「大人のカッコよさ」を描き切る、おかえりモネの安達脚本

2021.10.17 08:15

東京編より。朝岡(西島秀俊)と高村(高岡早紀)(C)NHK

(写真4枚)

多くの映画メディアで活躍し、本サイトLmaga.jpの映画ブレーンでもある評論家・ミルクマン斉藤。NHK連続テレビ小説(朝ドラ)も好み、毎朝チェックするという斉藤氏に、これまでの『おかえりモネ』を脚本視点から振りかえってもらった。

■ 高村や菜津・・・大人たち一人一人がかっこよかった

朝ドラといえば一代記物が多いけど今作は違って、いわゆる青春群像物。そもそも、視聴率のこともあって令和を舞台にすること自体も冒険的。朝ドラといえば幼少期などを演じる子役が話題になるけど、そのシーンもまったく無かったし、最初からテーマをがっつり提示するっていう潔さがいいね。

震災や台風など、視聴者にとっても生々しさを感じかねない展開を真っ向から扱っているのにも覚悟を感じたなぁ。同じ東北を舞台にして、しかも「震災」をもひとつのテーマにしている朝ドラでいえば『あまちゃん』(2013年)があって。あの場合は「ガール・ミーツ・ガール」「シスターフッド」で収束したけど(あれも「あそこで収めるか!」と唸って号泣しましたけどね)、今作の場合は地元や幼なじみなど集団にフォーカスを当ててるんだよね。

分かりやすい「嫌なキャラクター」がいないのも珍しい。たとえば、東京編で普通は同僚の莉子(今田美桜)がライバルキャラとして潰しあったりしてもおかしくない。そうなるんじゃないかなと思いきやまったくならず、友人や共闘関係になっている。さすがに内田(清水尋也)がもう1人のキャスターとして抜擢されたときは、もっと莉子とバチバチするんじゃないかと思ってたけど・・・。そうはならず、チームで助け合ってるっていうのがこのドラマらしい。

菜津(マイコ)の言葉に耳を傾ける百音(清原果耶)と莉子(今田美桜)(C)NHK

デスク班の高村(高岡早紀)が莉子に対して、「『私みたいなのは』なんて言っちゃ駄目よ。もうそういう時代じゃない」「あなたの闘う場所は私が死守する」と啖呵を切るシーン(第84回)で際立っていたけど、大人たち一人一人がかっこいい役を演じているのも魅力。同じ回で莉子の「傷ついていないことは欠点だと思う」という言葉に、菜津(マイコ)が血相変えて怒ったシーンも大人のかっこよさだよね。

そこで、おそらく最後まで登場しないであろう住人・宇田川の心の傷にも通じて、「心の傷が癒えない・立ち直れない者もいるんだ」ということにも結びついてるという。さらに、被災者の心の傷にも繋がり、亮(永瀬廉)の父・新次(浅野忠信)の心の傷にまで行きつく・・・。あの流れは、非常に脚本の安達奈緒子さんがノリに乗っているのを感じた。

■ 脚本がノッている今、どう決着させるのか楽しみ

毎回、波乱万丈なドラマも面白いけど、今作の場合はガンガン展開が進むというよりは、全体像を見て作っていることが伝わってくる構造かな。百音が災害の被害を心配して島に帰ったらみんなで宴会してるっていう展開もなかなか。あの場面がきっかけに百音の考えに決心がつき、地元に戻るんだけど。

カキ棚の修復作業を手伝う地元の人々もしぶとく、かっこよかった (C)NHK

そんな百音からすると前向きに進みつつあるストーリーに対して、まだ後ろを見ることしかできない新次がどう関わっていくのか。ドラマのトーンからすると、きっと新次もよみがえってくれるはずと信じてるけど、もうひと波乱、ふた波乱ありそうだよなぁ。

故郷に帰ることでまた新しい仲間もできて、そこからどう展開させていくのか。そもそもが「私はどういう風に、人のために役立てるのか」が大テーマなわけだから、そこに集約していくんだろう。

一応、百音は地方の営業所員という形だから、最終章にも朝岡(西島秀俊)たちも出てくるんじゃないかな?(編集部追記:14日放送の第109回に登場しましたね!)。最終回まであと2週間ほどだけど、これだけ脚本がノッている今、菅波先生との関係含め、どう決着させるのか楽しみだね!

『おかえりモネ』の放送は10月30日まで。10月19日には情報番組『あさイチ』に、百音役の清原果耶、未知役の蒔田彩珠がゲスト出演する予定。

文・構成/つちだ四郎

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