コロナによって変化した結末「『答えは出ない』と思った」

2021.5.22 08:30

自らもがんを克服した過去を持つ成島出監督

(写真5枚)

現役医師・南杏子の原作小説を映画化した『いのちの停車場』。同作は、吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、西田敏行らが演じる在宅医やスタッフのまなざしを通し、病に打ち勝つ人、そして死と向き合う人の姿を描いている。メガホンをとったのは、『孤高のメス』(2010年)、『八日目の蝉』(2011年)などで知られる成島出監督。コロナ禍の状況もまじえながら作品について語った。

取材・写真・文/田辺ユウキ

自分らしくいられるかが大切

──新型コロナの対策が後手後手にまわり、各地で医療崩壊が起き・・・という日本の現状ですが、今作はまさに医療のあり方について描いていますね。

医療現場で働く人たちには本当に感謝しかありません。また、つらい毎日を送っていらっしゃるはず。それなのに結局はワクチン接種も遅れをとっていますし、失政ですよね。大阪では重症病床使用率が100%を超えましたし(4月19日時点)、正直なところ「感染拡大から1年も経っているのに、まったく準備・対応できていないじゃないか」と思いました。日本はこれから超高齢化社会になっていく。そのことだってきちんと話されていませんし。

──成島監督は医療問題について以前から関心を持っていらっしゃったんですよね。

そうですね。『孤高のメス』では脳死肝移植を題材にしましたが、当時それは殺人罪でした。日本はそういった問題について向き合うのがいつも遅い。どう生きて、どう死ぬのか。それはケースバイケースなのに、一概にやろうとしている。少子化問題だって、やっと体外受精について「どうする?」と気づき始めた。女性にとっては不妊治療や体外受精と働き方の両立も大変なのに。社会全体として遅れています。話が少し逸れますが、コロナ禍での映画館への休業要請にしてもそう。間違った解釈をされていますし。

──映画館の休業要請については納得できる答えが出ていません。映画館は比較的、安全な場所と言われてクラスターも出していませんが、政治家の方にはそういった部分がちゃんと認知されていない気がします。

実は僕自身、この映画のキャンペーンを通して言いたかったことの一つがそれなんです。ウチの田舎のおふくろや、そのお友だちはみんな「映画館は危険だ」というイメージを持っているみたいです。でも映画館は換気のシステムもちゃんとしているし、横一列で前を向いて、黙って作品を観るもの。映画館自体は安全なんです。だから大阪でも劇場で『いのちの停車場』を観てもらいたい。僕らは、劇場に足を運んでもらわないとどうしようもないですから。

東京の救命救急の現場から故郷に戻ってきた医師・白石咲和子(吉永小百合) (C)2021「いのちの停車場」製作委員会

──先ほど「ケースバイケース」という話が出ましたが、吉永小百合さん演じる在宅医・咲和子はまさに各患者に合った治療をおこなっていきます。そしていかに気持ち良く逝けるかを考えるようになります。

そう、この映画で問うべきところはそこなんです。今までみんなそこに蓋をしてきたように感じます。昭和の戦前、戦後は黒い鞄を持ったお医者さんが家庭をまわっていましたよね。しかし1980年代あたりから、病気になったら病院に入ってそこで死を迎えるようになる。滝田さん(滝田洋二郎監督)の『病院へ行こう』(1990年)という映画がヒットしたことは、その象徴ではないでしょうか。

だけどすべての人のゴールには死があり、いかにその瞬間まで自分らしくいられるかが大切になってきた。在宅医にはそれを叶えられる可能性があると思います。

映画『いのちの停車場』

2021年5月21日(金)から公開 ※一部地域を除く(上映の状況は公式HPにて)
監督:成島出
出演:吉永小百合、松坂桃李、広瀬すず、西田敏行
配給:東映

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