「迫真の写実画」の系譜、姫路で展覧会

2017.9.20 07:00

左から、高橋由一《鮭》制作年不詳、山形美術館寄託、礒江毅《鮭−高橋由一へのオマージュ−》2003年、個人蔵

(写真3枚)

江戸時代末に西洋絵画が移入されてから約150年、日本の写実画がどのように展開してきたのかを探る興味深い展覧会『リアルのゆくえ』が、「姫路市立美術館」(兵庫県姫路市)で9月23日からおこなわれます。

近年、日本の美術界では、「超絶技巧」に代表される技巧をとことんまで極めた表現が注目されています。絵画でも抽象画より具象画、それも細密表現でリアリティを追求した写実画が人気を博しているのではないでしょうか。写実画を語る上で欠かせないのが、鮭や豆腐などの絵で知られる高橋由一です。由一は西洋から輸入された石版画を見てその迫真性に驚き、英国人画家チャールズ・ワーグマンから手ほどきを受けて洋画を研究。執拗なまでに細部の質感にこだわった独自の画風を確立しました。その系譜を受け継いだのは、大正から昭和初期に活躍した岸田劉生です。彼の代表作《麗子像》を思い浮かべれば、両者が追求した「迫真の写実」がどんなものか想像がつくでしょう。

岸田劉生《野童女》1922年、神奈川県立近代美術館寄託

しかし、日本の洋画壇は彼らとは別の方向に進みます。明治中期に活躍した黒田清輝に代表される穏健で抒情的な作風が主流となり、その後も官展アカデミズムとそれに反発する印象派以後の美術の流れで語られるようになったのです。由一や劉生をはじめとする迫真の写実性を追求する画家たちは、異端者扱いになってしまいました。

犬塚勉《梅雨の晴れ間》1986年、個人蔵

ところが近年、細密描写を駆使した写実画が再び注目を集めています。磯江毅のように、高橋由一へのオマージュとして鮭の絵を描く画家もいるほどです。本展では全5章で、明治から現代にいたる写実画の系譜をたどります。洋画でありながら日本独自の精神性をたたえた「迫真の写実」とはいかなるものか、あなた自身の目で確かめてください。

文/小吹隆文(美術ライター)

『リアルのゆくえ 高橋由一、岸田劉生、そして現代につなぐもの』

期間:2017年9月23日(祝・土)〜11月5日(日)※月曜休(10/9開館、10/10休館)
時間:10:00〜17:00 ※入場は16:30まで  
会場:姫路市立美術館(兵庫県姫路市本町68-25)
料金:一般1000円、大高生600円、中小生200円
電話:079-222-2288

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