接近ライブで楽しませるミュージシャン、直面する難しさ

2020.6.12 20:15

「俺たちの居場所を潰さないで。予防に徹して明日につなげよう」と訴えたクリトリック・リスのスギム(6日・京橋FLOOR色s)

(写真2枚)

大阪府独自の新型コロナウイルスの感染防止指針が発表され、音楽イベントも、ガイドラインに沿う形で実施ムードが高まっている。数万人がつめかけるドーム公演のほか、数十人で定員となるようなライブハウスはこのシステムで続けられるのか──。

いろんな規模で活動するミュージシャンも多く、それぞれの試行錯誤が続く。そんななか、「こういう状況が続くのか不安」と語るのが、全国的に熱烈な支持をあつめるミュージシャン、クリトリック・リスだ。

以前ロックバンド・King Gnuの井口理がラジオで『バンドマンの女』を熱唱したことでも話題となった、大阪出身の50歳・スギムによるソロユニット。

彼のライブは観客とのイジり、イジられのやりとりが特徴で、客席からその容姿についてヤジがとぶのはお決まりのこと。彼自身も歌いながらステージを降りて客に絡みにいく。身も心も「ほぼゼロ距離」な接近ライブで楽しませてきた。

そういったスタイルについて、「今後は自分の判断だけに任せず、世のなかの風潮を見極めたい」と話す。新型コロナ感染拡大が騒がれはじめたなか、3月半ばまで対面でライブを続けていたが、「あの時期もステージから降りず、また客席とは1〜2mは離れることを意識してやっていました。ただ、すごく大変だった」と振りかえる。

ライブの自粛期間は、配信ライブにも取り組んだ。「通常のライブでは『今日1番デカい音を出してください』と言えばPAさんがこたえてくれる。あと、お客さんと一緒にライブを作り上げることができる。でも配信ライブでは、そういった方法は通用しない。音楽のパフォーマンスとして純粋に認められるものをやるにはどうするか、考えるきっかけなった」という。

6月1日に49名限定でおこなわれた、セックスマシーンの緊急ワンマンライブ『すぐにライブやっとんねん!』

6月1日には大阪市内で、彼もよく共演するロックバンド、セックスマシーン!!が予防策を施してライブを実施。各ニュースでは、ステージと客席の間に透明のシートが張られ、マスクをした観客が着席して演奏を見ている場面が紹介された。見慣れたライブハウスの光景とは大きく違ったことから、さまざまな意見があがった。

クリトリック・リスは、同ライブについて「みんなどんな形であっても、いろいろ実験をしながらライブをやっている。重要なのは、結果的に感染者を発生させないこと。どういう状況でそれが起こるか分からないからこそ、僕もできる限り予防してライブをやりたい」と理解を示した。

一方で、「ライブハウスは非日常の場所で、誰もが気持ちを解放できる空間。ルールに縛られすぎて営業するのは本来のライブハウスの姿ではない。いつも通りのライブができるようになってほしい」と願った。

クリトリック・リスは6日、ダイニングバー「FLOOR色s」(大阪市城東区)の屋上で久しぶりに対面でのライブを実施。ライブ再開を待ち望んだ40人の客が来場し、彼のパフォーマンスを涙ながらに楽しんだ。

11月には大阪城音楽堂で主催の野外フェス『栗フェス2020』を開催予定。「コロナで多くの人が我慢をしているから、楽しいことを提案したい」と、今後も彼なりの模索は続いていく。

取材・文/田辺ユウキ

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