小吹隆文撰・週末アート、10/12〜

2016.10.12 07:00
(写真3枚)

「とにかく誰よりも現場を見て歩く」を信条に、美術ライター・小吹隆文が膨大なアートの海から、いま必見の展覧会をピックアップ! 今週は、歴史的人物、遺跡の展覧会と注目のアーティストの作品展を紹介。芸術の秋、知的想像力をかき立ててください。

 

古代ローマ時代にタイムトラベル
『日伊国交樹立150周年記念  世界遺産 ポンペイの壁画展』
@兵庫県立美術館(神戸市中央区)

西暦79年、ヴェスヴィオ火山の噴火により悲劇的な最期を迎えた古代ローマの都市、ポンペイ。日本でも有名なこの都市をテーマにした展覧会が行われます。

《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》 後1世紀後半 ナポリ国立考古学博物館 ©ARCHIVIO DELL'ARTE - Luciano Pedicini / fotografo
《赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス》 後1世紀後半 ナポリ国立考古学博物館 ©ARCHIVIO DELL’ARTE – Luciano Pedicini / fotografo

ポンペイは一夜にして埋もれましたが、火山灰が乾燥剤の役割を果たしたため、都市の姿が奇跡的に保存されました。特に後世の人々を驚かせたのは、色鮮やかな壁画の数々です。本展ではポンペイとその近郊の遺跡から出土した壁画を、描かれた主題ごとに紹介します。「赤い建築を描いた壁画装飾」、カルミアーノ農園別荘の食堂を飾った壁画の再現展示、これまで1度しかイタリア国外に出たことがない「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」などを見て、古代ローマの生活に思いを馳せてください。

2016年10月15日(土)〜12月25日(日)
展覧会情報はこちら

 

幕末の風雲児、その実像に迫る
『特別展覧会 没後150年 坂本龍馬』
@京都国立博物館 平成知新館(京都市東山区)

日本史を飾るヒーローは数々いますが、一番の人気者といえば、幕末に活躍した坂本龍馬ではないでしょうか。土佐の脱藩浪士に過ぎない彼が、先進的な思想と行動で薩長や幕府の要人に影響を与え、時代を大きく変えていく。しかし新しい世を見る前に凶刃に倒れてしまった・・・。そのドラマチックな生涯に魅せられた人も多いでしょう。

坂本龍馬湿板写真(複製を展示) 江戸時代 慶応二年(1866)または三年(1867) 高知県立歴史民俗資料館蔵
坂本龍馬湿板写真(複製を展示) 江戸時代 慶応二年(1866)または三年(1867) 高知県立歴史民俗資料館蔵

近年、彼に関する新たな資料が相次いで見つかりました。その研究成果を踏まえて最新の龍馬像を伝えるのが本展です。出品物は、直筆の手紙の数々、北辰一刀流の長刀兵法目録、愛用の刀、暗殺現場に掛けられていた血染めの屏風、幕末の歴史や世相が伝わる資料など。 坂本龍馬と彼が生きた時代を体感できる絶好の機会です。

2016年10月15日(土)〜11月27日(日)
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対極的な視点を往還する抽象絵画
『中島麦「WN new works」』
@Gallery OUT of PLACE NARA(奈良県奈良市)

大阪を拠点に活動している画家、中島麦。彼の作品は、無数の色点から成る絵画と一色の絵画をセットで見せる点に特徴があります。このシリーズで2013年、2014年と奈良で個展を行ってきました。

2016 ©nakajima mugi
2016 ©nakajima mugi

国内では昨年に東京で行った個展に続く本展では、《WM》と題した新作を発表します。WMは「有無」とも読め、やはり2点1組の抽象画ですが、《W》が垂直のベクトルを持つ無数の点の集合体であるのに対し、《M》は絵具の巨大な一滴が画面を覆っています。一見すると対極的な2点ですが、実はどちらも絵具の点であり、同じ事象を異なる視点で描いているのです。彼の抽象絵画の帰結とも言えるこの新作は、きっと多くの美術ファンから注目されるでしょう。

2016年10月7日(金)〜11月6日(日)
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