人気上昇中・空気階段の野望「単独ライブで食っていきたい」

2021.4.10 19:45

「祇園花月」にて。空気階段(左から鈴木もぐら、水川かたまり)

(写真8枚)

『キングオブコント』決勝に2年連続出場を果たし、一度見たら忘れられない強烈キャラクターで爪痕を残したコンビ・空気階段。最近では『有吉の壁』(日本テレビ系)や『水曜日のダウンタウン』(TBS系)など人気番組にも多数出演しており、知名度も高まりつつある。

ギャンブルでの借金800万円を抱える鈴木もぐらに、岡山弁を馬鹿にされ慶應義塾大学を3カ月で中退した水川かたまりと、どちらも個性的でちょっとヤバイキャラクターで知られるが、このコンビの真髄は「単独ライブ」にあり。

静かな狂気を孕んだ独特の世界観、想像の斜め上を行く設定、1つ1つのコントが巧みに絡み合い伏線回収される見事さもあり、最後には良質の短編映画を見終わったような満足感が押し寄せる・・・。笑えるのにどこかに切なさ、悲しみ、不器用な人間の愛しさを感じさせる2人の高い演技力も素晴らしく、バラエティ番組で見る空気階段との違いに驚き、その魅力にハマる人が続出している。

今年2月の第4回単独ライブ『anna』は配信チケットの売り上げは10780枚にのぼり、5月にはDVDも発売が決定。人気芸人への階段を登りつつある2人に、単独ライブにかける思いや結成10年目を迎えての意気込みなどを訊いた。

取材・文/西村円香 写真/沖本明

「配信チケットがあんなに売れるとは予想外だった」(もぐら)

──『anna』の配信チケットの売り上げ枚数が10780枚ってすごいですね。

もぐら「できるだけ売れて欲しいという気持ちはありましたけど、1万枚いけるという気持ちはなかったので驚きました」

かたまり「生配信が終わった時点では5500枚くらいで、その見逃し配信をそこから1週間で倍くらいの人数に買っていただけて。TBSラジオの『空気階段の踊り場』という番組を担当してくれているディレクターの越崎さんが、ツイッターの宣伝アカウントまで作ってくれたりして、配信を見てくれた方がSNSを通じてほかの方に薦めてくれたのが大きかったのかも」

YouTubeの公式チャンネルで公開されている第三回単独ライブ『baby』

──空気階段の単独ライブは、ひとつひとつのコントが実は繋がっていたり、予想もつかない展開で伏線が回収されたりしますよね。初めて空気階段の単独ライブを観たという配信勢の感想を読んでいると、そこにとても驚いているコメントが多かったと思います。こういう構成になったのには、何かきっかけがあるのですか?

かたまり「かもめんたるさんの2013年の単独ライブ『メマトイとユスリカ』を見たんですけど、最後のコントが今までのコントと繋がっていくというのがあって。それがすごすぎて『自分たちもこんな単独がやりたい!』と思ったことが根底にあります」

SNSで盛り上がっていた「コインランドリー」を舞台にしたコントでのセリフについて、「本質を突かれて沈んでいくというボケをやりたくて・・・」と話すかたまり(右)

──そうだったんですね。

かたまり「あと第1回の単独ライブをするときに、後輩芸人に『空気階段がやるならどんなのを見たい?』って聞いたんですが、『コントがパッと繋がる、鮮やかなのが見てみたいですね』と言われて、なるほど・・・と思ってやってみました」

もぐら「後輩に聞いていたってこと、僕は知らなかったですね。僕のなかでは、何気ない誰かの仕草が、誰かにとっては重大な何かになるというのを入れたかったんです。たまたま単独ライブでやりたいことが、2人とも一緒だったという感じですね」

「2回も公演が延期に。だからこそ思い入れもある」(かたまり)

──空気階段の代表作でもある「浮気男が隠れたクローゼットのなかで、変なおじさんの妖精から罰を受ける」というネタは、かたまりさんが昔読んだ『ナルニア国物語』がヒントになったそうですが、『anna』のネタはどんな風に作り上げたのですか?

かたまり「今回は何かがヒントになって、パッと形になったという感じじゃなかったです。ネタ作りは順調じゃなかったけど、もぐらとは揉めたりもせず。2カ月くらい、いや、延期になった分(※2020年3月開催予定がコロナ禍で延期、8月の振替公演も中止に)を入れるともっとですね。ずっと単独のことだけを考えていたので、全部のコントに思い入れがあるし、初日が終わったときは満身創痍でした」

もぐら「90分の公演時間になる予定だったのに、前日にリハーサルをやったら3時間もあったのでセリフもだいぶ直しましたし」

3月29日に第2子が生まれた鈴木もぐら(左)。「元気に育つようにがんばらないと!」と意気込む

──そうだったんですね。ネタバレになるので詳細などはDVDで確かめていただくとして、今回も強烈なキャラクターがたくさん出てきますが、設定みたいなものは作られるのですか?

かたまり「そうですねぇ。別にそんな細かくプロフィールを作るとかはしないですけど、何となくこいつは下ネタが嫌いとか、そういう『何となく』はありますね」

──配信だとコント中の顔の表情までもしっかり見ることができました。特に、タクシーの運転手に扮するもぐらさんの演技力、ふとした目の動きなどが素晴らしく、「泣けた!」という感想もたくさん見かけました。

もぐら「そんな演技力ありましたかね?(笑)。でも、タクシーへの憧れがあるかもしれないですね。僕みたいなものが、あんまり乗れるものじゃないんで。そういう贅沢な思いを感じながらやっていました」

──憧れが軸に! かたまりさんは、もぐらさんの演技をどう思っていますか?

かたまり「やっぱり、上手いと思います」

もぐら「コントの演技と普通の芝居って、全然違うんですよね。4月からコンビ結成10年目になりますが、まだ全然、俳優さんみたいな演技はできないですよ。でもやっぱりコントってちょっとふざけてもいいから。その加減がわかってきたというのもあるかもしれないですね」

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