新聞紙を文字ごと写す、超絶リアル作品

2019.5.5 06:00

《新聞と自画像 2009.1.22 ジャパンタイムズ》2009年 鉛筆・色鉛筆・水性ペン・墨・水彩/紙

(写真3枚)

写真や新聞を細密に描いた鉛筆画などで知られる吉村芳生。彼の画業を展観する展覧会が「美術館「えき」KYOTO」(京都市下京区)で5月11日からおこなわれる。

吉村は1950年山口県出身。広告代理店のデザイナーとして勤務した後、1970年代後半に美術家としてデビューした。その後、国内外の美術賞で受賞を重ね、中国地方を中心に活躍するが、地元以外では知る人ぞ知る存在だった。彼の名が全国に轟いたのは2007年。東京の「森美術館」でおこなわれた「六本木クロッシング2007」に出品した作品が大きな話題となり、57歳にして突如現代アートシーンの寵児となったのだ。6年後の2013年、惜しまれつつ早逝したが、その後も作品の評価は揺るがず、待望の回顧展が国内各地の美術館を巡回している。

《無数の輝く生命に捧ぐ》(部分) 2011-13年 色鉛筆/紙

本展では、初期のモノトーンの作品群、色鮮やかな花を描いた後期の作品群、生涯を通じて描き続けた自画像の3部構成で吉村の画業に迫る。1年間毎日描き続けた自画像、一文字一文字をすべて書き写した新聞紙、横幅10メートルを超える色鉛筆画など、彼の作品は超絶リアル。しかし、単なるリアルにとどまらず、ある種の執念というか、作家の生き様にまで昇華しているのが、人々の共感を呼ぶ理由だろう。ひとたび作品を生で見たら、もうその魅力から逃れることはできない。期間は6月2日まで、料金は一般900円。

文/小吹隆文(美術ライター)

『吉村芳生 超絶技巧を超えて』

期間:2019年5月11日(土)~6月2日(日)※会期中無休 
時間:10:00~20:00 ※入館は19:30まで、百貨店の営業時間に準じる
会場:美術館「えき」KYOTO(京都市下京区烏丸通塩小路下ル東塩小路町 ジェイアール京都伊勢丹7F)
料金:一般900円、大高生700円、中小生500円
電話:075-352-1111(大代表)

  • LINE
  • お気に入り

関連記事関連記事

あなたにオススメあなたにオススメ

コラボPR

合わせて読みたい合わせて読みたい

関連記事関連記事

コラム

ピックアップ

エルマガジン社の本