと思っていたら、想像よりずっとストレートに『サマータイムマシン・ブルース』であって(笑)。いきなり「裸踊り」とか。でもそれが、あの『四畳半』の世界になんの不思議もなく入りこんでいるという構造自体が結構ウルトラ技で。

まさにそうですね。上田さんの戯曲から20数年経ち、テレビシリーズ『四畳半神話大系』からも12年ですから。森見さんの小説『四畳半タイムマシンブルース』を読んだときの感覚として、僕はその12年分の時間経過を感じたんです。書き手も作品自体ももう1回生まれ直したっていうか、そこはちゃんと飲み込んで作品に落とし込みたいと思ったんです。

誤解を恐れずに言うと、『四畳半神話大系』の乾いた感じというか、クールな感じというか、そういうのから今回はちょっとウェットな感じになっていて、そこはちゃんと対峙しなければ、と。それが12年間という熟成期間だったんだろうなぁと思って取り組みましたね。

──世界観的には延長線上にありながら、似た者同士がなぜか融合しちゃったみたいなところがありますね。森見さん、上田さんにとっても歳月が経った上でのアップデートというか、リメイクというか。

『四畳半神話大系』は腐れ大学生が主人公なんですけど、自分自身も腐れアニメーターというか(苦笑)、なかなかフリーランスで食えなかったりとか、非常に(主人公であり語り手である)「私」に共感を持って演出してたんです。

自分も15年経つと結婚して子どもも産まれて、家を買って住宅ローンとか、これから子どもの教育費どうしようかなとか、そういう変化があるんで。当時観ていた人も同じだけ時間を経過しているわけなんで、だからそこはストレートにやるという思惑がありました。

『四畳半タイムマシンブルース』

2022年9月30日公開(3週間限定全国ロードショー)
原作:森見登美彦・著、上田誠・原案『四畳半タイムマシンブルース』(角川文庫/KADOKAWA)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
キャラクター原案:中村佑介
監督:夏目真悟
出演:浅沼晋太郎、坂本真綾、吉野裕行、ほか
アニメーション制作:サイエンスSARU
配給:配給:KADOKAWA/アスミック・エース

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