細田守監督「美というものが現代にアップデートされたら」

2021.8.29 20:15

インタビューに応える細田守監督

(写真9枚)

「ベルの歌声にインターナショナルな説得力がないと」

──キャストもよかった。ミュージシャン・中村佳穂さんの声や曲がいいのは知ってるけど、彼女があんなに細田さん好みの声だとは知らなかった(笑)。トークされる声はあまり聞いていなかったので。しかも、彼女の音楽はジャズ系だし。

すごくジャジーで、インプロヴィゼーション(即興性)に優れていて、日本のほかの歌い手に比べても特別。ベルの歌声そのものにインターナショナルな説得力がないといけないんじゃないかと考えていて。海外での配給版は歌も吹き替えするんですが、オリジナル版で観る人が日本語の歌声を聞いても、「ああ、なんだすごくわかる」っていう説得力がある歌い手といえば、日本では中村佳穂さんだったんです。

──DVDや配信になったら選べますしね。好きな方は日本語オリジナルバージョンも絶対に見ますから。

物語の性質上、すずとベル、歌と芝居を分けるのは絶対にしたくなかった。1人のキャストでやらなきゃいけないけど、誰が出来るんだって考えて。オーディションをしたところ、中村さんの歌が素晴らしいのは知ってたんだけど、台詞を読んでもらって(上手さに)驚きましたね。

左から、すずの親友・弘香(幾田りら)と、女声合唱隊のメンバーたち(岩崎良美、中尾幸世、坂本冬美) (C)2021 スタジオ地図

──すずの親友・ヒロちゃん役の幾田りらさんもね。YOASOBIの活動からは全然想像がつかない。

中村さん同様、幾田さんもお芝居の経験がまったくないのに、とても上手い。やはり彼女たちは歌うことと演じることに共通した何かがあるんじゃないかな。今回女性の人物ってほぼそういう人ばかりで、玉城ティナさんも俳優さんだけど、歌がメチャクチャ上手いですよ。それで合唱隊も森山良子さん、清水ミチコさん、坂本冬美さん、岩崎良美さん・・・と、錚々たるメンバーで。

──しかし、びっくりしたのはなんといっても合唱隊なかに、中尾幸世さんがいることですよ。

でしょ~!!!

──何というわかりやすいキャスティングをされるんだ、細田監督はと(笑)。あの佐々木昭一郎のミューズをこっそり持ってくるなんて。

憧れの「A子」ですよ(ドラマ『四季 ユートピアノ』『川の流れはバイオリンの音』等で中尾が演じた役柄)。この話、若い人にするとポカーンってされるけど(笑)。

──でしょうね(笑)。僕らの世代にとって佐々木昭一郎作品は、映画以上に映画的なテレビドラマでしたよね。

佐々木昭一郎作品にしか出てない中尾さんって、すごい謎だったじゃないですか。事務所に所属していないので、何とかして連絡を取りましたね。当時ラジオドラマもお出になっていて、佐々木さん演出じゃないラジオドラマも素晴らしい。お会いして、やっぱり素敵な方でした。この映画を観て、中尾さんの存在感というか、声のムードで素敵だなと思ってくださる方は多いんじゃないかと思います。僕らがかつて佐々木ドラマでやられちゃったように。

映画『竜とそばかす姫』

監督:細田守
声の出演:中村佳穂、成田凌、玉城ティナ、染谷将太、幾田りら ほか
配給:東宝

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