佐藤江梨子、破天荒ドラマでSM嬢役「監督が責任取るって」

2021.4.16 20:15

ドラマ『惑星スミスでネイキッドランチを』でSMの女王様を熱演している佐藤江梨子

(写真7枚)

兵庫県・尼崎のSMクラブに集まるクセモノたちの姿を描いた深夜ドラマ『惑星スミスでネイキッドランチを』(サンテレビ)。同ドラマでクールなSM嬢・志穂を演じたのは、これまで映画賞を受賞するなど高い演技力が評価されてきた佐藤江梨子。

今回は5年ぶりの連続ドラマ主演となったが、カルト的な作風で知られる鬼才・島田角栄監督が率いる撮影現場はなかなか特殊だったそう。濃いキャラクターたちが多数登場し、バイオレンス、エロ、ナンセンスギャグなど何でもありな物語を繰り広げるエキセントリックな本作について、佐藤に話を訊いた。

取材・文/田辺ユウキ 写真/バンリ

「デビュー時に島田組の蜜を吸ってなくて良かった」

──放送を観ましたが、「地上波でこういう破天荒なノリのドラマを今でもまだ出来るんだ」とびっくりしました。

そうですよね。今ってコンプライアンスとかいろいろ厳しいじゃないですか。私も台本を読みながら「これで良いんですかね・・・」と心配になったけど、監督が「責任は全部、自分がとる」って言うから。それにドラマ自体は全部撮り切っちゃったから、今から何を言われても改善しようがないですし(笑)。監督が責任をとると言っているんで、大丈夫でしょう。

──セリフなどのスピード感もすさまじくて、「このノリについてこられないヤツは容赦なくふるい落す」みたいな雰囲気がたまりませんね。

私はよくSNSや掲示板などを見るんですけど、たまに「佐藤江梨子の台詞は早口すぎて聞き取れない」という感想を見るんです。実際に私は早口が得意で「早く喋ってください」と言われたら普通にできちゃう。だけど台詞ってゆっくり喋る方が観ている人も物語が入ってきますし、このドラマもそういう風に話すべきじゃないかなって思う箇所もあったんです。

そうしたら監督が「そういうのはいいんで」と。「25分しか尺がない番組ですし、バッとやってください。それで良いから。俺が責任を取るから」って。一瞬「そういう問題なのかな」と考えたけど(笑)。

尼崎の裏路地にある「グラナダ」に在籍する女王様。左からオーナーの凶子ママ(中田彩葉)、杏理(すぎもとみさき)、瞳(たしろさやか)、志穂(佐藤江梨子)

──島田角栄監督は、佐藤さんがこれまで接してこられた監督たちとはちょっとテンションが違ったんじゃないですか。

違いましたね。私はこれまで、吉田大八監督、庵野秀明監督、三池崇史監督、武正晴監督などいろんな方に主演で撮っていただきました。そのあと、よりスケールの大きな作品や大ヒット作を手がけた方もいらっしゃいます。作っている当時は一緒にいろいろ悩んだりしましたが、そのあとのみなさんの作品を観ると、私自身「あの作品でやったことは間違いじゃなかったんだ」と自信に繋がります。

お仕事をご一緒した監督がどんどん売れていくところを見ると、自分が関わった作品での経験を生かしてくださっているのかなと、うれしいんですよね。島田監督はそうやって、もっともっと大きくなっていく気配がします。

──もともと島田監督のことはご存知でしたか?

漫画家や小説家の内田春菊さんが以前、私と同じ事務所だったこともあって交流があるのですが、春菊さんが島田監督の作品に出たことがあるんです。「春菊さんが出たんだったら、おもしろい作品を撮るんだろう」と思って、出演を引き受けたんです。そして春菊さんに「島田組に参加することになりました」と伝えたら、春菊さんは少し驚いてました(笑)。で、「格式やルールを考えないでやった方が良い」とアドバイスをもらいました。その通りの現場だったけど、重圧やプレッシャーはなくて、熱量がすごかったです。

今年で40歳となる佐藤江梨子

──ツイッターでこのドラマの視聴者が「サンテレビの深夜ドラマ枠は無法地帯か」と投稿していたんですけど、まさにその通りだなって。

褒め言葉でね。ちゃんとサンテレビさんは法律を守っていますから(笑)。私が芸能界で活動を始めた頃って、「テレビ業界も景気が悪くなった」と言われ出したタイミングだったんです。それまでは番組内でゲームに勝ったら賞金が何百万円とかよくあったみたいで。衣装もズラッと並べられて「ここからここまで自由に選んで」と、ハイブランドも気前よく貸してくれたそうなんです。

──はい。

だけど私がデビューした時期から予算が厳しくなり、いろいろ変わっていった。グラビアアイドルにとっては、大磯ロングビーチで大々的に開かれていた水着大会に出演するのが定番だったけど、それもなくなっちゃいましたし。「無法地帯」というわけではなかったけど、かつてのテレビ業界は良くも悪くも豪快だったそうなんです。島田監督ってそういう時代の感覚に近いというか。

──なるほど。

逆にデビュー時、島田監督に会っていなくて良かった。島田組は「俺たちはこういうことをやりたい」と突き通す人ばかり。たとえば芝居中に誤って転んじゃって、「あ、やっちゃった」とクスッと笑ったとしますよね。監督によってはそういう想定にないことは「絶対にNG」という人も多い。

でもこのドラマの現場は、島田監督が「それ、良いね」となったらそのまま使われちゃう。そういうテンションだから、いつもお祭り騒ぎみたいでした。なんていうか、大阪芸大の学園祭みたいな(笑)。もしも若い頃、そんな島田組の蜜を吸ってしまっていたら、「何をやっても良いんだ」という感覚になったはず。今の自分とは違う感じにきっとなっていた。

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