稲垣と二階堂の『ばるぼら』、「リアルではなく摩訶不思議に」

ばるぼら(二階堂ふみ)と出会ったことで変わっていく美倉洋介(稲垣吾郎)(C)2019『ばるぼら』製作委員会
「やっぱり漫画と比較されると怖いって言うんです」
──監督はお父さまの原作を実写で映画化されるのは初めてですよね。
アニメはやっているんですけど、実写は初めてですね。やりたくなかったわけじゃなくて、企画はいっぱいあったけど、みんな上手く進まなかったんです。
多分、その理由はやっぱり敷居を高く見られているというか、父親の原作に対してハードルが高いと思ってみんな途中で脱落しちゃうんですよ、プロデューサーとか。俳優さんもビビってしまって、やっぱり演れませんという人が昔から多くって。
『ブラック・ジャック』のアニメを昔やりましたけど、実はそれ以前に実写の企画があったんですよ。でも、俳優が決まらなかったですね。みんな嫌だって言うんですよ。
──宍戸錠さんや加山雄三さんは演りましたけどね(笑)。
うん、そこまでベテランになると別なんですけれど(笑)。みなさん演りたがるかと思ったら、その逆で。やっぱり漫画と比較されると怖いって言うんですね。あんなに有名なキャラクターだから、自分が上手くやる自信が無いって。
──それこそ今回の稲垣吾郎さんとかぴったりじゃないですか?
その頃、彼は若すぎたんですよ。今だったら良いと本当に思います。
──あ、そういえば、渡辺えりさん、びっくりしました。あまりにもムネーモシュネーの生き写しで(笑)。
吾郎さんと二人でお酒を酌み交わすシーンなんて本当に上手くて。途中から二人とも本当に酔っ払ったんじゃないかと思うくらいで、ほとんどアドリブなんですけど、お酒注いでもガバガバこぼしちゃってね。

──まさか本物の酒だったんですか?
いや、ただの水なんですけど、演技で盛り上がって。ゲタゲタ笑いながら二人で芝居やっていて面白かったですよ、なんか(笑)。どこまでが本気でどこまでが芝居なのか分からなくてね。
──最後に、原作にもあるんですけど、稲垣さん演じる美倉洋介が自分は異常性欲者だと。それも人形愛的なものですよね。今回もそれをそのままやっていらっしゃるんですけれども。
美倉本人がそういう言葉で言っちゃってるから、そういう理解のされ方しているんですけどね。どちらかというとピュアな、何かをすぐに恋愛対象として見てしまう性癖じゃないかと。
人形だから好きというのではなくて、人形が人間に見えているのは妄想が激しい人ですよね、言ってみれば。犬を見ても人間に見えてしまうのは異常性欲ではないなと。
これは手塚治虫本人がはっきり言っているんですけれども、下敷きにしているのが『ホフマン物語』で、あれもやはり人形に恋する話が出てくるんですけれども、それを現代の新宿に持ってきたらどうするかというところであんな話になっている気がしますね。
──そこの部分は要素として落とすわけにはいかない。
そうですね。印象的ですからね。これを外したらファンは黙っていないだろうなって。ここと冒頭部分は外せないところなんですよ。『ばるぼら』って冒頭の印象がすごく強いというのが何故かというと、画がなんか変わっているんですね。
リアリズムの画ではなくて、線が歪んでいたり抽象的になってるんです。冒頭から世界観がはっきりしていて、「表現主義」の世界なんですよ。異常な精神の世界なんですね。
──なるほど、『カリガリ博士』的な世界というか。
なので映画もそういう風にしようと。リアルな話ではなく、摩訶不思議な感じに。そうするとどの場面もしっくりはめ込めるんですね。リアルにするとどう考えてもおかしいですから。お客さま自身が半分幻覚を見ているような感覚になれると良いんじゃないかという気がするんです。
『ばるぼら』
2020年11月20日(金)公開
監督:手塚眞
原作:手塚治虫『ばるぼら』
撮影監督:クリストファー・ドイル
出演:稲垣吾郎、二階堂ふみ、渋川清彦、石橋静、美波、渡辺えりほか
関西の上映劇場:シネ・リーブル梅田、シネマート心斎橋、なんばパークスシネマ、京都シネマ、MOVIXあまがさき、ほか
©2019『ばるぼら』製作委員会
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