なぜ板尾創路が演劇フェスを?「好きになったら中毒に」

2021.11.8 19:15

『関西演劇祭』でフェスティバル・ディレクターを務める板尾創路

(写真5枚)

芸人から俳優、映画監督までマルチな才能を見せる板尾創路が、純粋に「関西の演劇を盛り上げたい」とプロデュースする『関西演劇祭』。2021年度の開幕を前に、この演劇祭の狙いや期待する点などを訊いた。

取材・文/吉永美和子

主に関西小劇場界で活躍する団体から10団体が選抜され、会期中に数回上演して切磋琢磨する同演劇祭。単に作品を上演するだけでなく、賞を競い合ったり、審査員や観客と意見交換する「ティーチイン」をおこなうなど、演じる側・観る側とも、かなり刺激の多い演劇祭だ。

「関西のお芝居が盛り上がればエンタメ界が活性化」(板尾創路)

──『関西演劇祭』は今年で3回目を迎えますが、初回からフェスティバル・ディレクターを務める板尾さんは、この演劇祭の成長を実感されていますか?

参加を申し込む劇団が増えてきたし、僕たち作っている人間が「また来年もやりたいな」と思えるし、本当に年々盛り上がってる感じがしますね。ビジネスとしてすごく余裕があるわけじゃないんですけど、「3」というのは節目の数字ですし、たとえ規模が小さくなったとしても続けていきたいから、踏ん張りどころかなと思っています。

──そもそも板尾さんが、この演劇祭を立ち上げようと思った理由は何でしょう。

今テレビや映画で活躍している人って、関西の劇団出身の方が多かったりするんですけど、みなさん東京に出てきてしまって、関西で活躍している人が少ないなあと思ったんです。こういう演劇祭をすることで、関西のお芝居が盛り上がって、いい俳優さんや脚本家さんが出てきたらいいなあ、と。それって結局、自分にかえってくる・・・というわけやないですけど、エンタテインメント界全体が活性化することになると思うんです。

第1回開催を前におこなわれた会見の出席者。左から行定勲、西田シャトナー、板尾創路、よしもとアクターズ・片岡秀介社長(2019年5月・SSホール)
第1回開催を前におこなわれた会見の出席者。左から映画監督の行定勲、演出家の西田シャトナー、板尾創路、よしもとアクターズ・片岡秀介社長(2019年5月・SSホール/写真:岩本)

──審査員は行定(勲)監督やテレビ局のディレクターなど、映像関係の方も多いですが、やはり参加劇団の「この先」を見据えてのことですか?

そうですね。せっかくやったら、お芝居の仕事に直接つながる人たちに観に来ていただいて、チャンスをもらえそうな状況にした方が、やりがいが出るのでは。関西の劇団は、なかなかそういう(メディアの)人たちに、お芝居を観てもらうことがないと思いますしね。

──実際に行定監督は、演劇祭に参加していた脚本家に声をかけていたそうですしね。過去2回開催したなかで、特に印象に残ったことなどはありますか?

最初の年は、僕はティーチインなんて初めてやったんで、どうなることかと思ってたんです。もしかしたら大変かなあと思いつつ、感じるままにやってたんですけど、飽きないし楽しいし「もっと観たいなあ」と思い始めて。「このシステム、アリやな」と、すごく感じました。それにティーチインがあると、普段よりも芝居を集中して観ますよね。

──確かに「審査しないといけない」と思うと、私も普段の観劇よりもシャキッとした心持ちで舞台と向きあいます。

そうそう。ただ単に楽しみに行くときより、いい緊張感があります。それはお客さんもそうで、普通の舞台より客席が集中してますね。(上演時間)45分という尺も集中しやすいし、なかには「あとで質問しよう」と思いながら観てる人も多分いるはず。普段お客さんは、演出家に質問できる機会ってなかなかないだろうし、観る側も参加できる楽しい演劇祭になってるんじゃないかと思います。

「一度芝居が好きになったら中毒性がある」(板尾創路)

演劇祭に出演する劇団たちが「数日間でも、成長するところを見たい」と板尾創路
演劇祭に出演する劇団たちが「数日間でも、成長するところを見たい」と板尾創路

──板尾さんはもともと漫才コンビ「130R」で活躍し、90年代終わり頃から演劇の舞台に立ち始めますが、そもそも演劇のどこに面白さを感じたんでしょうか?

初めて出たのが「Piper」(注:後藤ひろひとが作・演出を務めるユニット)の舞台で、そのときは何となく言われるままにやったという記憶があります。でも稽古を毎日毎日積み重ねてひとつの芝居を作って、それをまたお客さんに何回も見せるというのが、すごく新鮮でした。僕ら(漫才)は割と、一度やったら終わりという世界なんで。

──確かに「毎日のように同じコントをする」というイメージはないですね。

だから慣れないことに疲れるはずなんですけど、その余裕もないぐらい充実感がありました。これ好きになったらたまらんなあ、中毒性があるなあと思いましたよ。演劇って、昔からずーっと歴史が絶えないじゃないですか? 人間の本能的なものに、すごく寄り添ってる感じがしたから「これは続くわ」と思いました。ブロードウェイみたいに、1回芝居を作ると2・3年は食べられるようになったら、すごく楽しいだろうなあと思います(笑)。

──そんな風に「関西の演劇、もっとこうなればいいのに」と思うことはありますか?

大阪の人間の笑いに対するどん欲さとか、楽しいことを好むところは変わる必要ないし、変わらないと思います。たださっき言ったように、東京の方に・・・特に映像は大きな仕事が多いから、みんな来ちゃうんですよね。それで(関西から)人がいなくなると、寂しくなるなあ、と。でもこういう演劇祭があると「関西でやっていこう」という人が増えるのかな? と思います。

──確かに地元に、目標になるような劇場や演劇祭がひとつあると、張り合いが出るはずです。

みんなでお祭みたいに盛り上がる演劇祭にしたいんですけど、やっぱり賞があると絶対がんばれると思うんです。それに、周りからちやほやされるというか(笑)、賞をもらって人に称賛される機会って、あんまりないと思いますし。(演劇祭の期間中に)上演は複数回あるから、ティーチインを経ることで変わる劇団もあるんですよ。数日間でも、そうやってがんばって成長するところが見られると、主催者としてはうれしいです。

実行委員長発表会見より、左から映画監督の行定勲、板尾創路、本年度の実行委員長で女優の吉岡里帆、劇作家の西田シャトナー、NHKエンタープライズの一色隆司氏
実行委員長発表会見より、左から映画監督の行定勲、板尾創路、本年度の実行委員長で女優の吉岡里帆、劇作家の西田シャトナー、NHKエンタープライズの一色隆司氏

──2020年はコロナ禍のなかで、観る方も演じる方も、特別な気持ちがあったのでは。

特に舞台に立ってる方々は、芝居をやれる幸せを噛みしめながらやってたんちゃうかなあ。その感じは、すごく伝わってきました。僕も劇場に行く機会が少なくなって、ずっと家でビデオを観たりしてたんですけど、ライブはやっぱり違うなあと。生身の人間がそこに立っているというだけで伝わるモノや、感動させられるモノがありますよね。

──そういったライブで舞台を楽しむなかで、この演劇祭の参加劇団のような、インディーズの芝居を観る喜びは、どこにあると思いますか?

大作でもないし、有名な俳優が出ているわけでもない。まだ力の小さな人たちが、それぞれの力を合わせてひとつの物語を作って、その面白さがボーン! とこっちに伝わって、感動をいただくというのが、すごくいいんです。予備知識がないから忖度(そんたく)もないし、素直に感動できるし、怒ったりもできる(笑)。それがなんか贅沢ですよね。今年のラインアップも、全然知らない劇団ばかりですけど、劇団名や宣伝写真を見るだけでワクワするところばかりで、すごく楽しみです。

──地元から選びぬかれた劇団を、お試しのように少しずつ見ることができるこのイベントは、まだ演劇を観たことがない人にも、入口としてオススメだと思います。

本当に、だまされたと思って観に来てほしいです。興味があっても決定的なきっかけが見つからないという人なら、来て損はないと思う。演劇の予備知識というか、期待みたいなものがない状態で来ると、多分プラスしかないと思うんで、ぜひこの機会に観に来てほしいです。


『関西演劇祭2021』は、11月20日から28日まで「SSホール」(大阪市中央区)にて。チケットは一般3000円、学生2000円ほか(配信チケットも予定)、10月中旬に発売予定。

参加団体:劇想からまわりえっちゃん、劇団不労社、劇団5454(ランドリー)、劇団レトルト内閣、試験管ベビー、創造Street、project真夏の太陽ガールズ、メガネニカナウ、猟奇的ピンク、笑の内閣

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