考古学的な再現度に驚き、エール主人公が作曲のオリジナル曲

2020.4.29 07:00

第12回より、オリジナル曲の作曲に勤しむ裕一(窪田正孝)(C)NHK

(写真14枚)

「オリジナル曲はなかなかの考古学的再現度」

当時の学生音楽界はハーモニカが大流行。裕一も地元の「福島ハーモニカ倶楽部」に誘われることになる。

そこには小学校時代にさんざ苛められた2人組の、「デブじゃないほう」の楠田くん(かつて山下敦弘の『リンダリンダリンダ』や『天然コケッコー』に出ていた俳優・大津尋葵)がバス・パートで在籍していたが、昔のことなどなかったようにマトモになっている。

ハーモニカ倶楽部で演奏する裕一(窪田正孝)たち(C)NHK
第11回より、ハーモニカ倶楽部で演奏する裕一(窪田正孝)たち。裕一の前でバス・パートを演奏するのが楠田(大津尋葵)(C)NHK

ちなみに大正~昭和初期の学生アマチュア音楽層を支えたのはハーモニカ部とマンドリン部。いっぽうのマンドリン界から現れた歌謡界の至宝が『影を慕いて』の古賀政男であるから、やがて裕而≒裕一との関わりも描かれるのだろうと推測できるのだ。

それはともかく、勢いに任せて月曜の第11話、週明けのたった1話のうちに裕一は定期コンサートのための書き下ろし曲を命じられることになるが、東京の音楽学校出の舘林会長(演出家・蜷川幸雄門下の俳優・川口覚)に「ちゃんとした理論も学んでないのに本気で音楽家になるつもりだったのか? 身のほどを知ることも大切だよ」と上から目線で一笑に伏されて俄然奮起。

公演曲を選ぶための投票をおこなう倶楽部のメンバーと裕一(窪田正孝)(C)NHK
第12回より、公演曲を選ぶための投票をおこなう倶楽部のメンバーと裕一(窪田正孝)(C)NHK

しかし翌日、火曜の第12話で裕一の父(唐沢寿明)は京都のペテン師(田口浩正)に騙されて大金を失い、仕方なく母方の実業家・権藤家を頼らざるを得なくなり、代価として裕一は権藤家の養子に・・・というまさに怒涛すぎる展開に!

伯父の権藤茂兵衛(風間杜夫)はどこまでもプラグマティック(実用主義)な性格であるから、あちらの家に行けば音楽への道は閉ざされるに等しく、裕一は退部を決心したうえでハーモニカ倶楽部のコンサートに臨む。

舘林会長にも才能を認められ、自作『想ひ出の徑(みち)』を指揮する息子の姿に、観客席で号泣する父・・・というドラマティックな展開なんだけれど、僕としては正直それより気になるのが窪田くんの指揮姿。よく映像作品では「こんなん演奏できるかい!」ってほど下手クソな指揮演技を見せられることがあるが、窪田指揮はまず大丈夫。

指揮をとる裕一(窪田正孝)(C)NHK
第13回より、指揮をとる裕一(窪田正孝)(C)NHK

さらにドラマで音楽を担当する作曲家・瀬川英史のオリジナルであろう『想ひ出の徑』が、メロディはまったく古関裕而っぽいものの、当時彼が心酔していたフランス音楽ふうの特異な転調と和声が不意に噴出する、まさに若書きの「才気走った」感じがする作品で、なかなかの考古学的再現度なのだ。

福田雄一作品の座付き作曲家というイメージのある瀬川だが、福田作品のなかでも『アオイホノオ』で聴かせたマニアックな時代再現感覚が今後も発揮されるのでは、と期待させる。

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