朝ドラで描いた紺碧の空、現状打破できず悩む若者へのエール
数々の映画メディアで活躍し、本サイトLmaga.jpの映画ブレーンでもある評論家・ミルクマン斉藤。映画の枠に収まらず多方面に広く精通する彼は、NHK連続テレビ小説(朝ドラ)も注意深くチェックするという。この春スタートした『エール』について、第8週(5月18日〜22日放送)を観て思うところを訊いた。
第8週「紺碧の空」
古山家にズカズカ踏みこんできたいかつい男たちは、早稲田大学の応援部団員であった。どういうわけか裕一は、すでに新しい早稲田の応援歌を作曲することになっていて、団長の田中(三浦貴大)はじめ全員が挨拶にやってきたのだ。この遠因は佐藤久志(≒伊藤久男)の従弟が応援団の幹部だったからなのだが、これは史実でもある。
当時、大学生だけでなく民衆の人気を集めていたその頂点が『早慶戦』だった。朝ドラ『わろてんか』でも描かれたエンタツ・アチャコの名作漫才「早慶戦」が生まれたのもまさにこの時代である。
ライバル慶応義塾大学の応援歌が『若き血』(堀内敬三・作詞作曲。あの『蒲田行進曲』の作詞者でもある)になってから早稲田は連敗続きで、その悪しきジンクスを打破するためにも新しい応援歌が必要だった。
そこで文学部教授・西条八十(彼も後年、古関裕而の人生に大きく関わるが、実名で登場したところをみるとドラマには出てこないかも)の選考の下、選ばれた歌詞が『紺碧の空』なのだった。
ま、裕一(≒古関)が作曲するに至った経緯はフィクションだが、この頃まだ1曲のヒットも出せていない彼は、その応援歌さえも書けずに苦悩する。盟友の木枯(≒古賀政男)はその流行歌作家としての才能が開花して、山藤太郎(≒藤山一郎)とのコンビになる『酒は涙か溜息か』が大ヒット、続く『丘を越えて』をまさに録音中だ。
ここで初登場となる山藤も、後の裕一にとって欠くべからざる人物になるはず。演じるはまたしてもミュージカル界のスター・柿澤勇人である。
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