細田守監督、仮想空間への想い「虚構の方が現実をさらけ出す」

2021.8.27 19:45

映画『竜とそばかすの姫』でメガホンを取った細田守監督

(写真8枚)

これまで『時をかける少女』『おおかみこどもの雨と雪』などを生みだし、アニメーション界の巨匠とも名高い細田守監督。その最新作『竜とそばかすの姫』では、現実世界と同時に仮想世界〈U〉を舞台にしており、細田監督が仮想世界を描くのは『サマーウォーズ』以来、約10年ぶりとなる。その想いについて、話を訊いた。

取材・文/ミルクマン斉藤

「アバターの方がどういう人かって本質が現れてくる」

──『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)、『サマーウォーズ』(2009年)と、監督は約10年ごとにデジタル世界というか仮想空間を描いています。今回もそのタッグで、他部門のいろんな才能を積極的に導入して発展している。「そばかす」では特に、ボディシェアリングという肉体とアバターを同期させる要素が入っていますよね。

この映画を作るにあたって、いろんなリサーチをしたんです。「NTTドコモ」に永田聡さんという5Gの世界統一規格をまとめた人がいるんが、今度は6Gだって言うんです。「6Gの世界はどうなるのか、細田さん、一緒にいろんな研究者に聞きに行きましょう」となって。20人ほどかな、社会学者とかサイエンティストとかお坊さんとか、いろんな人に話を聞きに行ったんですよ。

そのなかのひとりに玉城絵美さんという、今日本で1番ノーベル賞に近いと言われてるボディシェアリングの研究をしてる女性がいて。自分の身体をデバイスを通していろんな人とシェアするって技術をまさに開発中で。もっといろんなことが出来るらしいんです。

〈U〉では、イヤホンのような機械で自身の体とAs(アバター)をシェアリングする (C)2021 スタジオ地図

──もはやサイバーパンクの世界ですね。

そんなことをたくさん教えてくれましたね。これって結構SFっぽいムードのようで、もしかしたら10年後に実現しちゃうかも、っていう世界。それにもましてコロナのおかげで、これを作る前よりも急速にインターネットが世界中で大きく広まった。だから想定以上にリアルタイム感がある作品になったかな、と自分でも思いますね。

──それゆえに、仮想世界〈U〉でずっとオリジン探しの的だった竜の正体が判明するシーンでも、よりリアルさというか迫真性が増す。

ああやって今、人は出会うんだろうなぁって思える。

──ほんとにそうですもんね。まったく正体は知らないけれど、アバター同士で本質的な繋がりが築ける。

俺はやったことがないけど、マッチングアプリとかで出会ってデートする人たちって、その感覚にものすごく近い感じがするんです。

──むしろマッチングアプリみたいなものを通しての出会いのほうが、相手の本質を知ることができるんじゃないでしょうか。面と向かってだと本音ってなかなかしゃべれないし(笑)。例えば、竜という〈As(アズ)〉(本作におけるアバターの名称)からだけでも、体についたアザやその行為から案外深いところまで察することができる。むしろその人の本質をさらけ出してコミュニケーションができるという。

多分そう、だからそれが怖いですよね。ネット上のアバターの方がどういう人なのか本質が現れてくる。主人公のすずにしてもそうなんですけど、現実世界なら教室の端っこにいるような子。僕らはそれを見ても、「そういう性格の子なんだ」っていう一面しか見えない。

でも彼女の心のなかには、ひょっとしたら本人も気がついていないかもしれない本人がいるわけで。そういうものこそ、インターネットの世界によって明らかになったんじゃないかな。「インターネットは虚構、現実は本当」っていうけど、本当は虚構の方が現実をさらけ出してるんじゃないのか、って気がするくらいなんです。

──それをより露わにしちゃってるようなところがありますよね。そこが『サマーウォーズ』と違うところで。

そうですね。『サマーウォーズ』はまだそういう二面性みたいなところにさほど踏み込んでいない。

映画『竜とそばかす姫』

監督:細田守
声の出演:中村佳穂、成田凌、玉城ティナ、染谷将太、幾田りら ほか
配給:東宝

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