映画界に広がるリモート作品、その裏側とは?

2020.5.19 21:00

松本大樹監督『はるかのとびら』。分割画面がリモート映画の特徴のひとつ

(写真3枚)

新型コロナウイルス感染拡大の状況下、映画制作者たちのあいだで広がった大きな動きのひとつが「リモート映画」だ。

「リモート映画」とは監督、出演者たちが直接顔を合わせず、遠隔操作で映画を制作・完成させていくというもの。作り方はさまざまだが、その多くは、出演者が各自室などで撮影した映像素材を作り手が集約。編集、整音など調整作業を経て仕上げていく。いずれの映画も、Zoomといったオンラインでのビデオ通話アプリを想起させる分割画面が特徴だ。

行定勲監督は、出演者に有村架純、中井貴一、二階堂ふみら人気俳優を迎えてこれまで2本を発表。上田慎一郎監督も自身の代表作『カメラを止めるな!』のキャストを中心にリモート大作戦バージョンを作りあげた。異色なところでは、神戸の映画館「元町映画館」のスタッフも関西在住の俳優を集めて『アワータイム』を制作している。

昨年、ミニシアターを中心にヒットした『みぽりん』の松本大樹監督も、短編映画『はるかのとびら』をリモートで制作、YouTubeで無料公開した。同作は、企画から完成までにかかった日数がわずか5日。ビデオ通話アプリを使って撮影を進めていったが、松本監督は「アプリを使ったことがない役者さんが操作に苦戦したり、通信環境の問題で画面がフリーズしたり、撮影が中断することもありました」とリモートならではのトラブルがあったと話す。

一方で、「リモートでの映画作りはローケーション、撮影方法、照明、録音は基本的に出演者任せになります。だからこそ、こちらは役者の芝居演出に集中することができました。映画はやはり芝居が一番大事で、監督がしなければいけないことは演出であると強く再認識しました」と気づきがあったそうだ。

現在、多くの映画現場は新型コロナウイルスの影響で撮影がストップしており、第2波の感染拡大の恐れもあることから容易には動きだせないのが現状だ。ただ、企業CMなども手がけている松本監督は、「撮影の再開時期について具体的な話ができるようにはなってきた」と映像業界として兆しが見えてきたという。

それでも、現場の声として「あくまで個人的な感触ですが、最低でも8月いっぱいまでは、報道関係をのぞいて、映像制作の現場は大きな回復が見こめない気がします。仕事として上向いていくのは秋以降ではないでしょうか。だから今は、企業案件もできるだけCGやリモートで対応できる制作を模索しはじめています」と最善策を思案中。

リモート映画は確かにこれまでにはない新しいおもしろさがある。しかし映画ファンとしてはやはり、スタッフや出演者が実際に集まって映画作りに励む光景が戻ってほしいと願うばかりだ。

取材・文/田辺ユウキ

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