「あの言葉で正解だったのか?」NHKのアナがノウハウ公開

2022.8.27 06:30

NHKアナウンサーによる防災の呼びかけを紹介した横尾泰輔アナウンサー(左)と林田理沙ナウンサー(8月26日) (C)NHK

(写真5枚)

大雨災害への防災・減災のため、報道に関わるNHKのアナウンサーらが、人々への避難行動を呼びかける文言約40種を整理し公開。同局の横尾泰輔アナウンサーと林田理沙ナウンサーが8月26日、取材会でその思いを語った。

■地域防災に貢献することは公共メディアの使命

これまでも地域の防災力を高める取り組み、公共メディアの使命として、啓発企画や出前授業、地域とのミーティング、情報提供などに取り組んできたNHK。

今回の公開に至ったのは、そういったなかで防災関係者(地域メディア、自治体、大型商業施設、学校など)から、「災害が予想される、または差し迫っている緊急時に、人々の避難行動につながる呼びかけのノウハウを教えてほしい」という声が多くあったからだという。

■「あの言葉で正解だったのか?」人を動かす言葉を探す

この再編に関わり、東日本大震災では最初の津波が到達するまでの呼びかけを担当した横尾アナウンサー。「当時、『正確に』『冷静に』がNHKの報道スタンダード。非常に緊迫していましたが『落ち着いて』と言い聞かせて放送した。しかし、落ち着いて伝える言葉には説得力はあるも、届かない部分・限界があるということをその後の被害で知った」と複雑な胸の内を話す。

「あのトーン・言葉を選んで正解だったのか? 1日も思い出さない日はない。3.11の最初の30分間が原点で、人を動かす言葉を探した。『これで良かったのか?』、これを少しでも前進させ具体化させていくというのが、命を守る呼びかけ。アナウンサーや記者、専門家、地域住民と対話を重ね、みんなで取り組んで蓄積してきた。ぜひ、多くの方にご活用いただきたい」と呼びかけた。

■「逃げてほしい!」と心の底から伝える

公開されている文言は、「あなたが率先して避難すると、周りの人の避難にもつながります」「あなたやご家族の命を守るためにお伝えします。避難や安全確保が遅れると命に関わります。避難できなくなる前に行動してください」など。

取材会では、実際によびかけの実演を林田アナウンサーがおこない、切迫している雰囲気は「『あなたに、逃げてほしい!』と心の底から伝えること。そうすることでみなさん1人ひとりに届き、命を守る行動につながる」と、ノウハウを明かした。

呼びかけのテキストデータは、NHKの公式サイトで閲覧・ダウンロード可。実際に呼びかけの文言を読み上げる見本動画も9月1日以降、同サイトで公開される予定だ。

取材・文/岡田由佳子

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