フレッシュであり続けた46年、ムーンライダーズに新作を訊いた
【コラム】最新作と併せて聴いてみたい、ムーンライダーズ過去作5選
お2人からインタビューの最後に挙がった2枚に加えて、インタビューのなかで言及されたものや最新作のアルバム・タイトルに引用された作品をプラス。ムーンライダーズ関連の膨大なディスコグラフィーのなかから今の入門編として5枚をピックアップしてみました。
■『カメラ=万年筆』(1980年)
ヌーヴェル・ヴァーグに多大な影響を与えた理論をタイトルに冠し、収録曲すべてが何らかの映画の題名か主題歌で統一された80年代ライダーズの幕開けを告げた作品。ダブやミュージック・コンクレートなどの手法を取り入れている一方で、XTCやモノクローム・セットなどの当時の英国のポスト・パンク~ニューウェイヴ勢からの影響を強く感じさせるアップ・テンポな曲が多いのも特徴的。
■『Animal Index』(1985年)
タイトル通りに動物という共通テーマのもとに、メンバー6人がそれぞれ2曲ずつ作曲したものを収録。翌年の濃密かつ重厚なタッチの大作『Don’t Trust Over Thirty』(1986年)よりも軽快で、80年代らしいシンセなどを多用したサウンドは、最近のシティ・ポップ再評価的な流れで聴くにも最適か。
■『最後の晩餐 ~Christ,Who’s gonna die first?』(1991年)
最新作のタイトルは、本作の冒頭に収録されたXTCのアンディ・パートリッジによるメンバー紹介の部分から取られており、それを提案したのは佐藤優介とともに現在のライダーズを好サポートするスカートこと澤部渡だった。アシッド・ハウスなどを大胆に取り入れた音は、今の耳にも新鮮に響く。
■『Dire Morons TRIBUNE』(2001年)
時期的に9・11同時多発テロの前後に制作され、ロック、カントリーなどのルーツ音楽、電子音楽などのさまざまな要素が偏執狂的なスタジオ・ワークによって濃縮された会心作。ポスト・ロック以降の録音テクノロジーを駆使しつつ、不穏な時代のムードも反映しながら、21世紀のライダーズを提示した。
■ 鈴木慶一『ヘイト船長とラヴ航海士』(2008年)
曾我部恵一をプロデューサーに迎えた「ヘイト船長3部作」の始まりとなったソロ作。両者のやり取りによって緻密な音処理が施されながらも、鈴木のフォーク・シンガー的な側面を新たな感覚で引き出した音は、インタビューでも言及されていたように歌詞の重要さを再認識させる契機ともなった。
文/吉本秀純
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