河瀬直美が目論む、奈良から世界へ
2016.9.1 7:00

「千年続く映画祭を目指して・・・」(河瀬直美)

──映画作家を育てる環境として、映画業界全体のシステムが対応できなくなっているという。

それでもなぜか、日本映画界の制作部や、フリーランスの人はすごく忙しくなっているから、映画自体は作られているんですよ。そこに希望があって、『なら国際映画祭』ではそういう人たちも、まずは話そう!と思いました。合宿形式の「Road to Cannes」と題したプロジェクトを準備していて。将来的には、日本国内に配給される映画の製作助成も目論んでいます。あと、今年から『カンヌ国際映画祭』のシネフォンダシオン部門とパートナーシップを結びました。『なら国際映画祭』の学生映画部門「NARA−wave」に出品が決まった作品には、英語字幕を付けます。諸外国の人たちに英語字幕で映画を観てもらえる、という。チャンスが広がります。もちろんカンヌへの紹介も積極的におこなってゆきます。

──まさに河瀬監督だからこそ実現できたプロジェクトでもありますね。

ありがとうございます。

──やはり、映画を作るということは、相当なリスクがありますか?

どの分野でもそうだと思いますが。映画文化が経済中心で語られるようになったのは、理由のひとつだと思います。映画って、何十人ものスタッフで創りあげるものですから最低でも何千万ってかかってきます。それを回収できないと、製作者は人生終わっちゃうくらいのリスクを抱えますから。自主製作ならなおさら。短篇映画で、とりあえず才能を見出されて、そこから飛躍して、となる傾向はあるでしょう。過去に、破産したプロデューサーを見てきているから、みんな怖がってリスクを回避してゆく事を最優先に考えてしまいます。

キューバ生まれの若手映画監督を奈良に招き、製作された『東の狼』もプロジェクトのひとつ
キューバ生まれの若手映画監督を奈良に招き、製作された『東の狼』もプロジェクトのひとつ画像一覧

──デジタルが発達した今、それこそiPhoneで撮影できますし、機材自体も安くなってるじゃないですか。ある意味、誰でも簡単に動画を撮れる時代になったわけですが、映画とはまた違うものですよね。

そうですね。簡単に撮れるってことは、作家の深さというのを表現できないこともあります。「誰にでも撮れるもの」であり「私にしか撮れないもの」ではなくなるからです。精神力を切磋琢磨していかなきゃいけないのですが、近年は若い世代がひ弱になっていますね。ちょっとキツイ事を言われると逃げてしまって、無理でも向かっていくという資質の人はホント少なくなってしまいましたね。

──ジャンルは違うんですが、私らの仕事であるライターや記者などにもその傾向はあります。初期衝動のままブログやSNSに書けちゃって、なおかつ、一応は世の人に見てもらえるから、監督が言われたような深さまで辿り着かずに、なんか満足しちゃうという。

そうですよね。這いつくばってでも自分がやりたいものをカタチにしていくことって、今はとても少ない。しかしだからこそすごく目立つと思うんですけどね。実は「Road to Cannes」への参加者には自腹で奈良まで来てもらいます。それでももう50人も申し込みがきています。

──応募資格などはあるんですか?

もちろん、これまでの経歴は書いてもらいますし、インターナショナルに適用してもらわないといけないので、英語力は必須とまで書いているんです。それでも50人ですから。それも、いろんな映画祭の短篇部門で、賞を獲ってる子ばかりなんですよ。なのに、長編が撮れない。そんな若いクリエイターがこんなにいるんだって驚きました。

前回のレッドカーペットの様子。映画祭のオープニングイベントと、全作品が鑑賞できる会員も現在募集中とのこと
前回のレッドカーペットの様子。映画祭のオープニングイベントと、全作品が鑑賞できる会員も現在募集中とのこと画像一覧

──ぜひ、この映画祭からひとりでも多くのクリエイターを発掘してください。それにしても、今年はオープニングセレモニーのゲストも豪華ですね。別所哲也さんをはじめ、斎藤工さん、三上博史さん、藤竜也さん、高橋克典さん、レスリー・キーさんという顔ぶれです。

今年はレッドカーペット会員が2年前の7倍になりました。開幕までに10倍くらいになる可能性があって。華やかさもあるんですけど、混乱もしそうなので(苦笑)。この1カ月でしっかりと整えていきます。

──あと1カ月に迫った『なら国際映画祭』。かなり多彩なコンテンツに目移りするほどですが、最後にひとこと、この映画祭の魅力を教えてください。

千年続いた町で開催する千年続く映画祭にあなたも参加して歴史に名を刻んでください!お待ちしています

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『なら国際映画祭2016』

期間:2016年9月17日(土)〜22日(祝・木)
会場:春日大社、春日野園地、ならまちセンター、ホテルサンルート奈良、鹿の舟 -繭-、ほか
料金:プログラムにより異なる(詳細は公式サイトにて)
電話:0742-95-5780
URL:http://nara-iff.jp/2016/

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