頼朝が落馬…大泉洋による奇跡のキャラに称賛と感謝の声【鎌倉殿】

2022.6.27 20:30

相模川・橋のたもとの寺にて。頼朝(大泉洋)が餅を詰まらせ、大慌てした一同 (C)NHK

(写真11枚)

三谷幸喜脚本・小栗旬主演で、鎌倉幕府二代執権・北条義時を中心に描く大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)。6月26日放送の第25回『天が望んだ男』では、日本史のミステリーのひとつである、源頼朝(大泉洋)の落馬とその死の経緯が、笑いとホラーが入り混じった絶妙な構成で描かれた(以下、ネタバレあり)。

■ 頼朝落馬、どこからともなく鈴の音が響き渡る

毎日のように自分が死んだ夢を見る頼朝は、弟の僧侶・全成(新納慎也)が上げた「赤色のもの」「昔を振りかえること」「赤子を抱くこと」などを避けたり、周囲の人間が信じられなくなるなど、すっかり精神が消耗していた。ちょうどその頃、頼朝の長男・頼家(金子大地)と、比企能員(佐藤二朗)の娘・せつ(山谷花純)との間に子どもが生まれる。

しかし頼家は、本当は三浦義村(山本耕史)の元にいる娘を妻にしたいと、義時と頼朝に告白。相手が源氏の血を引いていると知った頼朝は、その娘を正室とし、せつは側室にするようアドバイスする。それからほどなくして、義時の異母妹・あき(尾碕真花)の夫・稲毛重成(村上誠基)が、若くして亡くなったあきの供養として橋を新設したため、北条家をはじめとする身内の人々が法事に招かれた。

時連(のち時房・瀬戸康史)が部屋にほおずきを飾るも、赤いものにおびえる源頼朝(大泉洋)(C)NHK

頼朝はさまざまな禁忌を避けようとしながら、なんとか法事の場に到着。妻の政子(小池栄子)、舅の北条時政(坂東彌十郎)、その妻・りく(宮沢りえ)などと飾らない本音を語り合ううちに、「人の命は天が定めたもの。あらがってどうする。甘んじて受け入れようではないか」という心境になったことを、義時に語る。それを聞いた義時は「鎌倉殿は昔から、私にだけ大事なことを打ち明けてくださいます」と、お互いの信頼を確認しあった。

一足先に鎌倉に戻ることにした頼朝は、流人時代から彼に付き従ってきた安達盛長(野添義弘)が引く馬に乗って帰路についていたが、山中で突然激しいめまいを起こして馬から転落。そのとき政子や頼家、御家人たちは、追悼のような、あるいはこれから起こる争いのゴングのような鈴の音が、どこからともなく響き渡るのを聞く──。

■ 不安しかない、でも笑える…三谷幸喜が描いた「頼朝の死」

オープニング直後、長澤まさみのナレーションが「建久9年12月27日、頼朝に死が迫っている」と告げるという、ナレ死ならぬ「ナレ予告死」で始まった第25回。当時の記録では「落馬して、ほどなくして亡くなった」としか記されておらず、北条家の暗殺説や殺害した人々の怨霊説など、さまざまな憶測がささやかれる頼朝の死を、三谷幸喜がどう描くのか? は、本作の大きな注目ポイントだった。

そして三谷が選んだのは、サブタイトルに「笑ってはいけない鎌倉殿」と付けたくなるほど、思わず吹き出すような事態の連続のなかに、死亡フラグを立てていくという展開だった。

頼家(金子大地)の妻・せつ(山谷花純)が子の一幡を頼朝に抱かせようとするが、子どもを恐れる源頼朝(大泉洋)(C)NHK

頼朝が全成の告げた「禁忌」を、思いがけない形で次々と破ったり、トラブル続きの方違い(注:縁起の悪い方角を避けるために、わざと遠回りで目的地に向かう験担ぎ)、頼朝が餅で窒息しかけるなどの細かい笑いの連続に、SNSでも「三谷さんのいつもの玉突きコメディの真骨頂」「ギャグとしんみりを高速で反復横跳びされ続けてる」「笑いながら怯えるという、奇妙な体験を視聴者に強いる脚本」と、頼朝が死のロードを歩いているとわかっていても、笑いを禁じ得なかったというコメントがあふれた。

しかしそんな「不安しかない、でも笑える」という約40分間を経て、最後の5分で突然頼朝が落馬し、このまま予告通り死に至ることが察せられる流れになると、視聴者からは「意識障害出てるし、脳出血あたりだろうか」「鈴のような音が聞こえていたのは脳卒中かもしれない」「脳溢血か?」と、もっとも有力な死因のひとつ「なんらかの脳疾患」説に乗った声が続々と。

と同時に「繰りかえし聞こえる鈴の音という幻聴、お餅の誤嚥(ごえん)、呂律(ろれつ)が回らなくなる、言語障害、手足の麻痺による運動障害。全部、前兆症状だ・・・。脳梗塞。みんな、心当たりあったらお医者にかかろう」と、この機会に注意を促すコメントもあった。

■ 三谷&大泉コンビだからこそ生まれた、奇跡のキャラクター

二股かけた頼家を「女子好きは我が嫡男の証し」と力強く励ましたり、りくと良い感じになりかけるなど、最後の最後まで女にだらしなかった頼朝。それ以外にも、残酷かつ自分勝手が過ぎる言動は枚挙にいとまがなく、なにかあるごとに「頼朝嫌い」や「全部大泉のせい」がトレンドに上がった。

ヒール的な立ち回りでありながらも、なぜか嫌いになり切れない愛嬌もある、前代未聞の頼朝像ができたのは、ひとえに大泉洋の「なにをやっても憎めない」という、天性のチャームのおかげだろう。

小池栄子に「よくしゃべる。よく食べる。よく笑う」と評され爆笑する大泉洋(1月29日・大阪市内)
小池栄子に「よくしゃべる。よく食べる。よく笑う」と評され爆笑する大泉洋(2020年1月・大阪市内にて撮影)

三谷幸喜作・演出の舞台『子供の事情』(2017年)や『大地』(2020年)のように、三谷はしばしば大泉に、腹黒い少年や姑息な三流役者など、一歩間違えると観客の総スカンを食らうような難役をあてがう。それはおそらく「彼だったら、思い切った憎まれ役を振っても大丈夫」という、三谷の絶対の信頼があってこそだ。

独裁者ならではの冷酷さと底なしの孤独に、ユーモアと人間臭さがマーブル模様になった今回の頼朝像は、まさに三谷と大泉のコンビネーションから生まれた、奇跡のキャラクターだと言ってもいい。

SNSでも、放送終了直後から「大泉さん」がトレンドに上がり、「これ以降、頼朝公と聞いたら大泉洋殿の顔しか浮かばん。大泉洋殿しか出来ぬ素晴らしい演技」「こんなにも恐ろしく、こんなにも下衆で、こんなにも魅力的な源頼朝。大泉洋さん、お疲れ様でした」「全部大泉のせいだったのに、いざ退場となるとこんなに悲しいのも全部、大泉のせい」などの、称賛と感謝の言葉があふれていた。

と同時に、頼朝亡き後の鎌倉の今後を知る者からの「これからが地獄の本番」「新たな殺し合いの時代」という、恐ろしい予告の声も目立っていた。

ちなみに歌舞伎には『頼朝の死』という、直球のタイトルの演目がある。物語に頼朝本人は出てこず、話のなかで「女のもとに忍んでるときに間違って斬り殺されたけど、体裁が悪いから落馬ってことにした」と語られるという、ちょっと情けない役どころだ。

今回の大泉版頼朝にぴったりな最期なので、この説が採用されることを個人的には期待していたのだが・・・。これを機に、さほど遠くない時期に上演されるかもしれないので、気になる人は歌舞伎関係の情報をチェックしてみてほしい。

『鎌倉殿の13人』の放送はNHK総合で毎週日曜夜8時から、BSプレミアム・BS4Kでは夜6時からスタート。第26回『悲しむ前に』では、頼家を中心とした新体制作りが義時らによって進んでいくなか、御家人同士の権力争いで、鎌倉に不穏な空気がただよう様が描かれていく。

文/吉永美和子

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