2018年・上半期、日本映画ベスト3

左からミルクマン斉藤、田辺ユウキ、春岡勇二の座談会メンバー
数々の映画メディアで活躍し、Lmaga.jpの映画ブレーンである評論家 ── 春岡勇二、ミルクマン斉藤、田辺ユウキの3人が大阪市内某所に集結。お題は「ホントにおもしろかった日本映画・ベスト3」。2018年・上半期公開の作品について語った。
「僕のなかでは、松居大悟監督が前半のMVP」(田辺)
──上半期の日本映画は、みなさんどんな印象でしたか?
田辺「今年の上半期は珍しく・・・、いい作品ばかりでしたね。2月公開の『羊の木』に『犬猿』、そして『リバーズ・エッジ』『サニー/32』と」
斉藤「齊藤工監督のデビュー作『blank13』も」
田辺「まず2月に猛ラッシュがありましたね」
田辺「松坂桃李の色気には品があるんですよね」
春岡「あの題材で下品じゃないってすごいよね」
斉藤「『愛の渦』みたいにすれすれの題材で、けっこうな言葉使ってても下衆にならないのね」
田辺「松坂桃李のバックヌードがキレイなんですよね。けど、動くとホンマにエロい(笑)。そのあたりは、さすが三浦大輔監督やなと」
斉藤「桃李くんは今年はなにか賞をもらわんとあかんでしょ。2017年、あれだけ大活躍で『ヨコハマ映画祭』の助演男優賞だけやったんやから。今年は白石和彌監督の『孤狼の血』でなんか賞は獲るでしょ」
田辺「僕の上半期の注目は、松居大悟監督の『アイスと雨音』。松居大悟の作品を観てると、こっちがうれしくなるんですよね。今の映画界で、こんなに挑戦的なことをやってくれるって。74分、ワンカットで全部追っていって。それも中断した舞台の若者の話で・・・」
斉藤「ホントにポシャってしまった舞台をもとに群像劇にして、MOROHAのラップ・・・というかポエトリー・リーディングとギター1本で紡いでいくという」
田辺「それをまったく完全ワンカットで撮って。編集しているのは演劇の芝居をしているパートと、日常のパートで画角を変えるという」
斉藤「あれ、松居監督にも直接言ったんだけど、画角変えない方が良かったんじゃない? 変えなくても充分わかるって」
田辺「たしかに。でも、ああいうのを観てたら、これだけ映画で新しいことを頑張ろうってしてる気概を感じるんですよね。僕のなかでは、松居大悟監督が前半のMVP。とはいえ、上半期の話題の日本映画といえば、『万引き家族』になるんですかね?」
春岡「それはここで選ばなくてもいいんじゃない?」
斉藤「まあ、僕は是枝作品を選ぶはずがないけど(笑)」
春岡「まあ、是枝作品のなかでは、『万引き家族』は面白かったと思うけど」
斉藤「うん。是枝作品が苦手な僕としても、わりと楽しく観た映画ではある。(2004年、柳楽優弥主演の)『誰も知らない』パート2、的でね。細野晴臣さんの音楽も良かったし。でも、是枝監督をそれほど苦手じゃない人に、案外ダメっていう人が多いみたいね。僕の周囲だけかもだけど」
田辺「あと、白石和彌監督ですね。『サニー/32』と『孤狼の血』の2作品がありましたけど、好きなのは『サニー/32』でした」
※日本映画界の風雲児・白石和彌監督を徹底解剖
──『サニー/32』は映画関係者の多くが、「観たけどよく分からなかった」と言ってましたね。
斉藤「謎だ。分からないのはまあいいとして、面白くはなかったのかね?」
春岡「好きな人は好きだろうな。面白いと思うよ。あれが1位でも全然違和感ない」
斉藤「(脚本の)高橋泉も久しぶりに本領発揮でしたね。まあ、お仕事的な『坂道のアポロン』もかなり良かったけど」
春岡「俺、あれ意外に好き。あれいいよな」
──三木孝浩監督ってやっぱりうまいですよね。
斉藤「似たり寄ったりな漫画原作青春モノがこれほど濫造されるなかで、三木作品って、やはり映画的なクオリティがあるし、ほとんど外さへんもん。平均点はすごく高いよね」
春岡「高校生の友情と恋心と音楽を、高橋泉の脚本で三木監督が撮るという」
斉藤「そうそう、中川大志がすごく良かったのよ」
──中川大志といえば、auのCM(「意識高すぎ!高杉くん」シリーズ)でも抜群ですよね。
斉藤「あれ、いいよね。最初観たとき中川大志ってわからんかったもん」
春岡「それ考えると『坂道のアポロン』の中川大志は、まだauに負けてるな(笑)。まぁ、面白かったけど、ベスト3には入らないかな。でも、俺は意外に好きだった」
斉藤「ところで『恋は雨上がりのように』は観た? 結構いいのよ」
田辺「ああ、永井聡監督ですね」
斉藤「『帝一の國』に続いて好調だからね。案外、映画がちゃんと撮れる監督なのかな、って認識を改めてるところ」
春岡「俺も好き、最後だけ不満があるけど。俺らの時代なら絶対店長がヒロインを押し倒さなければダメだろうって。今はそれができない時代なんだなって。俺ら、分別とか大嫌いだったから(笑)」
斉藤「ちゃんと分別できる文学青年やから、店長が。ロマンティストは春岡さんの時代にもいたと思いますよ(笑)。それはともかく大泉洋って、なんやかんや言ってどんどんうまくなってる気がするなあ、映画俳優として」
春岡「小松菜奈の走るとこも良かった。止まるところと走るところ、結構かっこつけてやってるんだけど、あのかっこつけ方ってキライじゃないんだよね」
斉藤「そうなのよ。ちゃんと小松菜奈を美しく撮ってる」
田辺「『帝一の國』のときに思ったけど、良い意味で広告代理店的というか、きっちりと仕事をするタイプですよね。今回もそうでしたか?」
斉藤「本人の印象は僕も同じだったけど(笑)。きっちり撮ってた、これも。すごい丁寧に」
春岡「それは映画の呼吸が分かってるんだよな。それはほとんどセンスみたいなもんで、勉強してどうこうの問題じゃない。『焼肉ドラゴン』とかさ、舞台ではあれだけ面白いのに、しかもその舞台の演出をして、映画の脚本を何本も書いてる鄭義信が監督をしてるんだけど、話はいいだけど、映画としてはつまらなくて」
田辺「このシーン、さっきもあったよな・・・ってことが結構ありましたね」
斉藤「閉じられた空間のなかで、キャメラを回して、役者を動かす。そのバリエーションがないのよ、全然。アルトマンとかウディ・アレンみたいな、そういうテクニックが」
春岡「それは監督自身、よく分かったと思うよ、映画の呼吸とか運動が。昔みたいに撮影所があって、助監督として何本か参加できるという時代だったら、そこで勉強できるんだけど、今はそうじゃないから。ちゃんと撮ったし、ちゃんと書いた。でも、なんでこんな映画になってるんだって、たぶん本人は悩んでいると思うけど、それが分かれば、次は絶対良くなると思う、鄭義信くらいの戯曲家で演出家であれば。ほかの奴ならダメだけどさ」
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