コロナによって変化した結末「『答えは出ない』と思った」

自らもがんを克服した過去を持つ成島出監督
コロナが広がって考え方が変わりました
──一方で、咲和子は身体が不自由になった高齢の父親の今後について苦悩します。父親は苦しみのあまり「死なせてくれ」と懇願しますが・・・。咲和子が安楽死という問題に直面する終盤は、いろんな解釈ができる内容になっています。
実は最初、罪を背負う吉永小百合を描こうと思っていました。しかし今の時代、コロナで亡くなって家族にも会えずに遺骨で帰ってくるという現実が、映画の世界を超えてしまった。そんななか、咲和子が安楽死という形で父親を殺める選択にどういう意味があるんだろうと考えました。平時であれば、吉永さんを主演にセンセーショナルな題材をやることは映画的に意味を感じる。ただコロナが広がって考え方が変わりました。
──それがあのラストにつながるわけですね。
今って、世界中の死者の数が新聞の一面に載るという異常な事態で、死が身近になった。咲和子が直面する問題は、すべての家庭で明日にでも起こるもの。そう考えたとき「答えは出ない」と思いました。あのラストは決して「逃げた」わけではない。「これしかない」というエンディングです。
──吉永さんは、咲和子の揺れ動く心情を見事に演じられました。
吉永さんとは『ふしぎな岬の物語』(2014年)でもご一緒しましたが、初号試写を観終わっていつも、自分の芝居について「だめだ、だめだ」と言うんです、「私はまだまだです」と。東京・大泉の東映撮影所には吉永さんの「一生生徒」という言葉が書いてあるんですけど、あれだけの大スターになってもまだ成長しようとしている。
人間は誰だって衰えがくるし、役者であれば芝居にもそれが表れるはず。だけど吉永さんは努力とトレーニングで衰えを補っている。吉永さんはまさに今、成長期なんです。そんな姿に咲和子が重なりました、「そういえば60代、70代で成長期を迎えている主人公を描いた日本映画はないな」って。映画のなかの吉永さんを観て、「まだいける」と思ってほしい。そして「どう死ぬか」を前向きに捉えてもらいたいです。
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