2018年・上半期、日本映画ベスト3

左からミルクマン斉藤、田辺ユウキ、春岡勇二の座談会メンバー
「女の子がかわいいって、映画ではすごく大事」(春岡)
──3部作の完結編『ちはやふる ー結びー』はどうでしたか?
斉藤「最高やったね。3部作のなかで一番よかった。素晴らしいよね」
田辺「映画のうまみが全部詰まっている。そう言われれば、上半期で一番グッと来たのが『ちはやふる ー結びー』かもしれない」
──小泉監督って、やっぱり丁寧ですよね、作りが。
斉藤「ついにひとりひとりの人物像を描き切ったね。1部は広瀬すずちゃんがどうしてもメインになったけど、2部は彼女と他のメンバーとが共に歩む話になって、3部では世代交代のコンセプトを見事に描いてみせた。さらに賀来賢人みたいな超強烈なキャラまでぶっこんで(笑)」
※『ちはやふる』小泉徳宏監督インタビュー
春岡「その前の芝居をして、後ろがどんどん時間が過ぎていくという。それはたぶん、小泉監督のセンスなんだろうけど。きちんとできてるよね。あれはもう撮れるか、撮れないかの問題で、彼は撮れるんだよ」
──テクニックとして持ち得ているかどうか、ってことですよね。
斉藤「デビュー作の『タイヨウのうた』からしっかりしてたもんね。ロボット(小泉が所属する制作プロダクション)の宝だから(笑)。なんといっても小泉監督は女の子をちゃんと撮れるから」
春岡「女の子がかわいいって、映画ではすごく大事なんだよ。女の子をかわいく撮れるって、実は監督として、映画の呼吸が分かっているのと同じように、撮れるか、撮れないかってすごい大きいんだよ。小泉監督はすげえちゃんと撮るもん」
田辺「あの原作の実写化を堂々とやり切れるあたり、すごい監督になってきたなって思いますね。3部作でちゃんと結んでましたし」
春岡「でも俺は、1部・2部が好きなんだよなぁ。広瀬すずと野村周平、そこに松岡茉優が絡んできたあたりがゾクゾクした」
斉藤「松岡茉優は『万引き家族』でもひときわ良かったけど、『blank13』もある」
※『blank13』主演の高橋一生インタビュー
田辺「あれ、観られてないんですよぉ」
斉藤「面白いよ。最初は堂々とした正統派日本映画的な家庭ドラマ編、第2部がフリー編、みたいにに分かれている映画で。最初、その第2部をネットドラマでやらないかという話がきて、その後、映画にすることになったんだと。で、構成を考えて、わざと両極端なタッチで1本にしようって」
──佐藤二朗や村上淳、伊藤沙莉やくっきー(野性爆弾)が登場する後半の葬式シーンは、ほぼアドリブですよね。
斉藤「そう、ほぼアドリブ。で、やっぱりみんな上手いのよ」
田辺「斉藤工は役者ですから、それを分かりながら撮ってるんですよね?」
斉藤「間違いなく、分かってやってる。リリーさんが自堕落極まる父親役で、子どもにとっては最低・最悪やねんけど、葬式の場で結構みんなに愛されてたと分かってくる、というのが第2部で。でも子どもにしてみると、今更分ったところで困ってしまうだけという(笑)」
春岡「あぁ、そういうのあるよなぁ。家族としては死んでくれて良かったと思ってるんだけど・・・」
斉藤「そうそう。親子の縁を切ってから13年のブランクが埋まる・・・というかはっきりする。ともかく、監督処女作として冒険的でその意気や良しかな」
田辺「僕の好きな『犬猿』とかは、みなさんどうでした? 吉田恵輔の初期作で男子キャラがやっていた気持ち悪い行動を、今回は女に置き換えた。ニッチェの江上敬子がすべて請け負っていたけど、女の人がやるとヤバさが増しましたよね。とにかく気持ち悪かった(苦笑) 」
斉藤「気持ち悪いっていうか、そもそもこんなの演らせちゃう監督の意地が悪い(笑)」
田辺「吉田監督が言っていたのが、ワークショップで男が女を口説くということをやらせたら、みんな手慣れたものなんだけど、女の人が男をラブホテルに誘うテーマになった途端、揃ってみんな気持ち悪かったと。それをそのまま映画でやってみたって言ってて」
──あの役は、ニッチェの江上敬子じゃなかったら笑えない。
斉藤「鬼畜やもんな、徹底的に扱いが(笑)」
──吉田監督はインタビューで、筧美和子を女優にしたのは俺だ、惚れられてもおかしくないって言ってましたけど・・・。
※『犬猿』吉田恵輔監督インタビュー
斉藤「好きになるわけないやろ(笑)、『胸がデカいだけで大して才能も無い』なんてひどい台詞言わせといて」
田辺「吉田監督は、やっぱり映画作家として面白い存在ですよ」
春岡「どんどんおかしくなってきてるよな」
斉藤「いやいや、最初からおかしい(笑)」
田辺「僕がインタビューしたときも、『僕はフルチンですけど、ほかの監督は下着履いてるでしょ?』って。いや、言わんとしてることは分かりますけど(笑)」
斉藤「それ言っちゃいけないよってことを言っちゃうからね、もろに」
田辺「もともと東京ビジュアルアーツ出身ですよね?」

斉藤「そうそう。その後は、塚本晋也監督の照明マンやってた」
田辺「女の子の撮り方がすごくいいんですよね」
斉藤「そう。もう趣味全開」
春岡「パンツを履かないタイプの人だから、それこそ作品と実生活が直結してるんだろうね」
斉藤「あれほど連結している作家はあんまりいないですよ」
田辺「僕はそこが好きなんですよね。普通はもうちょっと隠すから。近年の行定勲監督もその傾向が強いですよね?」
斉藤「もう自分しか出してない(笑)」
田辺「『リバーズ・エッジ』は原作とかあるけど・・・」
斉藤「どんな原作でも、そのまま愚直に画に移すってことを徹底的にやらない人でしょ。常に自分の方に引き寄せようとする、その意志はすごいからね。最近、熊本の映画祭で親しいから言うわけじゃないけど、行定勲監督って過小評価されすぎ。『ナラタージュ』なんて、もっと評価されなホンマにあかんなあ」
※『ナラタージュ』行定勲監督インタビュー
──『ナラタージュ』に関しては、映画関係者ですら「よく分からなかった」と言ってますもんね。
斉藤「多分、観客の方がずっと深く読み取ってる」
春岡「それはすごく分かるけど、俺は岡崎京子原作の『リバーズ・エッジ』の方が面白かった。あの吉沢亮の痛々しさとか良かったよな」
斉藤「吉沢亮史上初めて良く感じて、それ以降、どの演技もよく見えてきたという(笑)」
春岡「そういえば、『ちはやふる』も『リバーズ・エッジ』もコミック原作だね」
斉藤「でも、僕らの世代は岡崎京子を少女マンガの文脈で読んだことがないなぁ」
──岡崎京子のスタートはビニ本作家ですからね。
斉藤「むしろそうだよな。行定勲監督は文学として読んでたと言ってたけど」
春岡「二階堂ふみはさ、あの後、大河ドラマの『西郷どん』で国民的に人気が出たけど、本領は『リバーズ・エッジ』だと思うよ」
斉藤「あの映画の実質的プロデュースは、二階堂ふみですからね。彼女も岡崎京子を少女マンガとして読んでない」
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