「風邪ひいてまんねん」じゃなくなった改源、紆余曲折のCM秘話

2022.6.18 07:15

印象的なイメージキャラクターの名前はそのまま「カイゲンの風神さん」

(写真6枚)

■ 若い世代の認知度を上げるため…大幅な路線変更

──そんなインパクト大な「風邪ひいてまんねん」のCMはいったん幕を下ろし、2012年にジャニーズの滝沢秀明さんを起用したCMが始まりますが、これはどういった経緯があるのでしょうか。

そのころ、関東での認知度アップを目指してピンク色のパッケージで飲みやすい錠剤タイプの「改源錠」を発売することになりました。そうなると「『風邪ひいてまんねん』ではダメだろう」ということで、滝沢さんを起用した、いわゆる「シュッとした」CMを作りました。内容も成分の特徴を詳しく説明するやさしい雰囲気を心がけました。やはり当時は、社内でも大幅な路線変更に驚いている社員が多かったようです。

https://www.youtube.com/watch?v=-9mNFhH_4U4

──そして、2018年からはSNSで大人気な猫「なごむ」くんを前面に押し出したキュートなCMがスタートしますが、こちらも風神さんのイメージとは大きく異なりますよね。

改源のメインユーザーは高齢者の方々。「家にあったからなんとなく改源を使っている」「祖父母がすすめてくれた」という家庭もありますが、やはり20~30代前半となると認知度がぐっと下がるようです。

では改源を知らない方々に、どうやって知ってもらうか。そこで、インスタグラムで23万人(2018年当時)のフォロワーを持つ猫・なごむくんに注目しました。なごむくんのファンでインスタグラムを利用している層と、改源を知らない年齢層はちょうどかぶるのでは、と考えたためです。そこで、テレビCMからウェブCMに切り替え、なごむくんのファンに刺さるようなCM作りに力を入れました。

──しかし2021年、またCMに風神さんが復活しました。これまで若年層に向けたアプローチを続けてきたわけですが、また昔ながらの風神さんが復活したのはなぜでしょう。

弊社は1924年に創業し、2024年に100周年を迎えます。その節目を迎えるにあたり、どうPRを進めようかとイメージ調査をしたところ、やはり「風神さん」のイメージが強いことがわかりました。それなら「風神さんという改源の資産を活かそう」と、原点回帰の意味合いも込めて復活させることに。

現在配信されている改源CM「備える、かぜ薬。〜コタツ編〜」

ただ、「風邪ひいてまんねん」のコテコテCMを復活させると、この数年取り組んできたコンセプトからは外れてしまいます。そこで、風神さんをかわいらしくデフォルメし、キャッチコピーも「風邪ひいてまうで」とソフトな言い方に。そもそも、改源は早めにのむことで効果を発揮する薬なので、風邪をひきそうなタイミングを知らせてくれるイメージにしました。

──なるほど。個人的には「ひいてまんねん」の風神さんも味わい深くて好きなので、少し寂しい気もします。

本音をいうと、面白さをひたすら追求した旧バージョンのCMも我々は好きなので、そこは悩みどころでもあります・・・。それに、年配の方やCMをリアルタイムで見ていた方からすると、あの力強い「風神さん」の姿は馴染み深い姿なはず。でも、改源を知らない人からすると、とっつきにくいかもしれません。CMや宣伝の打ち出し方は、今でも試行錯誤しています。

■ 商品は変える必要はない。課題は「伝え方」

──100年もの歴史を持つ企業ならではの難しい部分ですね。商品に関しては、なにか変遷はありましたか?

基本のコンセプトは変えず、創業当初から洋薬と生薬をブレンドした「ちょうどよく、ちゃんと効く風邪薬」のままです。パッケージデザインも、この50年ほど大幅に変更はしていません。はっきりとパッケージを変えてしまうと、お客さまがお店で探す際に迷子になってしまうためです。

例えば、パッケージのロゴを囲む半円の形ですが、これは「湯飲み」をイメージしています。発売当初の改源にはカフェインが入っておらず、お茶と一緒に飲むことを推奨していたためです。現在は法律の改正がありカフェインを配合しているのですが、当時の想いは残しておきたいという意味で湯飲みのイラストはそのままにしています。

粉が流れやすいよう、材質にもこだわった薬包紙。製造過程は社員教育用などで動画で見ることができる

──何気なく見ていた改源のロゴですが、そんな意味が込められていたんですね。「昔ながら」でいうと、粉薬を薬包紙で包んだ形も現代では珍しいですよね。

ユーザーのなかには「薬包紙から香る薬の匂いをかいだだけで元気になる」という方もいるほどなので、そこはこだわりを持っています。薬包紙を折る機械は年々減っていき、今では数社だけとなりました。昔から使っている機械を、3Dプリンターで部品を作ったり自分たちでメンテナンスをすることで何とか使い続けています。昔ながらの機械で折られ、そして職人さんたちの年季が入った手作業で小袋に詰められているんですよ。

昔から受け継がれてきた薬包紙だからこそ、人によってはもはや薬を超えて「お守り」のような役目を果たしているのかもしれません。

──最後に、100周年に向けて今後力を入れていきたいことはありますか?

商品自体は「100年前から愛される、完成したもの」という自負があるので、変えていく必要も無いと思います。ですが、その商品の見せ方や伝え方は、今の時代に対応しきれていないかもしれません。例えば、SNSでは広告を出しているものの、ユーザーと意見交換をしたり商品の良さを伝えたり、コミュニケーションが取れている状態とは言えないです。

薬の飲み方や効用、豆知識など、100年続いている弊社だからこそ伝えられることも多いはず。今後は20~30代の若手社員の力も借りつつ、SNSを通してどんどん改源の魅力を発信していきたいですね。

現在配信されているウェブCMは「コタツ篇」「天体観測篇」の2種類。リニューアルした「風神さん」が気になる人は、一度チェックしてみては。

※この医薬品は「使用上の注意」をよく読んでお使いください。アレルギー体質の方は、必ず薬剤師、登録販売者にご相談ください。

取材・文・写真/つちだ四郎

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本