パンクが世界を変えた瞬間、今こそ観るべき映画『白い暴動』
70年代の英国のパンクシーンの多面性に注目
映画のストーリーとしては、そこからRARがイギリス国内各地に支部を設立して草の根的な運動を拡大し、1978年4月30日にアンチ・ナチ・リーグ(反ナチ同盟)とともに10万人を動員した大規模なデモ行進と野外コンサートを実現させるところでクライマックスを迎えるが、最も興味深いのはそこに至るまでに盛り込まれたエピソードの数々を通して描かれるパンク・シーンの多面性だろう。
例えば、NFもRARに対抗してパンクを扱った雑誌を発行し、右翼的なスキンヘッズたちはそちら側のパンク・バンドを支持していたし、パンクの最も象徴的な存在だったセックス・ピストルズに関しては、この映画の中ではメンバーの故シド・ヴィシャスが鉤十字のTシャツを着ていたことを指摘されるのみでの登場となっている。
また、NF支持者やスキンヘッズのファンが多かったシャム69はスタンス的には中立の立場を取っていたが、最終的にはRARからの野外コンサートへの出演オファー受けて合流し、ボーカルのジミー・パーシーがクラッシュと一緒に『白い暴動』を歌うシーンはパンク史上に残る歴史的瞬間。シャム69が、この直後にパンクス間の抗争を憂いて団結を促した『イフ・ザ・キッズ・アー・ユナイテッド』をシングル・リリースしたことの意味も改めてよくわかる。
さらに同年には、トム・ロビンソン・バンドが初のアルバム『パワー・イン・ザ・ダークネス』を発表し、スティール・パルスもレイシズムを糾弾するメッセージと鋭利なグルーヴに満ちたデビュー作『平等の権利』をリリース。翌年には、黒人と白人のメンバーが同居したザ・セレクターやスペシャルズらによる2トーン・スカ・ムーヴメントが熱狂的な支持を集めて新たな時代へと突入していく。
そうした社会的背景、極右と左派の闘争の間で揺れ動きながら発展を遂げたのが70年代の英国のパンク・ムーヴメントであって、国内に蔓延する「憎悪」に対して暴力ではなく音楽やアートで果敢に対抗したRARの活動が示す理念や姿勢は、2020年にも「ただの昔話」ではないはずだ。
映画『白い暴動』
出演:レッド・ソーンダズ、ロジャー・ハドル、ケイト・ウェブ、ザ・クラッシュ、トム・ロビンソン、シャム 69、スティール・パルス
監督:ルビカ・シャー『Let‘s Dance: Bowie Down Under』※短編
配給:ツイン
関連記事
あなたにオススメ
コラボPR
-
ホテルで贅沢に…大阪アフタヌーンティー2024年最新版
2024.4.22 14:00 -
ホテルで甘いものを満喫、関西スイーツブッフェ・リスト
2024.4.22 14:00 -
京都のホテルで楽しむ、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.4.17 14:00 -
新しくなった西宮ガーデンズで新店巡り[PR]
2024.4.12 11:00 -
淡路島の観光&おでかけ&グルメスポット、2024年最新版
2024.4.4 12:00 -
鉄道系YouTuber西園寺、フリーきっぷで高知旅[PR]
2024.3.29 13:00 -
さらに便利に!子ども連れに人気のガーデンズ[PR]
2024.3.29 07:00 -
華やかスイーツ!大阪のいちごブッフェまとめ・2024年版
2024.3.26 13:00 -
「これハマる」女子が喜ぶスポーツ観戦とは?[PR]
2024.3.26 12:00 -
高知の観光&おでかけ&グルメ情報、2024年最新版[PR]
2024.3.23 09:00 -
華やかスイーツ!神戸のいちごブッフェまとめ・2024年版
2024.3.19 14:00 -
華やかスイーツ!京都のいちごブッフェまとめ・2024年版
2024.3.19 13:00 -
かわいい「クッキー缶」が人気【大阪・京都・兵庫のホテル編】
2024.3.19 13:00 -
幹事さん必見!歓送迎会ができる「大バコ」特集【神戸】
2024.3.15 12:00 -
幹事さん必見!歓送迎会ができる「大バコ」特集【大阪】
2024.3.14 12:00 -
滋賀のホテルで優雅に、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.3.4 12:00 -
奈良のホテルで贅沢に、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.2.28 11:00 -
神戸のホテルで贅沢に、アフタヌーンティー2024年最新版
2024.2.27 14:00 -
【カメリア・マキの魔女占い】2024年上半期の運勢は?
2024.1.1 00:00 -
【大阪編】今買いたい、手土産まとめ
2023.11.20 15:00