行定監督「山﨑賢人のキャリアからは想像できない役柄」

2020.6.28 17:15

「映画監督がオリジナルでこういった作品をやろうと思ったら、制作費の0が1個減ってしまって、インディペンデントになってしまう可能性がある」と語った行定監督

(写真5枚)

「物語の本質の悲しさが、二人のおかげで出せた」

──若い男女のラブ・ストーリーにもかかわらず、ベッドシーンのようないわゆる『濡れ場』がないのも、ラストの仕掛けのためだったのでしょうか?

そう考えてもらってもいいのですが、僕はあれは主人公の男の、ある種の基準の反映だと思っています。物語の途中で、彼がほかの女と浮気していそうなシーンがあるじゃないですか。彼はあのようにほかの女にはいくらでも手を出せるんです。

ところが、主人公の女性にはできない。もちろん、二人は若くて一緒に住んでいるのだから、身体の交わりも普通にあるでしょう。でも、彼は彼女を大切に思っているからこそ、性行為に拠らない、依存していないところがあるんです。

性行為を含めて、敬意を抱くと容易にはできないことってあると思うんです。彼女もそんな彼を理解して、どこかで許している。ところが、彼にするとそこで許されてしまうことがなんとなく嫌で、自分にも彼女にも腹立たしくなってしまう。純粋に思い合うがゆえの行き違いというか。まあ、男がダメなんですけどね(笑)。

──そんな二人を山﨑賢人、松岡茉優という魅力的なキャストが演じています。お二人は、どちらが先にキャスティングされたのですか?

山﨑ですね。山﨑がやってくれた役は原作では関西弁で書かれているんです。なので脚本も初めは関西弁で書いたのですが、細かいニュアンスが難しいので、原作者の又吉さんに標準語にしていいかってお尋ねしたんです。そしたらいいと言ってもらえて。

ただ、地方出身者というのは変えないでほしいということで。それで脚本を標準語にしたら一気に配役の可能性が広がって。そんなとき山﨑賢人はどうかって話が来て、それは面白いなと。なにしろこれまでの彼のキャリアからは想像できない役柄で、それも山﨑賢人に『汚し』をかけるわけですから、そんな山﨑を見てみたいとなったんです。

「人生ですべてを勝ち得れるわけではない、観客にとって選択を考えるきっかけに」という思いを込めた行定監督
「人生ですべてを勝ち得れるわけではない、観客にとって選択を考えるきっかけに」という思いを込めた行定監督

──ご本人もやり甲斐があったでしょうね。

本人がぜひやりたいって言ってくれたんです。それでヒゲは生やせますかって訊いたら、そこから伸ばすようにもしてくれて。彼はよくやってくれました。役柄の嫌味な感じも出せたし。ただ、彼はやっぱり色っぽいですよね。人を惹きつけるものがあります。

──山﨑さんが決まり、松岡さんにオファーされたのですね。

松岡は『万引き家族』の公開直後でした。松岡はニュートラルで賢いですよね。彼女がヒロインを演じてくれたら、山﨑とのコンビで、これまでにない感じになるなと思いました。

彼女はほんとに役を読み込んできていて、役柄にわざと「あざとさ」を付けるんです。僕はそれを全部取るんじゃなくて、内容に合わせて残すようにしました。その結果、映画のなかのふたりの関係性に沿って、前半は少しあざとさのあった女性が、後半は本音を語るようになる。

つまり、本人は変わりたくないのに、年齢や環境によって変わらざるをえなくなる。一方、男はずっと変わらない。この物語の本質の悲しさが、二人のおかげで出せたと思っています。

──最後に関西フォークのファンとして訊いておきたいのが、劇中で使われているフォークデュオ、ザ・ディランⅡの『君住む街』のことです。すごく良かったのですが、あの選曲は?

あれは原作に書いてあるんですよ。だから、又吉さんの『推し』です(笑)。物語にもぴったりで最高でしたね。

※こちらは2020年2月におこなわれたインタビューです。

『劇場』

2020年7月17日(金)公開・配信
監督:行定勲
原作:又吉直樹「劇場」(新潮文庫)
脚本:蓬莱竜太
出演:山﨑賢人、松岡茉優ほか
音楽:曽我部恵一

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