SNSで話題の蘇、発祥の地・奈良で作り方と食べ方を訊いた

2020.3.16 12:00

古代にちなんだ飲食メニューが人気で、奈良好き・古代好きが集まるカフェバー「ことのまあかり」より。須恵器に入った蘇・鴨・栗のセット(どれも古代から食される) 提供:ことのまあかり

(写真5枚)

新型コロナウイルスの感染拡大防止による小中学校の一斉休校に伴い、給食用の牛乳が余るのではと懸念する声が多数。牛乳を活用して酪農家を応援しようという動きが話題に上がるなか、ツイッターを中心に乳製品「蘇」が注目を集めている。

3月に入って以降、酪農関係の全国機関「中央酪農会議」や「農林水産省」から牛乳消費を促す動きが見られるなか、SNSで広まってきた「#蘇」や「#蘇チャレンジ」などのハッシュタグ。

「蘇」とは、乳をゆっくり煮詰めて作る古代の乳製品で、奈良の平城宮跡から出土した荷札の木簡に「生蘇」の記載があることから、約1300年前に作られていたことが分かっている。

その製法は謎だが、牛乳を消費することに加えて疫病の流行った奈良時代と重ね合わせ、独自の方法で蘇を作る人が続出。突然注目を集めた蘇だが、奈良県は「蘇」発祥の地と言われ、現在でも名産品のひとつとして県内で販売されている。

開店当初から蘇を提供する奈良市内のカフェBAR「ことのまあかり」の店主・生駒あさみさんは、「蘇は古代のチーズと表現されることがありますが、実は詳しい製法が分かっていません。チーズのように発酵していないので、分かっていることは『乳を煮詰めたもの』ということだけ」と説明する。

気になる味は、「ほんのり甘みがありますが、お菓子やお酒のあてとしてではなく、古代の貴族たちは薬として食したと考える説もあります。古代人も食べていたかもしれない味、歴史にまつわる食べ物」と言い、生駒さんはそこに魅力を感じているという。

繁忙期を除き、蘇を店内で手作りしているという生駒さん。同店の作り方を訊ねると、「500mlの牛乳を弱火で約30分煮詰めるだけ。煮詰める時間が長ければ牛乳の甘みを感じやすくなります」と、自宅でも気軽に手作りできると話した。

「珍味」と表現されることからも分かるように好き嫌いが分かれる蘇。おいしい食べ方として、「藤原道長が食べたという、蘇にハチミツを練りこんだ『蘇蜜』というものがあります。ハチミツを上からかけるだけでもおいしいですよ」と紹介した。

ほかにも、ミニマリストが奈良時代へタイムスリップするコメディ漫画『あをによし、それもよし』(作・石川ローズ/集英社)で提案されている「オリーブオイルと藻塩をかける蘇」も推薦。同店が以前おこなったコラボ企画で提供したところ、奈良好きや古代好きから好評で、お酒がすすむ味になるという。

また、奈良県には蘇以外にも牛乳を多用する郷土食「飛鳥鍋」もある。古代にルーツを持つ(諸説あり)とされる、牛乳と鶏肉を使用した鍋で、奈良では給食でも登場する。同店では、3月末まで(例年冬季限定)メニューに加わり、蘇と一緒に味わうことが可能だ。

どちらも休校中の子どもと一緒に家庭で簡単に調理できる牛乳料理。今回のブームに生駒さんは、「蘇をおもしろいなと思ってもらって、古代の食べ物や奈良に興味を持ってもらえれば」と話した。

取材・文/いずみゆか

「奈良の雑貨とカフェBAR ことのまあかり」

住所: 奈良県奈良市小西町2・2F
電話:0742-24-9075
営業:不定(公式サイトで要確認)

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