白石和彌監督「俳優・香取慎吾を再確認」

2018年、役所広司、松坂桃李主演の『孤狼の血』で映画賞を総なめ。その後も、精力的に話題作、注目作を発表し続ける、間違いなく今日本で一番忙しく、そして常に新作が待望される映画監督・白石和彌。そんな彼が、6月28日公開の最新作でタッグを組んだのは、スーパースター・香取慎吾だった。そのキャスティングも含めて、映画『凪待ち』について白石監督に話を訊いた。
取材/春岡勇二 写真/Ayami
「技術もあるし、なにより感性が鋭い」(白石監督)
──白石監督と香取慎吾さん、映画ファンにとっては意外な、そして、とても興味深い顔合わせです。しかも香取さんがやさぐれたダメ男を演じるというのも気になります。そもそもこの企画はどういった形で起こったのですか?
これまで阪本順治監督と組んで、多くの作品を作ってこられた椎井友紀子プロデューサーからいただいたお話だったんです。うまく口説かれたんですよ、椎井さんに。
──というと?
まず始めに、そろそろプロデューサー業を引退しようと考えている、とおっしゃるんです。でも、そうなると、ひとつ心残りがある、それは2012年に亡くなった若松孝二監督の作品を作ることができなかったことだ、と。そこで、「若松プロ」の最後の一員であり、若松監督の残り香をもつ白石監督と映画を作りたい、そう言われたんです。これを断れますか(笑)。
──たしかに(笑)。
さらに、主演にはあの香取慎吾さんを考えていると。香取さんと椎井さんは、阪本監督の『座頭市 THE LAST』(2010年)や『人類資金』(2013年)ですでに仕事をされていて、信頼関係を築いておられたので。

──白石監督も、俳優・香取慎吾には魅力を感じておられた?
もちろんです。いつかお仕事できたらいいなと思っていました。だから、椎井さんには、ぜひお願いします、と答えました。
──映画『凪待ち』は、宮城県石巻市を舞台に、ギャンブルにはまって無為な日々を過ごしていた男が、なんとか生き直そうとするが、そこに数々の事件が起こり・・・という筋立てで、人間の喪失と再生が描かれます。この物語の構想は以前からあったのですか?
ありました。喪失と再生というテーマは以前からやってみたかったのですが、挑む機会がなくて。というのも、これまでは自分に求められるものが「加害者」側の物語ばかりで。今回初めて「被害者」側に立つ人間の物語で、そうなると「やりっ放し」や「堕ちっ放し」ではなく、再生までちゃんと描くことができるなと、そんな気持ちでした。また、東北が舞台だったというのも大きかったですね。もちろん、震災からの復興と、主人公の再生を重ねたいという思いもありました。
──しかし、その主人公はギャンブルにはまっていて、かなりやさぐれた感じの男です。これを香取さんに演じてもらうというのは冒険だったのではないですか?
いや、逆に面白いと思いました。俳優・香取慎吾のこれまで観たことのない一面が観られるに違いないと。そして、それもきっと魅力的だろうと。その考えが間違っていなかったことは、映画を観ればわかってもらえると思います。
──香取さんとは、出演までにどのように話を進められたのですか?
シナリオができた段階で読んでもらったら、「会いたい」と連絡が来て、「どうしてこの男を自分に演じさせたいのですか?」と訊かれたので、考えていたことを説明しました。そうしたら、ある意味、役柄を新鮮に思われたのではないですか。「わかりました、やります」と言ってもらえました。
──監督から香取さんに、主人公を演じるにあたっての要望はありましたか?
それは、ひとつだけでした。映画は神奈川・川崎市で始まって、すぐに石巻市に舞台が変わるのですが、香取さんには、川崎でも石巻でも本当にそこにいるような人物になってほしいとだけ伝えました。その結果も観てもらったら分かるのですが、ともかく香取さんの演技者としてのスキルの高さに驚きました。アイドル・オーラをかき消すのはもちろんのこと、技術もあるし、なにより感性が鋭い。意識しなくても、きっと普段から周囲の人間を観察し続けているのでしょうね。
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