「失敗したほうが人生おもしろい」大阪ものづくり会社の情熱

2022.6.19 10:15

「失敗の部屋」で過去の開発商品を解説する原守男専務

(写真16枚)

1933年(昭和8年)にプラスチック加工会社として創業した大阪のメーカー「旭電機化成」(本社:大阪市東成区)。防災グッズや医療機関向けの器具を製造・販売するマジメな企業と思いきや、「レモンしぼり革命」「触らず むしキャッチリー」といったユニークな商品が並ぶ独自ブランド『スマイルキッズ』も運営している。

一般の「発明家」による持ち込みアイデアを受け入れ、これまで1000個以上の商品を送り出してきたという同社の原守男専務に、商品開発の難しさや「売れる商品」の見極め方を訊いてみた。

■ 1年に30〜50点のアイデア商品を追加

──『スマイルキッズ』のカタログを拝見すると、ほかでは見かけない商品ばかりですよね。長電話や迷惑電話を切るためのボタン、1人で背中に軟膏を塗るための孫の手など・・・ジャンルも幅広いです。

やっぱり、取り扱いジャンルが狭いと「おいしいアイデア」が出てきても拾えないんですよ。これだけジャンルがあったらどこかに収められるだろう、ということで。

廃盤した商品も含めれば、1000点以上は作ってきましたね。今稼働している商品は300~400点で、1年間で30~50点の新商品を追加しています。「軟こうぬりちゃん コンパクト」など、既存商品にお客さまの声を反映しリニューアルしたものもあります。

定番商品「旅行に持っていきたい」というユーザーの声を反映した「軟こうぬりちゃん コンパクト」

──「軟こうぬりちゃん」、ネーミング含め大好きです。スマイルキッズの商品は、一般の発明家からのアイデアを元にしたものも多いんですよね。一般からのアイデアを募集し始めたのはどういう経緯があるんでしょうか。

15年ほど前、商品のアイデアを出し続けているうちに僕や他の開発陣からのアイデアが枯渇してしまったんです。アイデアって、家を建てたり子どもが生まれたり成長するたびに浮かんでいくものなんですけど、年齢を重ねてライフイベントを経験するごとにネタが無くなってきました。

昔なら車や自転車を乗ってるだけでもアイデアがわいてきたんですけど、もう自分のなかのアイデアは一通り出尽くしてしまったんですよ。「全ての力を結集しないと、世のなかの魅力溢れる製品を作る競争には勝てない」と悟り、一般からのアイデアを受け入れるようになりました。

■ 「発明」は力仕事、なかなかできないこと

──これまで多くの持ち込みアイデアを見てきた原さんですが、アイデアを採用する基準などはありますか?

やっぱり「売れるかどうか」で判断しますね。もちろん初めから売れる商品を持ち込める人なんてほとんどいませんが、「ちょっとの工夫を加えれば、売れる商品になるか」という部分を見ます。

正直、机上だけで考えたアイデアを「これどうや!」と持ち込む人は多いんですよ。口で言うだけで、市場に出回るレベルに達する商品からは遠いアイデアばかりです。頭のなかで考えた案のまま、満足している人のアイデアは大抵ダメ。

そうじゃなく、原型を作って実験を重ね、いろいろな人の意見も聞いてバージョンアップを重ねて・・・。だから、持ち込み前から何個も原型を作り、15年以上の時間をかけて開発された「レモンしぼり革命」は、珍しくすぐにGOサインが出ました。「発明」と簡単に言いますけど、1つ企画を生み出すのは力仕事。なかなかできないことですよ。

──なるほど。そこまで労力をかけてもヒットする保証があるわけではないし、難しいですね。

どこかギャンブルみたいなところがありますね。一度、3社のテレビ局が取材にきたことがあったんですけど、その際にネットショップに5000個分の在庫を入れてみたところ、放送後1時間ほどで売り切れてしまいました。

やっぱり商品って、テレビやSNSで露出が増えれば爆発的に売れますよね。例えば「にゃんと伸びる孫の手」という商品は、テレビで人気アイドルが使っている姿が放送され、売れ行きが伸びました。

それって狙ってできるものじゃなくて、突然起こることでしょ。でも、商品にインパクトを感じる要素があれば伸びる可能性はあるわけで、それなら「ネタだけでも提供しとこう」という精神でやっています。

虫を殺さずに逃がすことができる「触らず むしキャッチリー」(1000円・税別)

──先日、SNSをきっかけにヒットした「触らず むしキャッチリー」は、これまでありそうでなかった商品ですよね。やっぱりヒット商品には、そういったオリジナリティが必要なんでしょうか。

そうですね。2番煎じの商品は売れ行きが大体読めるので、ある程度の儲けは保証されます。だけど2番煎じ以降となると、機能や品質が同じなら値段は下げて売り出すしかない。確実に売れるけど、そんなに儲からないんです。僕の経験からいうと、5番煎じまではいいけど、6番煎じになるともう遅いですね。

2番煎じ以降を狙っていけば経営は安定するでしょうけど、今みたいに発明のために時間をさけなくなってしまいます。余裕が無くなり模倣品ばかりになると新しく面白い商品は生み出せないし、それは「面白くないな」と。それでいうと、スイッチ式のコンセントタップや小型シュレッダーは、ウチが日本最速で作ったと自負しています。

── 旭電機化成さん発の商品だったんですね! どちらも一般家庭や企業に浸透している定番商品です。

イチから作り上げた新しい商品は、小売店や問屋も「売れる・売れない」という見立てができませんし、何もかもわからない世界です。それだけに、売れる保証はなくても「1番」を世のなかに出していけば、個性的な商品が確立されていくはずです。

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