63年愛された奈良の土産店、ファンが集った最後の日

2020.11.1 09:45

閉店最後の日に集まったファンとの最後の集合写真。東京から駆けつけた矢澤さんも「家族のように出迎えてくれて必ず寄っていました。奥さんやスタッフのお人柄が伝わってくる雰囲気が良いお店」と魅力を語った

(写真12枚)

近鉄奈良駅前「ひがしむき商店街」で63年続いたお土産店「福泉堂(ふくせんどう)」(奈良市)が、10月31日に最後の営業日を迎えた。当日は、奈良はもちろん、静岡や東京など全国からファンが集結し、笑顔で最後のときを迎えた。

創業当時とはすっかり様相を変えてしまった商店街で、昔ながらの正統派のお土産店として営業。修学旅行生や観光客のニーズに応え、地元民にとっては、変わらぬ安心感を与えてくれる存在でもあった。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大による影響や、店主・横田さんと妻のミヨシさんの高齢化にともない、9月に閉店を決断していた。

観光地のお土産店という一期一会的存在にも関わらず、じわじわと熱烈なファンを獲得していた同店。インスタグラムなどのSNSの担当者れいこさんは、各フォロワーの特徴を把握し、丁寧なリプライで返答。また、リピーター来店時にはスタッフが、「お帰りなさい」と声を掛けるなどアットホームな雰囲気で、会話を楽しみに訪れる人も。

閉店が決まってから、インスタで「#それぞれの福泉堂」「#わたしたちは福泉堂派」というハッシュタグと、福泉堂のイラストを制作したのは、静岡県在住のたくみんさん夫婦。約15年間奈良に通い詰めるほど、大の奈良好きで、そのなかでも一番好きな店が「福泉堂」だという。

「好きに理由なんてない!あえて言うならば、みなさんの人柄だと思う。すっと溶け込む我が家のような感じで迎えてくれる」と理由を語る。そして、「さみしいよね、本当にね・・・。8月、9月は元気がない様子だったので、最後にお母さん(ミヨシさん)が笑っている顔を見られたから良かった」と、たくみんさん。

京都在住の北川さんは、小さい頃に同店で買った奈良土産の定番「コロコロビニール鹿」が忘れられず、今までたくさんの鹿グッズを買い集めてきたという。創業した昭和32年から店の守り神のような存在だった「鹿の角の兜」を、最後に購入し、「ショックとしか言えない・・・。楽しい思い出がいっぱいです」と語る。

初めて来店した昭和51年頃は、普通のお土産屋さんだと思っていたと語ってくれたのは、ゲンゴロウさん。れいこさんの対応に「ひとりひとりのことを覚えていて、ここまで個人的にお付き合いできる店はそうそうない」と感銘を受け、「月2~3回訪れるのが生きがい。僕にとって奈良そのもの」と、地元民が気軽に訪れやすいよう商品提案までしたという。

アヒルのKちゃん、中村さんご夫婦とミヨシさん。たくみんさんの奥さんが描いた「福泉堂」のイラストにKちゃんの写真をコラボした世界で唯一のマグカップとノートをミヨシさんとれいこさんにプレゼント

そして、思わぬファンも・・・自称・奈良の観光特別大使としてSNSで人気のアヒルのKちゃんだ。「動物の入店不可なお店が多いなか、唯一Kちゃんと入れるお店でした。お散歩がてら行くたびにやさしく迎えてくれて、本当にうれしかった」と、飼い主の中村さん。「春日大社」参道でKちゃんが卵を産んだ時、真っ先にミヨシさんに渡しに行き、喜ばれたのが一番の思い出だそう。

また、大学時代にアルバイトをしていた池内さんは東京から駆けつけ、現在のスタッフである佐藤さん、秋澤さんとともに口をそろえて、「職場に行くのが嫌だなと思ったことは一度もない。楽しい職場だった」と振りかえった。

熱いファンからそれぞれの想いがこもったプレゼントや言葉を受け取ったミヨシさんは、「みなさんのおかげで、こんなに楽しい最後を迎えられました。本当に感謝しています」と丁寧にひとりひとりと言葉を交わし、別れを惜しんだ。閉店時間の18時、みんなが笑顔で拍手を送るなか、静かにシャッターが下ろされた。

取材・文・写真/いずみゆか

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