土屋太鳳「女優として試されるだろうな」

土屋太鳳、芳根京子の朝ドラヒロインがW主演をつとめる映画『累−かさね−』(9月7日公開)。原作は松浦だるまの同名コミックで、キスすると相手の顔と入れ替わるという、母が遺した不思議な口紅を使って、それぞれの欲望を叶えようとする醜い「累」と美しい「ニナ」が主人公だ。美醜に翻弄される2人の女の憎悪と悲哀を描いたサスペンスとなっている。劇中で2役を演じた土屋太鳳に話を訊いた。
取材・文/ミルクマン斉藤 写真/Ayami
「自分としては必死に演るしかない」(土屋太鳳)
──僕が最初に強く太鳳さんを意識したのは、テレビドラマ『鈴木先生』(2011年)だったのですが、どこか周囲と相容れなかったり、心に傷があったり、そういう陰のある女の子の内面的表現が抜群に巧い女優さんだなあ、というので印象に残っていて。
ありがとうございます。私もこの感覚、懐かしいなぁと感じていて。今回の取材では、「こんな役は初めてだと思うのですが、いかがですか?」と聞かれて、「いや、前はこういう役の方が結構多かったです」という話になることが多くて。
──朝ドラ『まれ』以降は、いかにも青春学園モノのヒロイン役が多かったですものね。
そうですね。でも、明るい女の子の役でも絶対にどこか暗い陰があると思うんです。ただバックボーンを見せてないだけで、そのなかで必死に生きているという、そういうのはずっと意識していましたけど・・・。今回は分かりやすく、闇をバーンとぶつけることが出来ました。押しつぶされそうになりましたが(笑)、逆にすごく素直になれたというか、とても愛おしく思いました。

──「美と醜」がこの作品のひとつのテーマではあるのですけど、ただそれだけではなく、女優というものが持つ「業」のようなものが内包されていると思いましたが。
女優として試されることになるだろうなと思いながら、この作品に入りました。累がニナと入れ替わったら、演技もより繊細になると思うんです。なので(それを両方自分が演じ分けなければならないのは)、これはどうしようかと。ニナも累も最後の劇中劇のサロメちゃんも、本当に自分を愛してくれる人だったり、認めてくれる人を探しているんです。だから欲望を描いているようで、その子たちの悲しい祈りのような・・・なんて言うんだろう、切実な願いみたいなものを感じたので、難しいけれど自分としては必死に演るしかないと思って。
──この物語、女優という存在を描いていることとか劇中劇が出てくることとか、ちょっと『ガラスの仮面』(原作:美内すずえ)っぽいところがあると思いませんでした?
わぁ、うれしい! 私、『ガラスの仮面』が一番好きで。展示会にも行きましたけれど、本当に好きで。(主人公)北島マヤの一番好きなのは、14巻に出てくるオーディションのシーンなんですけど、なんかうわ~って思いますね。本当に好き!

──じゃあ、脚本とか原作を読まれて「ちょっとそれっぽい匂いがするなあ」と?
それは人から言われて気付きました。今回のキャラクターのイメージや衣装を作ってくださった柘植(伊佐夫)さんは、舞台『プルートゥ PLUTO』でもご一緒させていただいたんですけど、「俺はね、太鳳ちゃんのこと北島マヤだと思っているから。俺は本当に実感したから」って言ってくださって、すごくうれしかったんです。北島マヤが朝まで寝ないでセリフをブツブツつぶやいて、鳥がチュンチュンって鳴いてる描写があるんですけど、ただ不安なんですよね。不安だから何回も何回もやる。そんな気持ちが、今回演じてみたことでわかって、すごく面白かったです。
──北島マヤもそうですけど、ニナにしても累にも、ただ純粋なだけではない、狂気みたいなものがありますよね。そういえば劇中で、サロメを演じる累が踊った、いわゆる『7つのヴェールの踊り』はやはり圧巻でした。そういえば(世界的なダンサー・振付家である)シディ・ラルビ・シェルカウイさん演出の『プルートゥ PLUTO』にも出てられたもんな、と思ってたんですが、映画の撮影はあの舞台の前だったとか?
そうなんです。ラルビさんとの初舞台より以前に撮影しました。
土屋太鳳・公式インスタグラム
映画『累−かさね−』
2018年9月7日(土)公開
監督:佐藤祐市
出演:土屋太鳳、芳根京子、横山裕、壇れい、浅野忠信
配給:東宝
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