新人監督がベテラン俳優・升毅に指導、継承されるスピリット

2021.11.2 10:45

ドキュメンタリー映画『歩きはじめる言葉たち』に出演する升毅(左)と野村展代監督(10月22日・大阪市内)

(写真5枚)

俳優・升毅が、2020年に急逝した映画監督・佐々部清氏の足跡をたどるドキュメンタリー映画『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3.11をたずねて』。関西でも公開が始まった本作について、監督の野村展代と升に話を聞いた。

日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画『半落ち』(2004年)などで知られる映画監督・佐々部清。2020年3月に次回作の制作準備のため訪れていたホテルで倒れ、突然この世を去った。

そんな佐々部監督とともに映画制作に携わるも、今回が初監督作品となった野村。「なにかすごく熱いものを追いかけるのではなく、升さんとゆったり旅をしたような作品なので『ゆるドキュメンタリー』と言われてます」と笑う。

「亡くなった映画監督(の業績)をしっかり撮ったものではないので、『ちゃんとドキュメンタリーを撮れ』とも言われたんですけど(笑)。でも升さんの行動や言葉から、大事な方を亡くしたときの喪失感について、いろんな所で共感のポイントを感じ取れるのでは。升さんと佐々部監督の友情があったから成り立った、おじさまたちの友情の物語でもあります」と、作品を振りかえった。

佐々部監督とは公私ともに関わりが深く、今も亡くなったことを完全には受け入れられていないという升。初主演映画『八重子のハミング』をはじめ、佐々部作品で幾多の役柄を演じてきたが、本作は「『役』を作ることはできませんでしたね」と率直に話す。

「完全に人間・升毅で行くしかないし、いていいんだろうなと思って、本当に自然に感じるままで(カメラの前に)いました。これを佐々部ファンに観てもらえるってことは、それだけの価値がこの作品にはあるんだと思えたので、気持ちの区切りとは言えなくても、僕のなかに何かがひとつ生まれたという気がします」と、監督を偲びながら答えた。

映画『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3.11をたずねて』のワンシーン。陸前高田市の漂流ポストを訪れる升毅
映画『歩きはじめる言葉たち 漂流ポスト3.11をたずねて』のワンシーン。陸前高田市の漂流ポストを訪れる升毅

升が初めて佐々部作品に出演したとき、監督から「もっと演技を抑えて」と指導を受けたというが、そのエピソードの再現のような出来事が、この映画でもあったそう。

野村監督は、「ナレーションを録るときに、升さんに『もう少し抑えて』と。これを1回、言ってみたかったんです(笑)」と打ち明けると、升も「思いをちゃんと伝えたいという意識が働いて、確かにちょっと盛り上がってしまいましたね。出来上がりを聞いて『いや、その通りです』と思いました」と、盟友のスピリットを再認識した様子だった。

本作は、岩手県陸前高田市にある故人宛の手紙専用ポスト「漂流ポスト3.11」の関係者と、佐々部清監督の周囲の人々の声を通じて、大切な人の死といかに向き合うかを考えるロードムービー風のドキュメンタリー。関西では現在「シネ・リーブル梅田」「京都シネマ」にて上映中、ほか全国順次公開。

取材・文/吉永美和子

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